4月、U−23日本代表は「五輪男子サッカー8大会連続出場」をかけ、U−23アジアカップに挑む。アジアに与えられた出場枠は3.5(3位までが勝ち上がり、4位はアフリカのギニアとのプレーオフに回る)。決して簡単な目標ではない。

 もっとも、世界を見渡せばアジア予選は至って楽なほうだ。強豪がひしめき合う欧州は開催国フランスを含めて4枠、南米はたった2枠で、ブラジルが出場できないレベルである。W杯優勝国のイタリア、ドイツ、ウルグアイなども揃って予選落ちしている。

 出場権を獲得した場合、若き日本代表はパリでどんな相手と戦うのか?

 開催国U−23フランス代表は、多士済々である。その筆頭はレアル・マドリードのマルチプレーヤー、エドゥアルド・カマビンガと、アーセナルで台頭著しいDF ウィリアン・サリバのふたりか。他にも、パリ・サンジェルマンの奇才、18歳のMFザイール・エメリなどもいる。


フランス代表、レアル・マドリードでプレーするエドゥアルド・カマビンガ(21)photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 しかし、彼らのようにビッグクラブで定位置を取っている選手は、メンバー入りの可能性が低い。

 なぜなら、欧州では今年6月、EURO2024が開催される。フル代表の選手が五輪でプレーするのは例外で、前回の東京五輪の時もEURO2020の直後だっただけに、フランスはベストメンバーからは程遠く、トップチームで出場機会のないユース代表に近い面子だった。

 欧州が4枠に甘んじている理由は、そもそも五輪サッカーを重視していないからである。欧州の概念からすれば、ユース年代は21歳以下まで。23歳以下は、W杯との違いをひねり出すために作られた制限に過ぎない。たとえば五輪予選を兼ねたU−21欧州選手権は2023年の開催で、パリ五輪はそのおまけだ(他にも北中米カリブ海は2022年に行なわれたU−20北中米カリブ海選手権が五輪予選だった)。

 結果として過去7大会で欧州勢の優勝はない。ナイジェリア、カメルーン、メキシコが1回、アルゼンチン、ブラジルがそれぞれ2回。南米勢が有利で、伏兵にアフリカと言ったところか。

 今回も、その形勢は変わらないだろう。

【どこも上位進出の可能性があるアフリカ勢】

 その点で、ブラジルを退けて本大会に勝ち進んだアルゼンチンは優勝候補と言える。昨年は親善試合で日本に5−2と大敗する失態を演じたが、ハビエル・マスチェラーノ監督は戦えるチームを作ってきた。南米予選でもそうだったが、アルゼンチン人特有の"大会でのまとまり"は強烈だ。

 エスキエル・フェルナンデス(ボカ・ジュニオルス)、クラウディオ・エチェベリ(リバープレート)など国内の名門クラブ所属選手だけでなく、ティアゴ・アルマダ(アトランタ)、ファン・スフォルサ(バスコ・ダ・ガマ)、バレンティン・バルコ(ブライトン)、サンティアゴ・カストロ(ボローニャ)など、海外のトップクラブで、それぞれ力をつけつつある。

 伏兵には、アフリカU−23ネーションズカップで優勝して本大会出場の切符をつかんだモロッコを挙げたい。カタールW杯ベスト4のメンバーであるアブデ・エザルズリ(ベティス)がエース。ウィングプレーを得意とし、ネーションズカップでも最多3得点を挙げてベスト11に選ばれている。アブデ以外にも欧州各国でプレーする選手が多く、結束力も高い。

 アフリカ勢はどこも上位進出の可能性がある。エジプトは国内リーグが安定し、ビッグネームは不在だが戦力は充実。ネーションズカップのベストGKに選ばれたハムザ・アラー(アル・アリ)など、アフリカでは珍しく組織的な防御力が高いのが特徴だろう。マリは先日、日本を1−3と敵地で圧倒したように、畳み込む爆発力が武器だ。

 U−21欧州選手権準優勝でパリ五輪に出場するスペインは、本気になったら絢爛豪華な布陣である。ラ・リーガのトップクラブの猛者が勢ぞろい。アスレティック・ビルバオの若きファンタジスタ、オイアン・サンセット、レアル・マドリード育ちのMFアントニオ・ブランコ(アラベス)、バルサ育ちのサイドバック、ファン・ミランダ(ベティス)など枚挙にいとまがない。

【どこまで五輪に力を入れるか】

 バルサ育ちのU−23だけで、スーパーチームを組めるだろう。16歳ラミン・ヤマル、17歳パウ・クバルシのふたりは、いずれもバルサの下部組織ラ・マシア育ちで、それぞれリオネル・メッシ、カルレス・プジョルと比較される。日本で言えば高1、高2だが、トップチームでも定位置を取りつつあり、すでにフル代表にも選ばれている特級レベルだ。

 また、MFガビとフェルミン・ロペスはともに20歳で、すでにトップで実績を積む。昨年のU−17W杯で日本を沈めるゴールを決めた17歳のFWマルク・ギウや、シャビ・エルナンデス監督の秘蔵っ子で17歳のサイドバック、エクトル・フォルトもおり、18歳のMFパウ・プリムは「セルヒオ・ブスケッツの後継者」と目される。さらにラス・パルマスで定位置を取った左利きセンターバック、ミカ・マルモルや、U−21欧州選手権でもベストGKの呼び声の高かった22歳のアルナウ・テナス(パリ・サンジェルマン)も逸材だ。

 問題は、どこまで戦力を集められるか。前回のスペインはベストメンバーに近かったが、金メダルを逃している。さらにEUROにも出場したペドリはオーバーワークで慢性的なケガに悩まされている。五輪はFIFAの拘束権はなく、欧州勢は2軍に近い編成になる可能性もある。

 一方、日本は五輪重視の国だけに戦力糾合は可能で、オーバーエイジも含めると、メダルも手に届くかもしれない。パリ五輪世代の絶対的実力者、久保建英(レアル・ソシエダ)を戦力に加えられたら一気に力は跳ね上がる。さすがに所属クラブは難色を示すだろうが......。

 いずれにせよ日本は、まず出場権の獲得という試練に挑まなければならない。