ユーロ2024も残すところ、あと数試合。ヨーロッパを代表するスター選手、経験豊富なベテラン、期待のヤングプレーヤー......それぞれが躍動し、大会をさらに盛り上げている。今回は注目を集める若手のなかでも「21歳以下」に絞って5人をピックアップしてみた。


わずか16歳で貫禄十分のスペイン代表ラミン・ヤマル photo by AFLO

 まずはイングランド代表のジュード・ベリンガム。昨年オフにスペインのレアル・マドリードに移籍し、初年度にいきなりチャンピオンズリーグ優勝の立役者となった彼は2003年6月生まれの21歳。サッカー選手を値付けするデータサイト『Transfermarkt』が発表する市場価値ランキングで1位(1億8000万ユーロ)に輝く若き至宝だ。

 2022-23 シーズンまではドルトムントに所属していたこともあり、ユーロ2024が開催されているドイツ国内のメディアの扱いも大きい。今週はイングランドがキャンプを張るブランケンハイン近くの町エアフルトで、タピオカ片手に両親とピザ屋さんに入って44ユーロの食事をしたことが報じられ、あらためてその注目度の高さを感じさせた。

 しかしながら、今大会でのパフォーマンスは上がってこない。グループステージは突破したが1勝2分という成績もあいまって、イングランドが「眠たい」「つまらない」と酷評される主犯のひとりに挙げられている。

 ベスト8進出を果たすも、チームは4試合でわずか4得点。そのうちの2得点をベリンガムが決めているものの、評価は上がらないどころか期待値の分だけ落胆や批判も大きい。パッとしない理由のひとつには、フィル・フォーデンやハリー・ケインとの役割分担が明確でなく、それぞれの持ち味が消えてしまっている戦術に原因があると言われている。

 しかしラウンド16のスロバキア戦では、0-1と敗戦濃厚だった後半アディショナルタイムに鮮烈なバイシクルシュートを決めて、イングランドを窮地から救い出した。自身も「ベストゴールのひとつ」と胸を張るこのゴールで、これを機に復調してほしい。

【2003年生まれはスター候補ぞろい】

 一方、開催地ドイツで輝きを放っているのは、21歳のジャマル・ムシアラだ。2003年2月生まれの彼はイングランドで育ち、ベリンガムとは世代別代表でチームメイトの幼な馴染み。親友と呼べる間柄で、ベリンガムが熱心にイングランド代表で戦おうと誘っていたほどだ。

 それでも、バイエルン移籍後に17歳だったムシアラは、自らの判断でドイツ代表を選択した。そんな背景もあり、ドイツのファンはムシアラをことさらに愛しているのかもしれない。

 ムシアラは繊細で柔らかなボールタッチでエリアに侵入してゴールを狙う、ドイツには少ないタイプだ。これまでは最後に決めきれず物足りなさの残る印象もあったが、今大会では現在3ゴールで得点ランク1位タイ。いまやドイツの得点源として機能し、得点王も狙える位置につけている。

 ドイツを率いるユリアン・ナーゲルスマン監督との相性もよさそうだ。「自由と信頼を与えてくれるから本能でプレーできる」と信頼を寄せている。今大会中にもうひとつ、次なるステップをのぼることができるか注目したい。

 もうひとりドイツ代表で注目を集めている選手と言えば、ムシアラと同じ21歳で2003年5月生まれのフロリアン・ビルツだ。17歳でレバークーゼンからブンデスリーガデビューした彼は、2021年3月に18歳で初めて代表入りも果たし、その年に行なわれた前回大会のユーロのメンバーに選ばれるかもしれないと話題になった。

 だが、最終的には負傷もあってメンバー外となり、同年に行なわれたU-21ユーロに回ることになった。この時にビルツを慰めたのが、同じレバークーゼンの先輩カイ・ハヴァーツ(現アーセナル)で「まだ若く、学ぶことはたくさんある。焦るな」と言ったという。その結果、ビルツはじっくりと力を蓄え、昨季は32試合11得点とレバークーゼンの主軸にまで成長した。

 ただ、今大会のビルツは苦戦している。グループステージ3試合には先発したものの、決勝トーナメント1回戦のデンマーク戦ではベンチスタートとなった。

 ビルツの武器は、相手選手の間でボールを受けるポジショニングのよさと、ミドルレンジのシュートやパスを繰り出すことのできる力強さ。だが、その魅力をまだ発揮できていない。

【ティーンエイジャーが主軸になる時代】

 そして今大会、最大の注目選手はなんといっても2007年7月生まれのラミン・ヤマルだろう。昨季のバルセロナで衝撃を与えたスペイン代表の16歳だ。

 21時開始の試合は未成年保護法に抵触するのではないかとか、ユーロ期間中は学校の宿題をしているとか、ユーロ入りする前に中学を卒業する試験に合格したとか、メディアはこぞって"神童"を追いかけまわし、子ども扱いしたような話題が尽きない。

 同時に、ユーロに出場している選手たちも気になっているようだ。21歳のムシアラは「16歳なんてクレイジー。僕が16歳の時は、プロと一緒にトレーニングする身体になっていなかった。なのに、彼は安定してハイレベルでプレーしている。すごいことだよ」と感心しきり。

 ヤマルは左利きの右ウインガーで、スピードドリブラーというタイプ。快速と柔らかいタッチが武器で、するするとゴール前に侵入していく。ちなみにヤマルはパリ五輪に出場できる年齢だが、五輪メンバーからは外れている。

 最後に取り上げるのは、トルコ代表のケナン・ユルディズ。2005年5月生まれの19歳だ。彼はドイツのバイエルン州で生まれ、7歳からバイエルンの下部組織で育ってきた。

 だが、2022年夏にバイエルンU19からユベントスU19に移籍すると、昨年11月には早くもトップチームに昇格。プロとしてのキャリアをスタートさせた1カ月後には、クラブの歴代最年少得点記録を作っている。

 ユルディズはトルコとドイツの二重国籍ながら、一貫して世代別カテゴリー時代からトルコ代表を選択してきた。ドイツ代表にはイルカイ・ギュンドアンをはじめ多くのトルコ系選手がいるが、その事情はさまざまである。

 テクニックが高いフォワードで、中央で待つターゲットというより、動き出しに優れたタイプ。今大会では研ぎ澄まされた感性で、ゴールを期待したい。

 ユーロ2024は例年以上に若手のインパクトが強い印象だ。いつかこの大会を振り返る時、若手が活躍した大会として思い出されることになるのではないだろうか。