日本の子どものお弁当がおかずたっぷりで彩りや詰め方が美しいのに比べ、米国ではサンドイッチにリンゴやバナナといったシンプルなランチが定番です。ところが、ランチボックスを開けたとき、そこには日本のお弁当にはない物と感動が……。米国の親は、メニューや彩りなどとは違う方法で、子どもに愛情を示しています。

↑愛情の伝え方は中身だけじゃない

 

カードにはジョークやなぞなぞも

米国の子どもが学校でランチボックスを開けた時に「わあ!」と感動するのは、「ランチボックスノート(Lunchbox Notes) 」と呼ばれるカードが入っているから。もともとは紙ナプキンに短いメッセージを書き添えたような簡素な物でしたが、今日では専用のメッセージカードまで販売されています。

 

メッセージにとどまらず、ジョークやなぞなぞなどをカードに書く親もいます。どのカードにも「メッセージを読んだ我が子に昼食を楽しく過ごしてほしい」という願いが込められているのです。

↑子どもが喜ぶランチボックスノート

 

例えば、カードにはこのようなことを書きます。

 

まずは、

You are awesome!(あなたは最高!)

I am so proud of you.(すごいね、私も嬉しいよ)

Today is your best day.(今日は最高の日だね)

といった称賛や励ましの言葉です。

 

また、

Why did John eat his homework?

Because his teacher said it’s a piece of cake.

(どうしてジョンは宿題を食べたの? 先生が「この宿題は楽勝だよ」と言ったから。※「it’s a piece of cake」は「余裕、超簡単、楽勝」という意味の慣用句)

といったジョークもあります。

 

さらに、

What runs but doesn’t have legs?

A river.

(「走る」けれど足がないものはなに? 答えは川。※「run」は「走る」という意味のほかに「(水が)流れる」という意味もある)

といった、なぞなぞもあります。

 

SNSで過熱

↑自慢したい人が多い

 

インターネットで「lunchbox notes idea」を検索すると、メッセージ例や印刷テンプレートなどがたくさんヒット。アマゾンやハンドメイドマーケットプレイスのEtsyなどでは、ランチに添える専用のメッセージカードが売られています。この習慣に熱心な保護者が多いということの現れでしょう。

 

その背景には、SNSの普及が影響しているようです。自らのメッセージのアイデアや凝ったカードなどを、ネット上に公開する人が現れ始めたからと言えます。

 

それらに触発されてか、毎日必ずカードを添えなければならないと思い込む人や、我が子を大袈裟に褒めたり凝り過ぎたりの内容を書く人もいるので、ネットではやり過ぎには気をつけようという声も挙がり始めました。

 

なぜランチボックスノートがここまで発展したのかといえば、米国ではメッセージカードを贈り合う習慣が根強いということです。誕生日、クリスマス、何かのお祝い、学校の先生への感謝、ちょっとしたお礼など、さまざまな種類のカードが市販され、手作りする人もいます。

 

また、食料品店やドラッグストアといったお店に行っても必ずメッセージカードを書くコーナーが設けられているなど、「書いて伝える」という文化が当たり前になっているからでしょう。

 

ランチボックスノートを書く親たちは、「離れている時でも我が子のことを考え、愛していると伝えたいから」と口をそろえます。教育専門家によれば、親の愛情を伝える小さなメモやカードは子どもの精神を安定させ、優しさや思いやりを育む効果も生み出すそうです。

 

執筆・撮影/福田マダール 有希子