渋野日向子、完全復活の兆しである。

 今季海外メジャー第2戦の全米女子オープン(5月30日〜6月2日/ペンシルベニア州)で2位に入ると、メジャー第3戦のKPMG全米女子プロ選手権(6月20日〜23日/ワシントン州)でまたも奮起。初日から上位争いに加わり、そのまま通算2アンダー、7位タイという好成績を残した。


全米女子オープン2位に続いて、全米女子プロでも7位タイと、今季メジャーで躍動している渋野日向子 photo by Getty Images

【(コースは)狭い。どれだけ木に当たるか楽しみ】

「(コースは)日本でもなかなか見ない狭さかなと。(ドライバーは)前より自信を持って臨めると思いますけど、それにしても狭い。気持ちよくは振れないだろうし、難しいと思うから、どんな感じになるかわからない。どれだけ木に当たるか楽しみです(笑)」

 試合前にはそんな自虐的なコメントを発していた渋野だが、初日を4バーディー、2ボギーの「70」でラウンド。首位と2打差の2アンダー、4位タイと絶好のスタートを決めた。

「10番のボギーがデカかったと思います。まず、セカンド(2打目)ね。フェアウェーに出せればよかったんだけど、木に当たっちゃったって感じで。さらにサード(3打目)も。(グリーン左の池に)入れたくないっていうか、気になっちゃって。それでちょっと右に出ちゃってバンカー。もう最悪なパターンでした。ほんと、ダボ(ダブルボギー)でもおかしくないような感じだったんですけど、(ボギーでしのいで)そこからしっかり切り替えることができました。

 やっぱり1個のミスでどれだけスコアを落とすかっていう感じだったから、結構最後まで集中できていたと思いますけど。(メジャーで4日間を戦うのは)スタートがすごく大事だと思うんで、まずはそこがクリアできてよかったな、と。明日以降も、しっかり気を引き締めて頑張らないと」

 2日目も4バーディー、2ボギーとふたつスコアを伸ばした渋野。通算4アンダーとして、順位は3位タイに浮上した。

「(10番スタートから)3連続バーディー発進をして(自分でも)すごいびっくりしていたんですけど、そこからはなかなかバーディーが取りきれなくて。でも、個人的にはすごくラッキーもあった一日だったので、このスコアで終われてよかったかな、と。

 今週はブチッて切れたら終わりだなとは思っているんで、3パットしてもそのきっかけにならなかったっていうのはよかったと思うし、自分でも冷静になろうと思ってやっているから、(3パットのあとも)いいショットが打ててよかった。今までは自分にひとつも自信がなかったけれど、全米女子オープンで2位になったことで、ちょっと自信が戻ってきた」

【不安要素が前よりも減って、持ちこたえた】

 最終組で回った3日目、緊張した面持ちの渋野は、ボギーが3つ先行する苦しい展開を強いられた。それでもその後に盛り返し、最終的にはひとつスコアを落としたものの、通算3アンダーの5位タイと上位をキープした。

「最初、ドタバタしてどうなるかと思ったけど、最後まであきらめずにプレーできた。後半、ボギーを打たなかったのがよかったかなと思いました。(序盤はメジャー大会の最終組で)緊張もあった? それもあったかな、と思いますね。ちょっとダフダフって感じで、最初の数ホールは自分がゴルフをやらされている感があったような。なんか、自分でコントロールできていないなっていう感じだったんで。

 苦しい時期だったら、そこで終わっていた? もう(上には)戻ってこられないですよ。もう、はるか彼方に行ってる、間違いなく。でも、5番のバーディーが変わるきっかけになった。やっぱり不安要素が前よりも減って、なんか持ちこたえていたのかなって。ただ(自分への期待も生まれてきて)もうちょっとなんとかなったと思う。後悔もあるので、すごくもったいない一日だったかなと感じます」

 迎えた最終日、前半は2バーディー、2ボギー、1ダブルボギーと大味な展開となって優勝争いからは早々に脱落してしまったが、後半14番でバーディーを奪って「73」でフィニッシュ。トータル2アンダー、7位タイと粘りを見せた。

「初日、2日目がよく耐えて頑張ったな、というなかで、3日目、4日目で伸ばしきれなかったのは、すごく残念だなと思いますし、もうちょっと上には行けたんじゃないかなとも感じるんで、これからもっと練習して頑張りたい。

(ミスは)最小限に抑えられていたけど、ダボも打ったりして、グリーン上はかなり苦しんでいるんで。この2日間、いや4日間通してですけど、3パットが多すぎるんで、そこが残念だと思う。ほんと、チャンスにつけている回数も多かったのにね。そこを決めきれなかったのがもったいないなとは思っていますけど。まあでも、そっからスルズルいかなかったのはマシなのかな......」

 全米女子オープンに続いて、メジャー大会で連続トップ10入りを決めた渋野だが、満足気な表情を見せた前回と違って、今回は悔しさを滲ませて反省の弁を繰り返した。それだけ、現在の状態がよく、自らへの期待値も上がっている証拠だろう。

 2019年のAIG全英女子オープンで世界の頂点に立ったあと、米ツアー挑戦に向けてはスイング改造を試みるなどして、ここ数年は苦しい時間を過ごしてきた。だが、今やその苦難の時を完全にクリアし、"シブコ節"も冴え始めている。

 全米女子オープン2位をきっかけにして、自ら「新章」の始まりを口にした渋野。今回の全米女子プロ選手権7位タイという結果によって、その現実味はさらに増した。

 かつて世界を席巻した真の"シブコ・スマイル"が再び爆発する日が、そう遠くない日に訪れる予感がする。