ゴミが埋め立てられなくなる?リサイクルを収益に…循環型ビジネスのヒントが盛りだくさん!
「テレ東プラス」は、「エシカル特集」の一環として、2023年11月に開催された「ETHICAL DESIGN WEEK TOKYO 2023」(主催:株式会社船場)をリポート! エシカルデザイン&ビジネスの最前線を取材した。
▲「SHARE GREEN MINAMI AOYAMA」にて開催
3年目となる同イベントは、エシカルデザインを発信するだけでなく、未来にやさしい空間を考える体験型コンテンツを多数企画。サステナビリティに知見のあるゲストを招いた貴重なカンファレンスを無料で行った他、“エシカルマテリアル”などの展示コンテンツを企画。
DJステージやトークショー、アップサイクルワークショップなども企画し、ビジネス関係者だけでなく、一般客も来場可能なフリーイベントに。会場には5600人を上回る来場があり、イベントは大盛況のうちに幕を閉じた。
「ETHICAL DESIGN WEEK TOKYO 2023」の公式サイトでは、ビジネスヒントが満載の貴重なカンファレンスを無料配信中!
「テレ東プラス」では、カンファレンスの中から「資源循環の仕組みをつくる」の内容をピックアップ。廃棄物の活用に真剣に取り組む各業界のトップランナーたちの取り組みや展望を紹介する。
◆
【株式会社ごみの学校】
▲代表取締役・寺井正幸氏
多くの社会問題・環境問題の解決が求められる中で、ごみ問題に関しては、まだまだ知られていないことが多いという。ごみの実態を学び、考え、行動する人を増やすことで、良い社会を作れるのではないか…そんな経緯から設立されたのが「株式会社ごみの学校」だ。
かつて廃棄物処理会社に勤めていた代表の寺井さんは、ごみに関する情報やメッセージを発信、資源循環の支援やセミナーなどさまざまな活動を展開し、ごみの認知を上げようと奮闘している。
「年間600万トンの食品が捨てられ、日本人は年間約33億着の服を捨てると言われています。世界では、年間約800万トンのプラスチックが流れ出ているというデータも。太陽光パネルも、将来的には年間約1400万枚廃棄されると予測されているように、今、世界で、ごみの問題が注目されています。
まず、埋め立て地には、20年以内にごみが埋められなくなるということが確実視されています。そのため、地域はみんな“ゼロウエイスト(無駄、浪費、ごみをなくす)”“サーキュラーエコノミー(循環経済)”の必要性を感じています」と寺井氏。
「サーキュラーエコノミーとは、事業者や自治体や市民が“最小限の資源で最大限の価値を生むにはどうしたらいいのか”を考えること。リサイクル会社ではない人たちがリサイクルに取り組むことで、これまでない技術が発達し、新しい経済循環が生まれる。これは、これから確実に起きる変化で、全ての企業や市民が関わってくる“新しい経済や社会の在り方”だと思っています」
私たちの生活や暮らしに変化が生まれ、収益にもチャンスにもなる。これからは誰かに責任を託すのではなく、みんなで一緒にごみのことを真剣に考えて取り組む“共創的な循環”を描いていくことが大切だと語った。【株式会社船場】
▲右からEthical Design Lab.ゼロウエイスト推進室長・神戸暁氏、Ethical Design Lab.ゼロウエイスト推進室・下岡周平氏
イベントを主催する「株式会社船場」は、資源循環型社会の実現に向け、エシカルな仲間づくりを本格稼働。「未来にやさしい空間を」というミッションのもと、循環型社会の共創を目指す。
今回は、下岡氏が「ゼロウエイストの取り組み」について紹介。内装業界の工事現場から排出される廃棄物には、ある特徴が見られるという。
内装工事にはさまざまな資材が使用され、施工に伴って多種多様な廃棄物が発生。現場で特に多く排出されるのが、混在して処理される混合廃棄物で、“再資源化しにくい廃棄物”として位置付けられている。他の工業製品とは違い、製品が工事現場で完成するため、その分別や回収、リサイクルが困難とされてきた。
そこで「船場」は、2020年に廃棄物マネジメントの向上と環境整備を目的に全社を横断する「ゼロウエイスト推進室」を設置。その具体的な取り組みは以下だ。
・残置物(机や椅子や事務用品)処理の理解と推進
・現場での確実な分別(排出する前に現場で混ぜない、種別毎に分けて排出する)
・分別努力の見える化(排出後も追跡し、デジタルでモニタリング。データを集計し、現場にフィードバックする)
▲「船場」では、分別効果が高く、内装工事現場で多く排出される8品目を選定。社内や協力企業に分かりやすく伝えることを意識している
▲内装工事現場で排出される大量の残置物
下岡氏は「5〜10年でつくられたものが解体廃棄される現状があり、まだまだきれいで使える家具なども存在し、漠然と、“もったいない”と感じていました。ゼロウエイストの取り組みについては、パートナー企業様にご理解ご協力いただき、推進することができています。今後はマテリアルリサイクル率を高めていくような“リサイクルの質”にもこだわっていきたい」と展望を話した。
【チヨダウーテ株式会社】
▲常務取締役・平田一久氏
完全リサイクル可能な世界で最も環境に優しい石膏ボードと環境ソリューションの提供を経営ビジョンに掲げている建材メーカー「チヨダウーテ株式会社」。
石膏ボードは、建物の壁や天井に幅広く用いられている内装建材である。耐火性や遮音性、施工容易性等の製品特徴を持つ一方で、廃棄に関しては様々な規制が存在している。石膏ボードをそのまま埋め立てると、主原料の硫酸カルシウムが土の中で混ざって硫化水素が発生するケースがある為、法律で「管理型(埋め立て)処分場」で処分することが義務付けられている。
解体系廃石膏ボードの一部は石膏ボード向けにリサイクルされているが、その割合はわずか6%。今後は高度経済成長期に建てられた住宅が解体時期を迎えるため、解体系廃石膏ボードの排出量が右肩上がりに増えていくと予想されている。
そんな中、同社は、世界で初めて石膏ボードのサーキュラーエコノミー (ボードtoボード)を実現。現場から廃石膏ボードを収集し、独自の技術で廃石膏をリサイクルすることによって、埋め立て処分に頼らないサーキュラーモデルを確立し、今年6月、世界で初めて、原料に廃石膏ボードを100%活用した「チヨダサーキュラーせっこうボード」を発売。発売以降、各地から問い合わせが相次ぎ、採用事例も増加している。
平田氏は、「Made in Japanの“世界で最も環境に優しい石膏ボード”を通じて、世界中の環境市場に貢献していきたい」と話した。
【株式会社On-Co】
▲左から、素材アーティスト・村上結輝氏、共同創業者 新規事業創出担当・藤田恭兵氏
既存のビジネスに捉われない新しい価値創造の追求へ…。
「株式会社On-Co」は、空き家を活用する「さかさま不動産」や、廃棄問題に対して、新素材開発というクリエイティブな手法でアプローチするアップサイクルコミュニティ「上回転研究所」を展開している。
廃棄される野菜や果物の⽪などを活⽤したレザーはヴィーガン素材の⼀種で、小銭入れや服、カバンなど、さまざまなプロダクトに応⽤することが可能。
新素材「カフェオレベース」は、名前の通りコーヒーと⽜乳を使って作る。⽜乳で接着剤を作り、コーヒーかすと混ぜ合わせて成形。普段は捨てるしかない廃材に、新しい命を吹き込んでいる。
村上氏は、「素材を生まれ変わらせるということをワークショップなどで皆さんに体感してもらい、社会問題を自分ごと化することで、面白いアイデアを生み出せるような社会にしていきたい」と話した。
【株式会社エクシィズ】
▲エコレボ事業部研究開発課・和田英次氏
岐阜県多治見市に本社を構えるタイル商社「株式会社エクシィズ」。商品を卸売するだけではなく、社内でモザイクアートや絵タイルの製造、特注タイルの製作なども行っている。
タイルの売り上げは約30年で6分の1に減少。すると、タイル業界は値下げするしかなく、メーカーに値下げを要求すると、最終的には鉱山をやっている土屋さんが儲からなくなり、土地を売る、さらには後継者問題につながって廃業するなど、根深い問題があるという。
「そもそもタイルは劣化が遅く、長持ちする頑丈なもの。劣化しないため捨てるタイミングがわからず、売れ残りや在庫がいつまでも残っているような状態です。弊社は、メーカーが抱えるデッドストックやサンプルを買い取り、ポップアップショップやECサイトで販売し、その収益の一部をメーカーさんにお戻ししています。それによって廃棄されるタイルを救いながらメーカーの開発活動を向上させていく持続可能なしくみをつくりました」(和田氏)
現在はCO2削減を考え「焼かないタイル」にも挑戦している。
【エシカル、循環型ビジネスのヒントがいっぱい! 貴重なカンファレンスを、「ETHICAL DESIGN WEEK TOKYO 2023」公式サイトで配信中!】
エシカルデザインに関連したテーマについて、各業界で活躍する方々を招き、トークセッションを実施。
・『サーキュラーエコノミーとエシカルデザイン』
ゲスト:「Circular Initiatives&Partners」代表 安居昭博氏
・『資源循環の仕組みをつくる』
ゲスト:「株式会社ごみの学校」代表取締役 寺井正幸氏
・『循環するエシカルな素材』
エシカルな建材や製品のつくり方、空間づくりへの活かし方、素材の循環について様々な視点で対談。
▲「SHARE GREEN MINAMI AOYAMA」にて開催
3年目となる同イベントは、エシカルデザインを発信するだけでなく、未来にやさしい空間を考える体験型コンテンツを多数企画。サステナビリティに知見のあるゲストを招いた貴重なカンファレンスを無料で行った他、“エシカルマテリアル”などの展示コンテンツを企画。
DJステージやトークショー、アップサイクルワークショップなども企画し、ビジネス関係者だけでなく、一般客も来場可能なフリーイベントに。会場には5600人を上回る来場があり、イベントは大盛況のうちに幕を閉じた。
「テレ東プラス」では、カンファレンスの中から「資源循環の仕組みをつくる」の内容をピックアップ。廃棄物の活用に真剣に取り組む各業界のトップランナーたちの取り組みや展望を紹介する。
◆
【株式会社ごみの学校】
▲代表取締役・寺井正幸氏
多くの社会問題・環境問題の解決が求められる中で、ごみ問題に関しては、まだまだ知られていないことが多いという。ごみの実態を学び、考え、行動する人を増やすことで、良い社会を作れるのではないか…そんな経緯から設立されたのが「株式会社ごみの学校」だ。
かつて廃棄物処理会社に勤めていた代表の寺井さんは、ごみに関する情報やメッセージを発信、資源循環の支援やセミナーなどさまざまな活動を展開し、ごみの認知を上げようと奮闘している。
「年間600万トンの食品が捨てられ、日本人は年間約33億着の服を捨てると言われています。世界では、年間約800万トンのプラスチックが流れ出ているというデータも。太陽光パネルも、将来的には年間約1400万枚廃棄されると予測されているように、今、世界で、ごみの問題が注目されています。
まず、埋め立て地には、20年以内にごみが埋められなくなるということが確実視されています。そのため、地域はみんな“ゼロウエイスト(無駄、浪費、ごみをなくす)”“サーキュラーエコノミー(循環経済)”の必要性を感じています」と寺井氏。
「サーキュラーエコノミーとは、事業者や自治体や市民が“最小限の資源で最大限の価値を生むにはどうしたらいいのか”を考えること。リサイクル会社ではない人たちがリサイクルに取り組むことで、これまでない技術が発達し、新しい経済循環が生まれる。これは、これから確実に起きる変化で、全ての企業や市民が関わってくる“新しい経済や社会の在り方”だと思っています」
私たちの生活や暮らしに変化が生まれ、収益にもチャンスにもなる。これからは誰かに責任を託すのではなく、みんなで一緒にごみのことを真剣に考えて取り組む“共創的な循環”を描いていくことが大切だと語った。【株式会社船場】
▲右からEthical Design Lab.ゼロウエイスト推進室長・神戸暁氏、Ethical Design Lab.ゼロウエイスト推進室・下岡周平氏
イベントを主催する「株式会社船場」は、資源循環型社会の実現に向け、エシカルな仲間づくりを本格稼働。「未来にやさしい空間を」というミッションのもと、循環型社会の共創を目指す。
今回は、下岡氏が「ゼロウエイストの取り組み」について紹介。内装業界の工事現場から排出される廃棄物には、ある特徴が見られるという。
内装工事にはさまざまな資材が使用され、施工に伴って多種多様な廃棄物が発生。現場で特に多く排出されるのが、混在して処理される混合廃棄物で、“再資源化しにくい廃棄物”として位置付けられている。他の工業製品とは違い、製品が工事現場で完成するため、その分別や回収、リサイクルが困難とされてきた。
そこで「船場」は、2020年に廃棄物マネジメントの向上と環境整備を目的に全社を横断する「ゼロウエイスト推進室」を設置。その具体的な取り組みは以下だ。
・残置物(机や椅子や事務用品)処理の理解と推進
・現場での確実な分別(排出する前に現場で混ぜない、種別毎に分けて排出する)
・分別努力の見える化(排出後も追跡し、デジタルでモニタリング。データを集計し、現場にフィードバックする)
▲「船場」では、分別効果が高く、内装工事現場で多く排出される8品目を選定。社内や協力企業に分かりやすく伝えることを意識している
▲内装工事現場で排出される大量の残置物
下岡氏は「5〜10年でつくられたものが解体廃棄される現状があり、まだまだきれいで使える家具なども存在し、漠然と、“もったいない”と感じていました。ゼロウエイストの取り組みについては、パートナー企業様にご理解ご協力いただき、推進することができています。今後はマテリアルリサイクル率を高めていくような“リサイクルの質”にもこだわっていきたい」と展望を話した。
【チヨダウーテ株式会社】
▲常務取締役・平田一久氏
完全リサイクル可能な世界で最も環境に優しい石膏ボードと環境ソリューションの提供を経営ビジョンに掲げている建材メーカー「チヨダウーテ株式会社」。
石膏ボードは、建物の壁や天井に幅広く用いられている内装建材である。耐火性や遮音性、施工容易性等の製品特徴を持つ一方で、廃棄に関しては様々な規制が存在している。石膏ボードをそのまま埋め立てると、主原料の硫酸カルシウムが土の中で混ざって硫化水素が発生するケースがある為、法律で「管理型(埋め立て)処分場」で処分することが義務付けられている。
解体系廃石膏ボードの一部は石膏ボード向けにリサイクルされているが、その割合はわずか6%。今後は高度経済成長期に建てられた住宅が解体時期を迎えるため、解体系廃石膏ボードの排出量が右肩上がりに増えていくと予想されている。
そんな中、同社は、世界で初めて石膏ボードのサーキュラーエコノミー (ボードtoボード)を実現。現場から廃石膏ボードを収集し、独自の技術で廃石膏をリサイクルすることによって、埋め立て処分に頼らないサーキュラーモデルを確立し、今年6月、世界で初めて、原料に廃石膏ボードを100%活用した「チヨダサーキュラーせっこうボード」を発売。発売以降、各地から問い合わせが相次ぎ、採用事例も増加している。
平田氏は、「Made in Japanの“世界で最も環境に優しい石膏ボード”を通じて、世界中の環境市場に貢献していきたい」と話した。
【株式会社On-Co】
▲左から、素材アーティスト・村上結輝氏、共同創業者 新規事業創出担当・藤田恭兵氏
既存のビジネスに捉われない新しい価値創造の追求へ…。
「株式会社On-Co」は、空き家を活用する「さかさま不動産」や、廃棄問題に対して、新素材開発というクリエイティブな手法でアプローチするアップサイクルコミュニティ「上回転研究所」を展開している。
廃棄される野菜や果物の⽪などを活⽤したレザーはヴィーガン素材の⼀種で、小銭入れや服、カバンなど、さまざまなプロダクトに応⽤することが可能。
新素材「カフェオレベース」は、名前の通りコーヒーと⽜乳を使って作る。⽜乳で接着剤を作り、コーヒーかすと混ぜ合わせて成形。普段は捨てるしかない廃材に、新しい命を吹き込んでいる。
村上氏は、「素材を生まれ変わらせるということをワークショップなどで皆さんに体感してもらい、社会問題を自分ごと化することで、面白いアイデアを生み出せるような社会にしていきたい」と話した。
【株式会社エクシィズ】
▲エコレボ事業部研究開発課・和田英次氏
岐阜県多治見市に本社を構えるタイル商社「株式会社エクシィズ」。商品を卸売するだけではなく、社内でモザイクアートや絵タイルの製造、特注タイルの製作なども行っている。
タイルの売り上げは約30年で6分の1に減少。すると、タイル業界は値下げするしかなく、メーカーに値下げを要求すると、最終的には鉱山をやっている土屋さんが儲からなくなり、土地を売る、さらには後継者問題につながって廃業するなど、根深い問題があるという。
「そもそもタイルは劣化が遅く、長持ちする頑丈なもの。劣化しないため捨てるタイミングがわからず、売れ残りや在庫がいつまでも残っているような状態です。弊社は、メーカーが抱えるデッドストックやサンプルを買い取り、ポップアップショップやECサイトで販売し、その収益の一部をメーカーさんにお戻ししています。それによって廃棄されるタイルを救いながらメーカーの開発活動を向上させていく持続可能なしくみをつくりました」(和田氏)
現在はCO2削減を考え「焼かないタイル」にも挑戦している。
【エシカル、循環型ビジネスのヒントがいっぱい! 貴重なカンファレンスを、「ETHICAL DESIGN WEEK TOKYO 2023」公式サイトで配信中!】
エシカルデザインに関連したテーマについて、各業界で活躍する方々を招き、トークセッションを実施。
・『サーキュラーエコノミーとエシカルデザイン』
ゲスト:「Circular Initiatives&Partners」代表 安居昭博氏
・『資源循環の仕組みをつくる』
ゲスト:「株式会社ごみの学校」代表取締役 寺井正幸氏
・『循環するエシカルな素材』
エシカルな建材や製品のつくり方、空間づくりへの活かし方、素材の循環について様々な視点で対談。