ユーロ2024フランス戦で明らかだったポルトガルの限界 不発のロナウドを外すべきだったのか
ユーロ2024準々決勝。ポルトガルはフランスと120分を戦って、0−0のまま決着をつけられずにPK戦へ突入した。ラウンド16で、スロベニアに同じく0−0から延長PKとなり、GKディオゴ・コスタ(ポルト)が3連続ストップで勝利を収めていただけに、勝算があったか。しかし、フランス戦では1本も止められなかった。交代出場のジョアン・フェリックス(バルセロナ)が左ポストに当てると、最後はすべてを決めた相手に3−5で敗れた(カッコ内は2023−24シーズンの所属チーム。以下同)。
端的に言えば、2試合連続無得点が今大会のポルトガルの限界だった――。
無得点でユーロ2024から姿を消すことになったクリスティアーノ・ロナウド(ポルトガル)photo by Kazuhito Yamada/Kaz Photography
ポルトガルは伝統的に技巧的な選手を豊富に擁している。
今大会、ベルナルド・シウバ(マンチェスター・シティ)、ブルーノ・フェルナンデス(マンチェスター・ユナイテッド)、ヴィチーニャ(パリ・サンジェルマン)という3人のMFのテクニックは出色だった。サイドバックのジョアン・カンセロ(バルセロナ)も、技術面で言えば世界屈指。ヌーノ・メンデス(パリ・サンジェルマン)、ラファエル・レオン(ミラン)はいわゆるテクニシャンではないが、トップスピードで技術が落ちない。交代で出場したジョアン・フェリックス、ルベン・ネベス(アル・ヒラル)、フランシスコ・コンセイソン(ポルト)も同様だ。
必然的に、ボールプレー中心のプレーモデルになる。
試合立ち上がり、強度の高いフランスに押し込まれるも、ポルトガルは徐々に巻き返し、優位に試合を進めている。ブルーノ・フェルナンデスが際どいシュートを放ち、ラファエル・レオンが左サイドから仕掛け、ヴィチーニャがうまくボールを運び、動かす。時折、鋭いカウンターを浴びたが、ペペ(ポルト)、ルベン・ディアス(マンチェスター・シティ)のセンターバックは番人のようにはじき返していた。
キリアン・エムバペ(パリ・サンジェルマン→レアル・マドリード)のワンツーからのシュートなどはやはり超人的だったが、後半に入っても、ポゼッションで攻めながら、後ろが守り切る、というペースは失っていない。
60分、カンセロのスルーパスから、ブルーノ・フェルナンデスが惜しいシュートを浴びせる。62分、ヴィチーニャが敵陣で受け、ラファエル・レオンとのパス交換から折り返しをシュート。ボールプレーで敵を上回り、守備を崩していた。カウンターも浴びたが、ランダル・コロ・ムアニ(パリ・サンジェルマン)のシュートはルベン・ディアスがブロック。ウスマン・デンベレ(パリ・サンジェルマン)の突破は破格だったが、ペペが食らいついた。快速FWたちに挑む41歳のペペの格闘ぶりは、感動的ですらあった。
【大きな国際大会で初のノーゴール】しかし、ゴールが足りない――。その役を担うエース、39歳のクリスティアーノ・ロナウド(アル・ナスル)が不発だった。
前半、ロナウドはほとんどボールに触れていない。終了間際のFKは蹴る気満々だったが、ブルーノ・フェルナンデスに蹴られてしまう。後半、こぼれ球をヒールシュート。ようやく動きが活発になったが、ポストワークははまらず、裏に走っても相手につかまってしまう。味方とパスの意図が合わず、フラストレーションから咆哮を上げた。
延長前半、ロナウドは、コンセイソンが右サイドから切り込み、折り返した絶好のボールに合わせている。しかし右足でヒットできなかった。たしかに後方にボールがくる形だったが、全盛期だったら、体を畳み込んで打てたかもしれない。本人の苦悶に似た悔しそうな表情が、すべてを物語っていた。
「ロナウドはゼロ得点に終わる。大きな国際大会では初!」
スペイン大手スポーツ紙『マルカ』は、ロナウドが大会を通じ、初めて0点だったことを見出しに打っている。20年前、ユーロ2004で得点を決めて以来の、その歴史が途切れたのだ。
逆説すれば、ポルトガルはロナウドが得点を決めることで、栄光を作ってきた。今回のユーロも、予選ではロナウドが9試合10得点と大車輪の活躍を見せる。言われなき批判も受けるが、不動のエースだった。
つまり、ロナウドという火力が不完全燃焼に陥った時、ポルトガルに勝ち目はなかったのである。
誤解を恐れずに言えば、フランスがサッカーで上回って勝ったわけではない。極めてフィジカルなチームで、パワーやスピードを効率に特化していたにすぎず、面白味は乏しかった。エムバペやデンベレが見せた突破はワールドクラスだったが、あくまで単発。アントワーヌ・グリーズマン(アトレティコ・マドリード)はエレガントだったが、彼に供給されるボールは限られ、"シャンパンサッカー"だとすれば炭酸が抜けていた。
PK戦は、どちらが勝っても決定的な違いはない。
しかし、ポルトガルが負けた理由は明白だろう。ロナウドがゴールを決められなかった、それに尽きる。スロベニア戦も、彼はゴールに迫っていたが、やはり外していたし、PKまでもヤン・オブラク(アトレティコ・マドリード)にストップされていた。
では、ポルトガルはロナウドを外すべきだったのか。
実際のところ、ロナウドほどピッチで感情を露にし、チームをけん引できる存在はいなかった。彼のいないチームは迫力を欠いただろう。ジョアン・フェリックスやゴンサロ・ラモス(パリ・サンジェルマン)に何ほどのことができたか。
つまり、ポルトガル代表とロナウドは運命共同体だったのだ。
「ロナウドの代表ラストゲーム? 違うよ。我々はチームとしてともに苦しんだ。個人的な決断はまだ下していない」
ロベルト・マルティネス監督は、そう言ってロナウドを気遣った。サッカー史に名を残す巨人へのリスペクトか。しかし、幕はいつか下りるものだ。
7月8日の準決勝。ポルトガルを下したフランスは、スペインとの対戦が決まっている。