ディズニーが「ディズニーリゾートの食事で妻が亡くなった」という訴訟に対し「Disney+を一度でも利用した人はディズニーを永久に訴えられない」と主張
ディズニーワールド内のレストランで出された食事により女性がアレルギー反応を起こして亡くなった出来事をめぐり、女性の夫がディズニーを訴えている裁判で、ディズニーが「男性はDisney+にアカウントを作成しており仲裁条項に同意している」ためディズニーを訴えることはできないと、裁判の棄却を求めていることがわかりました。
New York doctor's husband suing Disney for negligence in wrongful death case | AP News
問題となった出来事は2023年10月5日、ジェフリー・J・ピッコロ氏が妻のカノクポン・タンスアン氏と母親の3人で、フロリダ州のウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートにあるショッピングモールのディズニー・スプリングスを訪問した際に発生しました。
タンスアン氏は乳製品とナッツに重度のアレルギーがあったため、「ラグラン・ロード・アイリッシュ・パブ&レストラン」のスタッフにアレルギー対応が必要であることを伝え、スタッフも了承。ベジタリアン向けのブロッコリーとコーンのフリッター、ホタテを用いた前菜、ヴィーガン向けのメインディッシュとオニオンリングを注文して食べたとのこと。
食事のあとピッコロ氏は部屋に戻って休み、タンスアン氏とピッコロ氏の母親はばらばらに買い物を続けましたが、およそ45分後、タンスアン氏はプラネット・ハリウッドに入ったところで呼吸困難に陥り床に倒れ込んだとのこと。タンスアン氏はアレルギー反応に苦しむ中でエピペンを自己投与し、地元の病院に搬送されましたが、その後、亡くなりました。ピッコロ氏の母親はタンスアン氏と合流すべく電話をかけたもののつながらず、ホテルに戻ってから電話をかけたときには、すでに搬送後だったそうです。
検視官の調べで、タンスアン氏は乳製品とナッツによるアナフィラキシーショックで亡くなったことがわかりました。
ピッコロ氏はディズニーを相手取り、5万ドル(約760万円)の損害賠償を求める裁判を起こしていますが、ディズニーは「ピッコロ氏は2019年にDisney+に登録していて、その際に仲裁条項に同意している」と述べ、訴訟の棄却を求めています。
Disney Seeking Dismissal of Raglan Road Death Lawsuit Because Victim Was Disney+ Subscriber - WDW News Today
https://wdwnt.com/2024/08/disney-dismissal-wrongful-death-lawsuit/
Disney+ streaming terms mean lawsuit after LI doc Kanokporn Tangsuan's food allergy death must be tossed, Disney says - Newsday
https://www.newsday.com/long-island/nassau/disney-restaurant-carle-place-physician-allergy-gcgv997y
Disney claims husband can't sue over wrongful death - because he signed up to Disney+ trial | US News | Sky News
https://news.sky.com/story/disney-claims-husband-cant-sue-over-wrongful-death-because-he-signed-up-to-disney-trial-13197216
仲裁条項の内容は「少額訴訟を除き、あなた(Disney+利用者)と当社(ディズニー)との間の紛争は集団訴訟の権利放棄の対象となり、個別の拘束力のある仲裁によって解決されなければならない」というもので、ディズニーとその関連会社が関与するすべての紛争をカバーする同様の権利放棄を含む、ディズニーの広範な利用規約への別の同意を折り込んだものだったとのこと。
日本語で公開されているウォルト・ディズニー・カンパニーの利用規約でも、ディズニーがアメリカ合衆国及び日本に限らず展開するサービスを対象として、「拘束力を有する仲裁及び集団訴訟の放棄」が盛り込まれています。
Japanese / 日本語 - Disney Terms of Use - Disney Terms Of Use
https://disneytermsofuse.com/japanese/
また、ピッコロ氏がディズニーのアプリを用いてウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートの「エプコット」のチケットを買ったときにも同様の内容に同意しているとディズニーは説明しています。
ピッコロ氏の弁護を担当するブライアン・デニー弁護士は「Disney+の無料トライアルのアカウントを作成するときに消費者が同意した、『ディズニーの関連会社や子会社とのいかなる紛争においても、陪審裁判を受ける権利を永久に失う』という条項は、司法の良心に衝撃を与えるほどひどく不合理かつ不公正であり、当法廷はこのようなこのような合意を執行すべきではない」と厳しく批判しました。
同じくピッコロ氏側のピーター・ジャッティーノ弁護士も「ディズニーは危険な先例を作ろうとしている」と述べています。
しかしニュースサイト・Newsdayによると、フロリダ大学レビン法科大学紛争解決研究所のジョアン・スターンズ・ジョンセン所長は「ごく少数の例外を除き、(仲裁条項は)強制力があると認められています。これは契約です。あなたは『OK』にチェックを入れ、スクロールして、必要なことをやった。つまり、同意したのです」と語ったとのことです。
なお、ニュースサイト・Sky newsによると、ディズニーは家族を失った出来事について深い悲しみを表明した上で、「ラグラン・ロード・アイリッシュ・パブ&レストラン」の運営・管理には携わっていないと述べたとのこと。
この裁判に関する公聴会は2024年10月に実施される予定となっています。