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―[テーマパークのB面]―

全国に数多くあるテーマパーク。今もなお新しいテーマパークが生まれては人々を楽しませ続けている。しかし、そんなテーマパークには、あまり語られることのない側面が存在する。そんな、「テーマパークのB面」をここでは語っていこう。
このところ、テーマパークにおける値上げ報道が後を絶たない。例えば、東京ディズニーリゾート(以下、TDR)。2023年にはチケットが1万円の大台に乗った。

また、東がTDRに対して、西のユニバーサルスタジオジャパン(以下、USJ)も負けていない。TDRと同じく2023年には1万円の大台に乗った。2024年にはさらなる値上げを行い、もっとも高いチケットで10900円。TDRと同じ水準だという。ちなみにTDRもUSJも、日にちによってチケットの値段が変わる変動価格制だが、最安値の日を比べると、TDRが7900円なのに対し、USJは8600円。USJのほうが全体的に見て、より高い値段になっている。

◆「入場料6800円」で「追加料金9000円」

TDRとUSJは日本を代表するテーマパークであり、それぞれがそれぞれの値段を念頭に置いた価格設定をしているから、このように双方の値段が高くなることはうなづける。

しかし、それ以外のテーマパークでも「高すぎる」という反応が出ている。例えば、今年、お台場に誕生したテーマパーク「イマーシブ・フォート東京」。USJの業績をV字回復させたことで知られる森岡毅氏が率いる株式会社・刀がプロデュースしている。ここの入場料は6800円。

ただし、これは一部アトラクションが楽しめるチケットで、いくつかのアトラクションは追加料金がかかる。特に江戸の世界に迷い込む体験ができる「江戸花魁奇譚」は、なんと一回9000円という値段である。無料アトラクションはあるものの「課金しないと楽しめないのか」という声も聞かれるほどである。

ジブリパークも「高い」という評判が…

愛知県長久手市に誕生したジブリパークも「高い」という評判が立ってしまった一例だ。入園するだけであれば、平日は1500円で済むのだが、それだけでは中のアトラクションが楽しめない。フルでアトラクションを楽しもうとすると平日7300円、土・日・祝では7800円と、「ディズニー並み」の値段になることに批判が集まったというわけだ。特にこれは県の施設ということだけあって、そうした声も一段と大きくなったようである。

こうした背景には何があるだろうか。もちろん、物価高などの事情もある。一方、それだけでない要因もある。それが、テーマパーク全体の「量から質」への転換だ。

ディズニーが最もわかりやすい。コロナ禍での大幅な来場客の減少を経て、たくさんの客という「量」を入れて収益を取る方向から、それぞれの来場客の体験の「質」を深める方向に転換することを公式に発表している。

◆「量から質へ」の転換が加速する理由

イマーシブ・フォート東京でも同様だ。そのオープニングセレモニーで森岡氏はこう述べる。現在のテーマパークは、多くのゲストを入場させて同じ体験をさせるモデルである。しかし、イマーシブ・フォート東京ではそれを変え、「一人ひとりに違う体験をさせる」ことを目指している、というのだ。

少し補足すると、イマーシブ・フォート東京で楽しめるのは、「イマーシブシアター」という参加型演劇の形式を採ったアトラクションで、これはゲストがそのアトラクションに一人の参加者として入り込むもの。客の反応や選択によって、そのアトラクションの内容が変わるのだ。だから森岡氏は「一人ひとりに違う体験をさせる」ことができる、というわけである。

こうしたアトラクションの性質上、一回でそれを体験できる人は限られている。例えば、「江戸花魁奇譚」では、ショーを構成する出演者15人に対して、それを体験するゲストの数は30人。それだけ濃密な体験ができるのだ。逆に、人件費などを考えれば、それだけ値段が高くなることもやむを得ないということである。まさに「量から質へ」を体現しているのが、イマーシブ・フォート東京なのである。