中国が2024年8月6日に打ち上げた長征6Aロケットが低軌道(LEO)で分解し、大量のスペースデブリでできた「デブリ雲」を形成したことが報告されました。

Chinese rocket breaks apart after megaconstellation launch, creating cloud of space junk | Space

https://www.space.com/china-megaconstellation-launch-space-junk

China rocket launch creates cloud of space debris in low-Earth orbit | CNN

https://edition.cnn.com/2024/08/09/science/china-rocket-stage-orbital-debris/index.html

今回問題となった事故は、中国の衛星ブロードバンド網である「G60星鏈(G60 Starlink)」の最初の18基を打ち上げる際に発生しました。中国版Starlinkとも呼ばれるこの衛星コンステレーション構築計画では、1296基の人工衛星が軌道に打ち上げられる予定となっているほか、最終的にSpaxeXのStarlinkに匹敵する1万5000基にまで数を増やす構想もあります。

中国がStarlink対抗の衛星インターネット「G60 Starlink」向けの人工衛星をついに打ち上げ - GIGAZINE



この打ち上げにより人工衛星は軌道に乗りましたが、人工衛星を搭載していたロケットの一部が宇宙で分解し、大量のスペースデブリが発生しました。

衛星衝突回避プラットフォームを手がけるSlingshot Aerospaceは、LEO移動物体追跡用のHorusセンサーシステムにより「ロケット本体および展開されたG60衛星と同じ軌道に沿って移動する、一連の予期せぬ明るい物体が検出された」と発表しています。



当初発見されていた破片の数は50個でしたが、その後次々と新しい破片が見つかっており、スペースデブリ監視サービスを提供しているLeoLabsによると少なくとも700個、潜在的には900個以上の破片が発生したとのこと。

ロケットが分解した高度は地表から約810km上空で、国際宇宙ステーション(ISS)は地表から約408kmの高度を周回しているため、これまでのところISSに直接的な影響はありません。アメリカ宇宙軍の広報担当者は「宇宙軍は差し迫った脅威を観測しておらず、宇宙領域の安全と持続可能性をサポートするための定期的な接近・衝突評価(Conjunction Assessment)を継続しています」と述べました。

しかし、衛星コンステレーションのための利用が拡大している高度800km以下のLEO衛星群にとっては深刻な脅威です。破片が軌道上に残る期間を正確に予測することは困難ですが、おそらく数年、長いものは数十年にわたって軌道上に残り続けると専門家は考えています。



Slingshot Aerospaceの戦略および政策担当ヴァイスプレジデントのオードリー・シャファー氏は「中国のメガコンステレーションを構築するための今後の打ち上げのほんの一部でも、今回の第1弾の打ち上げと同じ量の破片が発生すれば、低軌道の宇宙ゴミの数は容認できないほどになるでしょう」と述べました。

中国のロケットが大量のスペースデブリを発生させたのは、今回が初めてではありません。2022年11月12日には、気象衛星を打ち上げた別の長征6Aロケットの上段部分が爆発し、追跡可能なものだけで533個の破片が軌道上に飛散しました。

宇宙の開発が進むにつれて軌道上のデブリも急増しており、今後の宇宙進出のリスクになることが懸念されています。欧州宇宙機関によると、地球の周りを周回している10cm以上のデブリの数は既に約4万500個、直径が1mm以上のものは1億3000万個に達しているとのことです。