データでみると拡大傾向は明らか(東京都保健医療局HPより)

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新型コロナウイルスの感染が拡大している。第11波到来ともいわれる中で、改めて新型コロナがいま、どれだけの脅威で、どう対処していけばいいのかを正しく認識する必要がある。

東京都が発表している新型コロナの定点医療機関当たりの患者報告数をみると、4月下旬から10週連続で増加している。明らかに拡大フェーズにあり、今後さらに激増が予測され、第11波とも報じられる。

この「第〇波」という表現は、「5類感染症」(5類)への移行前は、公式にアナウンスされていた。だが、5類となった2023年5月8日からは公式発表はされず、感染者数の増加の波をみて、メディア等がそれまでの傾向をもとに公表しているに過ぎない。

国民全体が新型コロナに危機感をもっていた当時は、感染状況を逐一共有する体制がとられ、情報への渇望感も強かった。5類移行により、そうした体制は緩和され、個人の選択を尊重し、各自の自主的な取り組みをベースにするよう、方針が転換されている。

感染症法上インフルエンザと同じ5類の意味

これは感染症法による分類変更とシンクロする。感染症は、同法でそのリスク順によって1類から5類まで分類されている。新型コロナが国民の脅威とされていた当時の分類は2類だった。これは、結核やSARSと同じ分類だ。

現在の5類はインフルエンザや梅毒と同じ分類となる。感染症法は<感染症の予防および感染症患者に対する医療に関し、必要な措置を定め、発生を予防し、蔓延の防止を図ることで公衆衛生の向上および増進を図ることを目的>とする。2類時の医療体制の整備状況や予防などの体制が手厚かったことは記憶に新しいだろう。

5類への移行は2023年5月からだが、実は診療報酬は暫定的にシフトし、2024年4月から新たな診療報酬体系がとりいれられている。国民にとっては、診療費の負担が増し、インフルエンザと同様の対応になったことで、新型コロナ自体が弱体化したような誤解をしそうだが、決してそんなことはない。

重篤になるケースこそ少ないものの、感染力は強く、後遺症に悩まされるケースもあり、いまもしっかりとした対策が必要なことに変わりはない。

感染拡大傾向にある夏の注意点

多くの地域で梅雨が明け、夏本番を迎えている。新型コロナウイルスは夏に感染拡大する傾向もあり、十分な予防意識が求められる。

「夏はエアコンを活用しますが、こまめな換気をして空気の入れ替えをしてください。外出から戻ったら手洗い、うがいも継続してください。マスクも着用が望ましいですが、夏は熱中症のリスクもあるので、絶対着用にこだわらず、うまく使い分けてください」(東京都保健医療局感染症対策部)

現在の主流は変異ウイルスの「KP.3」

新型コロナは変異を繰り返しており、現在の主流はオミクロン型から派生した変異ウイルスの「KP.3」だ。東京都が公表しているゲノム解析では、同ウイルスが全体の87%を占めている。ウイルスは変異のたびに抗体が効きにくくなるため、すでに新型コロナにかかったとしても安心はできない。

現在の主流はKP.3(東京都保健医療局HPより)

夏本番を迎え、厳しい暑さが続く一方で、市中には湿った咳をする人も多く、それでもマスク非着用の人も目にする。

社会全体の新型コロナへの体制は、国の法に基づくものから、自主管理へとシフトした。それは新型コロナの弱体化を意味するものでは決してない。だからこそ、体調に異変を感じたら自分の判断でできるだけ早く診断を受ける。ひとり一人が常にそうした姿勢を忘れないことが、再び社会機能をマヒさせたあの”惨事”を招かないためにも肝要だ。