プロ野球2024
真中満インタビュー第2回(全4回)
パ・リーグ順位予想

3月29日、いよいよプロ野球が開幕。昨年のパ・リーグはオリックス・バファローズが3連覇を果たしたが、今年のペナントレースの行方はどうなるだろう。東京ヤクルトスワローズでの現役時代に計4度の日本一を経験し、監督としても2015年リーグ優勝を果たしている解説者の真中満氏にパ・リーグの順位予想をしてもらった。

【バファローズ4連覇の可能性は50%】

ーーセ・リーグ編に引き続き、今度はパ・リーグについて、2024年ペナントレース順位予想をお願いしたいと思います。まずは予想順位から教えてください。

真中満(以下同) パ・リーグは、このように予想しました。

1位・オリックス・バファローズ

2位・埼玉西武ライオンズ

3位・千葉ロッテマリーンズ

4位・福岡ソフトバンクホークス

5位・東北楽天ゴールデンイーグルス

6位・北海道日本ハムファイターズ

ーーバファローズはリーグ4連覇で、新庄剛志監督のファイターズは3年連続最下位予想ですね。では、順を追って、その理由を教えてください。

 まずバファローズですけど、みなさんは「山本由伸の穴をどうするのだろう?」と心配していると思うけど、山下舜平太を筆頭に、昨シーズン中盤から台頭してきた東晃平が大きく期待できます。

 山岡泰輔も先発に復帰するというし、有望な投手がそろっているので、「山本の穴」は気にしなくていい。投手力はパ・リーグナンバーワンじゃないのかな?

ーー一方の打線はどうでしょうか?

 打線もいいですよ。昨シーズンは、いろいろ打線を組み替えたりして中嶋聡監督も苦労していたけど、今年はカープから西川龍馬が加わったことで、打線に芯ができた。この西川に加えて、森友哉がいることで、ある程度打順を固定できるようになると思うんです。そういう意味で、去年よりも得点力は上がると思いますね。


広島から移籍したオリックス・西川龍馬 photo by Kyodo News

ーー今季は「リーグ4連覇」を目指すことになりますが、他球団からのマークも、さらに厳しくなるのではないでしょうか?

 もちろん、厳しくなると思います。でも、中嶋監督のどっしりとした采配は、今年もチームに勝利をもたらすはず。ある程度は選手に任せながら、大事なポイントでは積極的に指揮を執る。監督の能力の差でも、バファローズが一歩飛び出していると思います。個人的には連覇の可能性は50%と見ています。

ーー2位は昨年5位のライオンズ。躍進の理由は何でしょうか?

 ライオンズも投手力がいいからです。郄橋光成、今井達也、そして平良海馬の三本柱は盤石です。そして、3年目の隅田知一郎も安定してきたし、ドラフト1位ルーキーの武内夏暉がすごくいい。長身で制球力もよくて、すぐに一軍で活躍できると思います。中継ぎ陣に甲斐野央が加わったことも大きい。万全の陣容で2位にしました。

ーー松井稼頭央監督は就任2年目となります。

 昨年は、計算していた山川穂高の離脱やWBCで負傷した源田壮亮の不振もあって、思うような采配ができなかった。でも、手探り状態のなかで若い選手を積極的に起用しながら我慢の采配を続けていました。

 今年は戦力もそろっているし、先ほど言ったように投手陣もリーグ屈指の陣容なので、昨年のようなことはないと思います。

【ホークスは打撃陣の高齢化が気がかり】

ーー3位はマリーンズという予想ですが、その根拠は何でしょう?

 昨シーズン2位になったように、チームとしての実力はあると思います。ただ、昨年もそうだったけど、今年も打線が不安定な気がするんです。

 去年はジャイアンツからポランコが加わって、今年はベイスターズからソトを獲得した。このふたりがきちんと機能して、打線につながりができれば得点力も期待できるけど、もしもどちらかが、あるいはふたりとも機能しなければ、かなり攻撃力がダウンしてしまう。そこが大きなポイントです。


今季の順位予想を発表した真中満氏 photo by Tanaka Wataru

ーープロ5年目、佐々木朗希投手については、どのように見ていますか?

 去年までのように中10日とか間隔を空けて投げるのではなく、今年こそ中6日でローテーションを守ってほしいし、実際に守っていけそうな気がします。昨年復帰した種市篤暉がしっかり投げて、昨年10勝の小島和哉が今年もある程度の成績を残せれば、佐々木の負担も軽くなるし、理想的なローテーションも組めると思います。

ーーここからはBクラス予想ですが、4位は小久保裕紀新監督が就任したホークスです。

 このチームは投手陣に不安が残るので4位予想としました。もちろん頭数はそろっているんだけど、東浜巨や石川柊太にしても、昨年はそれぞれ6勝、4勝とピリッとしなかった。

 今年も同じ程度の成績だと上位進出は苦しくなります。ローテーションの中心は有原航平、和田毅だと思うけど、今年43歳になった和田をいつまでも頼りにしているわけにもいかない。やっぱり、先発投手陣には不安が残りますね。

ーー山川穂高選手が加入した打撃陣についてはどう見ていますか?

 打撃陣はみんな計算できるバッターばかりです。山川が加入してさらに厚みを増したのは事実だけど、柳田悠岐が今年36歳、中村晃が35歳、今宮健太が33歳と高齢化している点が気がかりではありますけどね。それでも、みんなまだ元気だし、近藤健介は今年も打ちそうだし、これでBクラス予想はまずいかな(笑)?

ーー3位のマリーンズと入れ替わる可能性もありますか?

 もちろん、十分ありますよ。昨シーズンの両者の対決は12勝12敗1分で、完全な五分。直接対決で勝ち越したほうが上位に行く可能性もグッと高まりますから。

【3年目の新庄ファイターズがパ・リーグをかき回す!?】

ーー続いて、5位は今江敏晃監督が就任したイーグルスです。

 イーグルスの場合も、投手陣が高齢化しつつあるのが気になりますね。岸孝之が今年40歳になる。田中将大は36歳、則本昂大は34歳。今年あたり、荘司康誠、早川隆久が完全に独り立ちできるようになると浮上の目もあるんですけど、まだ現状ではそこまでいっていない。

ーー松井裕樹選手のメジャー移籍によって、則本投手が新たにクローザーとなりました。

 則本のクローザー転向はいい選択だったと思います。スピードがあって三振がとれて、馬力がある。連投もできるでしょうから、ここに関して心配はないです。

ーー一方の打撃陣はいかがでしょうか?

 正直言えば、いつまで経っても「浅村栄斗頼み」という感じがありますね。阿部寿樹や島内宏明、岡島豪郎も30代半ばで、早く若手が台頭してきてほしい。ここ数年は、ずっとそんな打線が続いていて、今年も目ぼしい若手は見つからないですね。

 僕が言いたいのは、今江監督はまだ40歳。選手との距離も近いので、監督1年目は遠慮することなく、どんどん自分のやりたい野球をやってほしいということです。

ーー続いて6位は、就任以来2年連続最下位の新庄剛志監督率いるファイターズです。

 僕は最下位予想にしましたけど、ここ2年に比べて戦力は確実にアップしています。昨年までなら「Aクラスは厳しいな」というイメージだったけど、今年は「Aクラスもある最下位予想」というのが正直なところ。確実にチーム状態は上向いていますよ。

ーー具体的にはどんな点でしょうか?

 松本剛、万波中正は完全に新庄監督の下で独り立ちしましたよね。さらに僕が期待しているのはプロ6年目の野村佑希。もともと、バッティングセンスは光るものがあったけど、なかなかひと皮むけていない。一塁やレフトを守ることも多いけど、サードで固定したほうがバッティングにもいい影響を与えると思いますが、スローイングについて首脳陣からの評価が低いのかもしれない。今年は野村に期待しています。

ーー投手陣についてはいかがでしょうか?

 もちろん、上沢直之の移籍は大きいけど、その分、今年は伊藤大海を中心にローテーションを組んでいくことになりそうです。去年は田中正義がクローザーとしてめどが立ったので、そういう意味では新庄監督も継投がかなりラクになったはず。

 パ・リーグ5球団と比較すると、ちょっと苦しい部分はあるけど、それでも新庄監督就任以来、今シーズンがもっとも戦力的に充実しているので、パ・リーグをかき回してほしいですね。

ーー次は古巣・スワローズの戦力を分析していただきます。まずは、野手陣から。

第3回<ヤクルト打線は「忖度なしでセ・リーグNo.1」 真中満が考えるベストオーダーは「6番・山田哲人」>

第1回<【真中満のセ・リーグ順位予想】巨人は「Bクラス」も打倒・阪神の「一番のダークホース」 中日、ヤクルトは躍進>

最終回<ヤクルト先発投手陣は「いくら考えてみても苦しい...」 真中満が「12勝」を期待するキーマンは?>

【プロフィール】
真中満 まなか・みつる 
1971年、栃木県出身。宇都宮学園、日本大を卒業後、1992年ドラフト3位でヤクルトスワローズに入団。2001年には打率.312でリーグ優勝、日本一に貢献した。計4回の日本一を経験し、2008年に現役引退。その後、ヤクルトの一軍チーフ打撃コーチなどを経て、監督に就任。2015年にはチームをリーグ優勝に導いた。現在は、野球解説者として活躍している。