2023年「教養・技能教授業」業績調査

 コロナ禍で厳しい状況に直面した対面型のエアロビクス、外国語会話教室、音楽教室などの「教養・技能教授業」が復活してきた。コロナ禍では休業や生徒減少、不慣れなオンライン授業などを強いられたが、行動制限の解除で徐々に通常モードに戻り、売上高は2021年を底に2年連続で上向いてきた。
 「教養・技能教授業」を運営する全国399社の2023年(1‐12月)の売上高合計は1,389億6,100万円(前年比5.3%増)で、コロナ禍前の2019年の97.9%まで回復した。ただ、2023年の最終利益は15億1,100万円(同2.7%増)にとどまり、2019年から半減し、電気代などの物価高、人件費上昇に見合う価格転嫁が難しく、「利益なき成長」をたどっている。

 小学校のプログラミングや英語の必修化、社会人のリスキリングなど、「教養・技能教授業」には追い風が吹いている。だが、総務省の「家計調査報告−2024年(令和6年)4月分−」によると、「教養・技能教授業」が該当する「教養娯楽」の消費支出は2万9,738円で、5カ月連続で減少。また、物価や人件費の上昇で実質賃金が目減りするなか、月謝の値上げは他の教室やスクールに生徒が流出する可能性もあり、安易に値上げしにくい環境にある。
 「教養・技能教授業」業界は、従業員10人未満が60.4%、売上高1億円未満が64.4%を占め、個人企業や小規模・零細企業が多いことがわかった。

 生徒が独学で学ぶ動画配信サービスなど、コロナ禍を経てサービスは多様化し、競争は一段と激しさを増している。2023年の「教養・技能教授業」の倒産は、全国で49件(前年比16.6%増)発生し、コロナ禍の窮状から抜け出せない企業も多い。豊富な資金力で店舗展開し、人員獲得を積極的に進める大手企業に対し、個人企業や小規模・零細企業は細やかなサービスで差別化を図るが、今後はいかに優良コンテンツを継続的に提供できるかがカギになっている。

※国内の教養・技能教授業業者は、小分類824「教養・技能教授業」を対象に集計した。単体決算で最新期を2023年1月期-12月期とし、5期連続で比較可能な399社を抽出、分析した。


売上はコロナ禍前まで回復、利益は半減

 「教養・技能教授業」399社の2023年の売上高合計は1,389億6,100万円(前年比5.3%増)で、2年連続で前年を上回った。コロナ禍で落ち込んだ2021年の1,176億7,200万円を底に、売上高はV字回復を果たし、コロナ禍前の2019年に迫った。
 最終利益は、コロナ禍の2020年、2021年は赤字に陥った。だが、2022年は黒字転換を果たし、2023年は15億1,100万円(同2.7%増)まで戻した。だが、2023年の最終利益はコロナ禍前の2019年(32億4,200万円)の46.6%と半減以下にとどまっている。


売上高別 「1億円未満」が64.4%を占める

 2023年の売上高別で、最多は「1億円未満」の257社(構成比64.4%)だった。次いで、「1億円以上5億円未満」が93社(同23.3%)、「10億円以上50億円未満」が22社(同5.5%)で、「5億円以上10億円未満」は20社(同5.0%)にとどまる。「100億円以上」の企業はなかった。
 最多の「1億円未満」257社の売上高合計は68億2,700万円で、全体の4.9%にとどまる。
 一方、売上高10億円以上29社は合計997億7,100万円で、全体の71.7%を占めている。


損益別 赤字企業率は4年連続で35%前後

 2023年の黒字企業率は64.4%(257社)で、前年の63.9%(255社)から0.5ポイント改善した。
 一方、新型コロナウイルスの影響もあり、赤字企業率は2020年から2023年にかけて、4年連続で35%前後で推移する。コロナ禍前の2019年の赤字企業率は21.8%(87社)であることからも、コロナ禍の影響は根深く、ここ数年の異常な物価高を吸収し、2019年の利益水準に戻るには相応の時間が必要だろう。