1988年のソウル大会、ライトミドル級の決勝は米国のロイ・ジョーンズJr.(左)と韓国のパク・シホンが対戦した【写真:Getty Images】

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夏季五輪で起こった事件を振り返る

 パリ五輪は連日熱戦が繰り広げられている。夏季は1896年に第1回大会が開催され、今回で33回目。数々の名場面のほか、記憶に残る“事件”も起きてきた。4年に一度のこの機会に、過去の出来事を「オリンピック事件簿」として振り返る。1988年のソウル大会では、韓国選手が金メダルを獲得したボクシングをめぐり騒然。買収が疑われ、審判が資格停止処分を受ける騒ぎとなった。

 大会最終日の10月2日に行われたライトミドル級(71キロ級)の決勝は、韓国のパク・シホンと米国のロイ・ジョーンズJr.の対戦となった。試合はジョーンズJr.がダウンを奪い、有効打も86-32と圧倒的優位に進めたが判定に持ち込まれ、3対2でパク・シホンが勝利。会場は騒然とし、韓国紙すら「市民から非難の声が殺到した」と伝えるほどだった。

 会見で、当時19歳だったジョーンズJr.は涙を浮かべ「盗まれた金メダルを返してほしい」と発言。通常は金メダルを獲得した選手に贈られるヴァル・バーカー・トロフィー(五輪ボクシング最優秀選手賞)を贈られたことでも、ジョーンズJr.を優勢と見ていた関係者が多かったことがうかがえる。

 この試合を裁いた5人の審判は、のちに2年間の資格停止処分を受けた。さらに1997年になって国際オリンピック委員会(IOC)は、ジョーンズJr.側からの「審判が韓国側に買収されていたのでは」という提訴に対し「これを認める事実は発見できなかった」という結論を下した。パク・シホンの金、ジョーンズJr.の銀はここでようやく、最終的に確定した。ジョーンズJr.は後にプロ転向し、通算76戦で66勝(47KO)10敗という成績を残し引退している。

(THE ANSWER編集部)