ドイツで開催されているユーロ2024は、早くもグループステージが終了した。

 今大会は試合チケットを持っていればローカル線が36時間限定で無料になり、新幹線に相当する長距離列車も格安で購入することができる。というわけで、スタジアムのある街や鉄道駅は常に大混雑の大賑わい。老若男女がそれぞれの我が国を応援すべく、日々盛り上がっている。


C・ロナウドは今大会まだ1アシストのみ photo by AFLO

 グループFのジョージア対ポルトガルでは、スタジアムに向かうトラムや大会用の臨時増発列車で見たサポーターたちの出立(いでたち)が特徴的だった。ジョージアを応援する人たちはユニフォームを着ているとは限らず、大きな旗を体に巻きつけたり、番号の入っていないユニフォームを着ていたり、帽子をかぶっていたりとさまざま。一方、ポルトガルを応援する者はほとんど、クリスティアーノ・ロナウドの「7番」がプリントされたユニフォームを着ていた。

 どちらかといえば、ジョージアを応援する観客のほうが盛り上がっていただろうか。トラムや列車のなかでスタジアム内のようなコールを繰り広げ、大声で歌ったりしていた。

 そんなふうに場外で盛り上がるのを微笑ましく見てしまうのは、ジョージアが今大会唯一のユーロ初参加国だから。しかもポルトガル、トルコ、チェコが対戦相手のF組で、ジョージアはグループステージ第2戦を終えた時点で勝ち点1の最下位。第3戦ポルトガル戦で敗れれば大会を去らねばならない状況で、観戦する側にとっても貴重な1試合となったわけだ。

 ところが試合は、前半2分にジョージアが先制する。ポルトガルは前の試合から先発メンバーを8人も入れ替えて臨んだが、それが裏目に出たか。

 ポルトガルは3バックのアントニオ・シウヴァの横パスが味方に届かず、パスを受けた形のジョルジュ・ミカウターゼがピッチ中央から一気に縦パスを前線に送る。これに追いついたクヴィチャ・クヴァラツヘリアが一気にペナルティエリアへと侵入し、前に出たGKディオゴ・コスタをあざ笑うかのように、左足でゴール右隅に沈めた。

【孤立するロナウド。退いたあとのほうが...】

 ミスからの失点に、ポルトガルは明らかに意気消沈した。すでに首位突破を決めているからか、大幅なメンバー変更が仇(あだ)となったか、いまひとつテンションが上がらない。

 GKコスタとともに3試合連続で先発したクリスティアーノ・ロナウドも苛立ちを隠せなかった。結果的に、この日のロナウドはこれといったパフォーマンスを見せることはできなかった。無得点に終わり、主要大会の1次リーグでは11大会目にして初めてノーゴールに終わっている。

 ポルトガルにとっての最初のチャンスは、ロナウドのフリーキックだった。17分、ゴール正面からの強烈なキックを見せた。だが、GKギオルギ・ママルダシュヴィリのセーブにあってしまう。

 28分には、左CKからチコ・コンセイソンのシュートにつながったシーンで、ロナウドはシャツが引っ張られたことをいつまでもアピールし続け、それによってイエローカードをもらう。35分には、左サイドからの攻撃でジョアン・パリーニャのパスをボックス内で受け、左足でシュートを放つも至近距離のディフェンダーに防がれた。

 後半もチャンスはあった。47分、左CKからファーサイドのロナウドのもとへこぼれ球がくるも、左足シュートはまたもディフェンダーにあたって枠の上へ。それ以降、ロナウドに大きな見せ場は訪れることなく、66分でピッチを退いた。途中交代は今大会3試合目で初めてのこと。退く際にはペットボトルを蹴り上げ、苛立ちを露わにした。

 皮肉なことに、ロナウドが退いたあとのほうが、ポルトガルの前線には動きが見られた。ロナウドが出場している時間帯は、とにかく彼が中央でパスを待ち受けるため、両サイドからのクロス一辺倒となるからだ。

 ただ、3バックのジョージアの両サイドの裏をついてクロスを上げるも、クロスに飛び込む枚数が少なく、ロナウドは孤立。クロスを上げてくることも容易にわかるので、ロナウドが相手ディフェンダーにひっかかるケースは何度も見られた。ロナウドが苛立ちを見せたのも、致し方ないだろう。

【決勝トーナメントで最多ゴール更新なるか】

 それでも、3度はあった決定機を、かつてのロナウドだったら1度くらいは決めていたのではないだろうか──などと考えてしまう。チェコ戦とトルコ戦で好パフォーマンスを見せていたとはいえ、1アシスト止まり。『キッカー』誌を見てもロナウドの採点は両試合とも標準の3.0で、突出したパフォーマンスとは言えなかった。

 交代に苛立つ様子から、本人は年齢による衰えを微塵も感じていないようだ。しかし、観客のほうがが「もう39歳だし......」という色眼鏡で見てしまうのもまた事実。ただ、大会最多の通算14得点を決めているロナウドがこのまま黙っているわけがないだろう。そう期待しつつ、決勝トーナメント・ラウンド16のスロベニア戦を楽しみにしたい。