ヨーロッパ周辺の美容師事情って?

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「手先が器用」というイメージがある日本人は、海外で美容師として働くケースも少なくないようです。アフターコロナで、再び海外へ渡航できる状況になった今、数年ぶりに「海外で仕事がしたい」と考える美容師の人もいると思いますが、そもそも海外と日本の美容師には、技術・必要な資格や免許などにどんな違いがあるのか、一般的にはあまり知られていないのではないでしょうか。

 そこで、現役美容師の原木佳祐さんに、ヨーロッパ周辺の美容師事情についてお聞きしました。

ドイツでは「ゲゼレ」という資格が必要

Q.海外でも、日本の美容師免許は通用するのですか。

原木さん「日本の美容師免許は国家資格にあたるのですが、海外では日本の免許をそのまま使うことはできません。そのため、働きたい国で美容師になるにはどうすればいいのか、リサーチしておく必要がありますね。

国によっては、国家資格ではないものの資格があったり、日本とは異なる国家資格があったり、はたまた免許が一切なかったり…というケースもあります。

例えばドイツは、技術の継承・指導を熟練の技術者が行う『マイスター』という職人制度の発祥の地で、美容師になるには『ゲゼレ(職人)』という資格が必要です。イギリスは免許制度こそありませんが、自分の技術を証明するための技術資格があり、取得していると就職時に大きなアピールポイントとなるようです。

また、美容師としてのスキルは直接関係ありませんが、スムーズにコミュニケーションを取るためには、現地の言語をある程度習得しておきたいところですね」

Q.ヨーロッパ周辺で求められる技術や、施術に使う道具も、日本とは違うのでしょうか。

原木さん「ハサミやくしといった道具に関しては、基本的に大きな違いはありませんが、日本でカラーやパーマなどの施術の際によく使う『イヤーキャップ』を海外では使わない、といった細かな違いはありますね。また、海外のカラー剤やパーマ剤は日本のものよりも薬剤が強いものが多く、日本では使用できない成分が含まれているものもあります。

あとは、やはり日本人やアジア人とは髪質の違いがあるため、求められるスタイルやカット・パーマなどのアプローチ方法が違う、ということはあると思います。例えば、日本人はナチュラルなスタイルに仕上げることが多いですが、欧米ではパーティーなどに出向くために、しっかりブローをして仕上げるオーダーも少なくありません」

Q.アシスタントやスタイリストなどの仕組みはどうでしょうか。

原木さん「日本ではアシスタントがつき、一つの施術内容に対して共同で作業することが多いですが、海外では基本的に一人で担当します。その代わり、『カラーはこの人』『カットはこの人』というように、施術内容ごとに専任を分けるスタイルが多く、日本のように『最初から最後まで同じ担当者』ということはあまり見られません。

日本では、実績が少ないうちはまずアシスタントから、という流れになることが多いのですが、ヨーロッパではアシスタントを雇わずにスタイリストだけが在籍するサロンもあります。その場合、サロンが定めている基準や求める技術を満たしていると判断されれば、スタイリストとして雇用されるようになる、という仕組みですね」

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 アフターコロナの影響も手伝って、「再び海外で働いてみたい」と考える人も増えつつあります。美容師はどの国でも技術者として求められる職業ではありますが、免許や資格の制度は国によって全く違うのだそう。髪質やトレンドのスタイルも、日本人とは全く違うということが少なくないため、事前によくチェックしておきましょう。