育成年代にプロテインやサプリメントは必要か(写真はイメージ)

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元横浜高校野球部の寮母・渡邊元美さん「プロテインサプリメントは“保険”」

「息子にプロテインは摂らせてもいいの?」「ジュニアプロテインを飲めば身長が伸びる?」など、子どものプロテイン摂取に関心のある親は少なくない。では実際にプロテインサプリメントは、小・中学生の段階で必要なのだろうか。元横浜高校野球部の寮母で、松坂大輔選手、筒香嘉智選手らを食事面からサポートしてきた経験を活かし、現在は学生アスリートの身体づくりサポート活動を行っている管理栄養士の渡邊元美さんに話を聞いた。

「私の見解では、プロテインサプリメントも、どうしても摂らなければならないものではないと思っています」と渡邊さん。小学生から中学生にかけては、まず食事を整えて栄養をとることを身につけてほしいと語る。

プロテインはタンパク質ですが、きちんと3食、栄養バランスのとれた食事を摂っていれば、1日に必要なタンパク質は摂取できます」

 一般的なジュニア用プロテインは、1回で7〜8グラム程度のタンパク質を摂取できるが、これは納豆1パックとほぼ同量。タンパク質を摂ることが目的なら3食の食事で十分摂取できる量だ。必要な栄養を普段の食事から、もしくは、一度にたくさん食べられない場合は、食事回数を細かく分ける「補食」よって、摂取することを最優先してほしいという。

 ジュニアプロテインはタンパク質だけでなく、カルシウムや亜鉛などの微量栄養素も含まれるため、「偏食のお子さんが飲むと、他の栄養素が多少なりとも摂取できるので、体の調子が良くなったと感じるケースはあるかもしれません」と渡邊さん。しかし、プロテインを摂っていることで安心し、日々の食事をおろそかにしてしまう危険性もある。「あくまで“保険”として、筋トレをたくさんした後とか、体調不良で食事があまりとれていない時など、状況に応じて摂取することをお勧めします」という。

「(練習量・運動量の多い)高校野球の強豪校や、プロに行けば、普段の食事だけではとりきれない栄養素は出てきます。そうなるとプロテインサプリメントが必要になる時期は来ますが、小・中学生の間は、まず食事を第一に考えてほしいですね」

食トレの基本は適切な食事…「食べる理由を知ること」も重要

 渡邊さんは、この先ステージを上げていくためにも体づくりは重要で、「食事は練習の一部」であるとも話す。

 ただし、「どんぶり○杯がノルマ」「2合弁当(お米2合をタッパーに詰めた弁当)を残さずに食べる」といった“強制的”な食べさせ方や、罰則を与えてトラウマになるようなきつい食べ方ではなく、「食べることによって体がどのように大きくなり、競技のパフォーマンスがどう向上するのかを理解させる方が、より効果が期待できます」と言う。

 最近は適切な食トレの認識が指導者にも浸透しつつあり、無理やり食べさせるような方法は減ってきている。渡邊さんが推奨する、食事回数を細かく分ける補食であれば、無理なく1日に必要なエネルギーを摂取できる。特に少食な子にはまず、補食で「食べる量を少しずつ増やしていく」のがお勧めだ。

 何をどのように、どのくらい食べればいいのか。一流といわれるアスリートは睡眠を含め、自分を知り、管理し、高いパフォーマンスを継続的に発揮するための「体づくり」を行っている。親や指導者は、「なぜ食べることが重要なのか」を折りに触れてわかりやすく子どもたちに伝え、無理のない方法で、フィジカルも、メンタルも、大きく育てていきたい。(大橋礼 / Rei Ohashi)