アニメを見たい、もっと楽しみたいという方の新たな「きっかけ」になるアニメ紹介型動画配信サイト『AT-DX』。本動画配信サイトでは、各アニメ作品の配信に加えて、声優・俳優・アーティスト・お笑い・アイドルなど、さまざまな出演者によるオリジナルのアニメ紹介番組が展開されている。

TV LIFEでは、『AT-DX』各番組のプロデューサー・関係者の短期連載インタビューを実施!第4回目は、エー・ティー・エックス代表取締役の東不可止(あずまふかし)と、『AT-DX』配信プロジェクトの池内矩史にインタビュー。『AT-DX』を立ち上げた意図や特長についてお聞きした内容を前後編に分けてお届けする。

 

「諏訪部順一のとびだせ!のみ仲間」など人気番組もアーカイブ配信

◆まずはそれぞれの担当などを含めた自己紹介をお願いできればと思います。

東:2024年6月19日付でエー・ティー・エックスの代表取締役になりました、東不可止です。1999年から2011年までテレビ東京でアニメプロデューサーをやっていて、担当した作品は100本ぐらいになると思います。どういう作品を担当してきたのかは、Wikipediaを見てください(笑)。その後はテレビ東京で営業やマーケティングなどアニメ以外の仕事をやっていましたが、3年前にエー・ティー・エックスに出向になりました。『AT-X』の放送を含めた事業の統括をしており、同時並行くらいで『AT-DX』の立ち上げについても色々と進めてきました。

 

池内:『AT-DX』の作品調達、配信番組の制作・運行業務、プロモーションなどを担当している池内矩史です。僕は、元々はアニメに全く興味がなくて。仕事の関係もあって、社会人になってから見るようになりました。そして、アニメって面白いということに気がついたんです。この気づきは、『AT-DX』のコンセプトとも通ずる部分があると思っています。

 

◆改めて、動画配信サイト『AT-DX』についてお聞きします。『AT-DX』はアニメ作品の配信に加えて、声優・俳優・アーティスト・お笑い芸人・アイドルなど、さまざまな出演者によるオリジナルのアニメ紹介番組を展開しているのが特長かと思います。そんな配信サイトを立ち上げようと思った経緯を教えてください。

東:私どもは『AT-X』というCSのアニメ専門チャンネルを運営しています。CS放送が厳しいと言われている今の時代でも、10万人弱のお客さんに『AT-X』を楽しんでいただいています。現在の利用者層は40〜50代の方が中心です。ただ、ここから先の5年・10年ということを考えたときに もっと若年層の方々にもアニメをより楽しんでいただきたいと思いまして。とはいえ、CSのサービス自体がピンとこないという若年層の方々は多い。そんななかで、エー・ティー・エックスらしいアニメの楽しみ方をお届けする手段のひとつとして、配信という形があると考えました。

 

◆「色々なアニメ作品をさまざまな世代に楽しんで欲しい」というのが軸にある。

東:そうですね。とはいえ、アニメの配信サイトは既に先行してらっしゃる企業がたくさんあります。それと同じことをやっていくのは意味がないなと思いました。これは前任の川崎由紀夫の思いでもあるのですが、アニメ業界全体の幸せを考えたいという気持ちが我々にはあります。今の時代、本当にたくさんのアニメが放送されるようになり、数も相当増えています。そのなかで、最近のアニメを見るようになった方が過去に放送されたアニメを知る機会ってあまりないような気がして。

 

せっかく面白い作品がこの世の中にはたくさん生み出されているのに、それらが知られないのは、もったいないと思ったんです。そこで、過去の作品を見てもらうチャンスを作ったり、もっと言えばまだアニメの面白さをよく知らない方に楽しみ方をプレゼンテーションしたりする場を作れればと思い、『AT-DX』を立ち上げました。

 

◆そういう思いから、オリジナルのアニメ紹介番組も声優だけでなく、俳優、アーティスト、お笑い芸人、アイドルの方をMCに起用されている。

東:はい。例えば、推しのタレントさんなりアーティストさんがオススメするアニメを見たいという方もいらっしゃると思うんです。そこから実際に作品にハマる方やアニメをより好きになってくれる方が一人でもいれば、ものすごくありがたいなと思っています。そういう意味では、アニメを見るすそ野を広げてライトユーザーをだんだんヘビーにしていく入口を作るのが、『AT-DX』の役割と言えるかもしれません。アニメファンだけでなく、その周辺にいる方々にアニメをより好きになってもらえるきっかけになるサービスを提供できたらと思っています。

 

池内:今って、1クールで60〜70くらいアニメが放送されているんですよ。そのなかで、お客さんにちゃんと届けられていない作品もあると思うんですよね。僕も正直、60〜70ぜんぶは見切れなくて。社内の後輩に「あの作品よかったですよ」と紹介してもらって「本当だ」と気がつくことも多いんです。教えてもらったときは、ありがとうという気持ちと同時に「世の中にもっと知られないのはもったいない」と感じました。そういう経験から、ちょっとでもアニメに触れるきっかけを提供したいという思いが強くなって。僕たちがやっていること、やろうとしていることがそれにつながるかはまだ分かりませんが、それでも挑戦はし続けたいなと思っています。

 

◆それがまさに、先ほどおっしゃられていた「アニメ業界全体の幸せ」につながる気がします。

東:そう願っています。あとは、せっかくアニメ専門チャンネル『AT-X』をやってきたのだから、『AT-X』と『AT-DX』をきちんとリンクさせて、両方を楽しんでもらいたいなとも思っています。『AT-X』は2024年春の編成では、新作アニメを37本放送しました。それを1週間で3回流しています。そうすると、なかなか過去の作品や『AT-X』で制作してきた「諏訪部順一のとびだせ!のみ仲間」や「平日深呼吸」など声優さんのバラエティ番組の再放送を流す枠がありません。なので、これまで制作してきた『AT-X』オリジナル番組のアーカイブも『AT-DX』に格納して楽しんでいただきたいなと思っています。

 

GLAYのHISASHIさんの番組は内容面で「無謀ですね」と言われたことも

◆お話があったように、アニメを配信している動画配信サイトは、数多くあります。そのなかで、『AT-DX』はどのようなプロモーション展開をしていこうとお考えですか?

東:まずはライト層に届けることを考えていますが、ひとつ象徴的なことで言うと、『AT-DX』というプラットフォームのプロモーションはあまりやらないつもりです。「AnimeJapan 2024」では大々的に発表しましたが、大きいのはそれくらいかなと。基本はYouTubeで動画を見つけるように「なんか、マヂラブの新しい動画が出ているから見てみよう」みたいな感じでいいと思っています。入口はプラットフォームではなく、コンテンツ単位でいいかなと。『AT-DX』を目指してサイトに来てくれなくてもいいですし、興味のあるコンテンツが『AT-DX』というところで配信されていたというくらいの感覚でいいと思っています。

 

池内:おっしゃる通り、アニメ専門も含めて配信サイトは今やたくさんあります。ただ、正直我々としてはそのどれとも対立するつもりはなくて。むしろ、共存していきたいなと思っています。『AT-DX』のいちばんの特長であり目的は、アニメを知ってもらうきっかけを作ること。だから、ぶっちゃけた話、各オリジナル番組で紹介したアニメを『AT-DX』ではなく、他の配信サイトで見ていただいても構わないくらいの気持ちです(笑)。きっかけが『AT-DX』であればありがたいなと思っています。

 

東:クローズドで囲い込んでいくビジネスというよりも広げていって、うちも含めたアニメ業界に関わるみなさんにチャンスが増えればいいなと思っています。どういう風にそのお手伝いができるか、業界に恩返しできるか考えながら運営していきたいですね。

 

◆ここからは、実際に配信されている番組についてお聞かせください。まずオリジナル番組ですが、GLAYのHISASHIさんや、大和田伸也さんなど、他ではなかなか見ない方々がパーソナリティを務めていらっしゃいます。候補はどうやって決まりましたか?

東:『AT-DX』を始めるときに社内プロジェクトという形で、ふだんプロデューサーや制作に関わっていない社員にもやりたい企画があれば出して欲しいと募ったんです。立場や役職とかは関係なく、熱意とやる気を重視して企画を募集しました。実際のセレクトなどは、ここにいる池内などを中心にやっています。

 

◆企画を募った結果、どれくらいの数が集まりましたか?

池内:こんなに集まると思っていなかったくらい、多くの企画書があがってきました。色々な角度からの企画が出てきたので、可能な限りぜんぶやりたかったのですが……。やりきれなかったのが悔やまれます。先ほどご質問いただいたパーソナリティに関しては、決してつながりがあった訳ではありません。GLAYのHISASHIさんや大和田さんも、ゼロから当たっています。

 

東:もともとテレビ局でも働いていた私からしたら、「本当にやるの?」と思いましたよ(笑)。テレビ番組の企画書で想定キャストと書かれていた人が、いざ番組がスタートしたら結局は1人しか入ってないじゃんっていうことなんて、何度もありましたし。でも、みんなの努力のおかげで、実現することが叶いました。

 

池内:本当によくOKを出してくださったな、と。まだ世の中に出てもいない新しい配信サイトの新番組に出ていただけるなんて、ありがたいお話ですよね。

 

◆コネクションがある訳ではなかったんですね……!

池内:はい。GLAYのHISASHIさんは事務所の問い合わせフォームから連絡したと聞いています。

 

東:レコード会社の方からは「セッションもお願いするとなると、無謀ですね」と言われました(笑)。これは難しいだろうなと思っていたのですが、実現できちゃったんですよ。もちろん色々な要因があるとは思いますが、実現できたのはプロデューサーの熱意も大きかったと思っています。

 

◆アニメ作品の配信もされています。配信されている作品は何か特長などはありますか? 例えば、『AT-X』で配信中の作品は配信される?

東:今後は方針が変わる可能性もありますが、『AT-X』で放送中のものは『AT-DX』ではほぼ配信しないと思います。『AT-X』は最新アニメをいち早くお届けするというコンセプトがあり、『AT-DX』のコンセプトとは少し違うのかなと思っているので。ただ、先ほどお話したように、『AT-X』で配信中の声優バラエティ番組やオリジナル番組のアーカイブは配信していきたいと思っています。また、放送尺に収まりきらなかった部分をスピンオフという形で配信したり、拡大版という形で『AT-DX』で配信したりという取り組みはやっていきたいですね。

 

後編の記事では、アニメ専門チャンネルで働く二人が思う、アニメビジネスの可能性や『AT-DX』で今後取り組みたいことについて聞いた内容をお届けする。

 

『AT-DX』サービス概要

■月額

480円(税込)

※一部番組はレンタルも可能。100円(税込)〜、1週間視聴可能

※無料会員登録すると、『AT-DX』オリジナル番組が1話まるごと無料で見られるクーポンをプレゼント

 

■コンテンツ

『AT-DX』オリジナルのアニメ紹介番組、特集スタイルのアニメラインナップ、『AT-X』オリジナル声優バラエティ番組のアーカイブなど

※視聴方法:PC・スマートフォン・タブレットなどにてChrome、Safariなどのブラウザにより視聴可能

※日本国内向けサービスとなります(海外での利用はできません)

 

■AT-DX公式サイト

https://atdx.at-x.com/

 

■公式SNS

・X:https://x.com/ATDX_info

・YouTube:https://www.youtube.com/@AT-DX