「他人とハグをすることで癒やしが得られる」ということは、すでに広く知られています。新たに、ハグを含むさまざまな身体接触に関する分析で、「たとえ重い毛布や抱き枕、ロボットなどの無生物との接触でもある程度のメリットがある」ということが判明しました。

A systematic review and multivariate meta-analysis of the physical and mental health benefits of touch interventions | Nature Human Behaviour

https://www.nature.com/articles/s41562-024-01841-8



When and How Does Touch Make a Difference? - Newsportal - Ruhr-Universität Bochum

https://news.rub.de/english/press-releases/2024-04-09-psychology-when-and-how-does-touch-make-difference

New study highlights the benefit of touch on mental and physical health - KNAW

https://www.knaw.nl/en/news/new-study-highlights-benefit-touch-mental-and-physical-health

Science Confirms Hugs Can Ease Pain, Anxiety, And Depression : ScienceAlert

https://www.sciencealert.com/science-confirms-hugs-can-ease-pain-anxiety-and-depression

身体的な接触が人間の心身にメリットをもたらすということは、これまでに数多くの研究で報告されています。しかし、ドイツのルール大学ボーフムで神経科学を研究するジュリアン・パックハイザー氏は、「健康介入としての身体接触の重要性は認識していますが、多くの研究にもかかわらず接触の最適な利用方法や、具体的にどのような効果が期待できるのか、心身に影響を与える要因は何なのかといった点は不明でした」と述べています。

そこでパックハイザー氏らの研究チームは、約1万人以上の被験者が参加した合計212件の先行研究について包括的なメタアナリシスを行い、身体接触が人々の健康にもたらす影響について調べました。



メタアナリシスの結果、身体接触は人々の痛み・うつの症状・不安を軽減することが確認されました。身体接触のメリットは成人でも子どもでも得られましたが、乳児の場合は親に触れられるとプラスの影響が著しく大きくなり、年齢を重ねるにつれて接触する相手との親密さは重要でなくなっていくとのこと。

今回の研究に含まれた先行研究では、身体接触の種類はハグからマッサージまでさまざまでしたが、どのような接触方法かはそれほど重要ではありませんでした。一方、触れる場所は頭や顔が最も効果的であることがわかったそうです。また、身体接触する時間が長くなっても心身へのメリットが増加することはありませんでしたが、身体接触の頻度が高くなるとより有益な効果が得られることがわかりました。

パックハイザー氏は、「接触時間が長ければ長いほどいいというのは真実ではありません。高価なマッサージを長時間受ける必要はなく、短時間のハグでも良い影響が得られます」と述べています。

特に研究チームが注目に値すると指摘しているのが、「身体接触の相手が人間ではなく、重い毛布や抱き枕、ロボットなどの無生物であっても、ある程度のメリットが得られた」という点です。これらの無生物との接触は、精神的な健康にもたらす影響は人間との接触よりも少なかったものの、身体的な健康にもたらす影響は人間と同程度でした。



当然ながら身体接触がもたらす影響には個人差がありますが、少なくとも集団全体のパターンとしては、身体接触が心身の健康にメリットをもたらすことがデータで示されています。パックハイザー氏は、「家族や友人を抱きしめたいと思ったら、相手が同意する限り遠慮なく抱きしめてください」とアドバイスしました。