この記事をまとめると

■9月は事業年度締めでの上半期末となり、新車販売業界では半期決算セールが展開される

■増税前の2019年に比較すると及ばないが、コロナ禍以降新車の販売台数は大幅に増加した

■人気の軽自動車の一部は、モデルチェンジで値上げと納期が長くなっている

新車販売台数が前年比の100%超を達成!

 9月は事業年度(4月から翌年3月)締めでの上半期末となり、新車販売業界では半期決算セールが展開され、年間では事業年度末決算セール(2・3月)に次いで新車が売れる月となっている。

 2023年9月単月の新車販売台数を見ると、登録乗用車は自販連(日本自動販売協会連合会)の統計によると、23万7816台(前年同期比112.4%)、軽四輪乗用車は全軽自協(全国軽自動車協会連合会)の統計によると、12万5583台(前年同期比129.2%)となった。

 それぞれを新型コロナ感染拡大直前の2019年と比較すると、登録乗用車で約79%、軽四輪乗用車でも約79%となっている。この数字を見て、「あれ? それじゃ9月はいまひとつ調子悪かったのか?」と思うのは早計。じつは2019年9月は2019年10月から消費税率が8%から10%へ引き上げられる直前の駆け込み需要があったので、このような数値となっているのである。

 前年同期比では、軽四輪乗用車が約130%となっているのに対し、登録乗用車が約112%となっているのは単純に納期遅延の度合いの違いが結果となっているといっていいだろう。軽自動車ではまだまだ本調子とまではいっていないものの、ほとんどのモデルで数カ月以内に納車が可能な状況となっており、ディーラーでストックしている車種も出てくるようになっている。これはメーカー間格差もほぼなく、全般的な状況となっている。

 一方で登録乗用車では、販売トップのトヨタで納期遅延がまだまだ目立っているのが影響していることは否定できない。繰り返し述べているが、現状は単純に納車まで時間がかかるというものではなく、突然新規受注停止になるかと思えば、突然短期での納車が可能になるなど、納期混乱となってしまっている。

 トヨタ以外のメーカーでも一部人気車で納期まで時間がかかることもあるが、トヨタは人気車も多く広範に納期遅延傾向が続いている。

軽自動車は短納期であることが勝負の決め手

「半期決算セールといっても、たとえば7月あたりから半期決算の実績にしようと動き出し、受注に結びついたとしても、納車は10月以降どころか年越し(2024年以降)することもザラです。そのため、9月中に登録可能(登録できなければ実績反映できない)な、受注残車両(受注したが納車ができないでいる車両)は、書類回収などで問題を起こさずに、確実に登録できるようにするといった動きしかできないのです」とは、某トヨタ系ディーラーセールススタッフ。

 軽自動車では新型ホンダN-BOXがデビューした。現状ではなくともデビュー直後の新型車は、程度の差こそあれ納期が長引く傾向があるので、ライバルとなるスズキ・スペーシアもジャパンモビリティショーにてコンセプトモデルを出品し、その後次期型が発売予定となっている。N-BOX、スペーシアともに、新型登場直後は受注状況次第や生産状況次第ともなるが、若干納期が長引く状況となる。

 通常なら、とくに軽自動車では先代モデルの未登録(軽自動車なら未届け出)在庫車が引き続き販売され、車名(通用名)別ランキングで販売台数を落とさないようにフォローするのだが、その点はまだ通常期に戻りきっていないので、2車それぞれの動きは注目に値するといえるだろう。

 フルモデルチェンジをしばらく行わないダイハツ・タント、日産ルークスあたりは短納期を武器に対抗してくる可能性が高いので、ねらい目ともいえるだろう。新型になる2車では車両価格に諸物価高騰が反映されていることは否定できない。さらに、車両価格からの値引きもなかなか期待できない。新型にこだわらないというならば、届け出済み未使用軽中古車という選択も検討に値するし、おすすめともいえる。

 前述した継続販売しているタントやルークスでは、新車として購入する際も大幅値引きや用品特典などが期待できるので、こちらもねらい目になっているといえるだろう。

 ちなみに、2023年9月単月の販売台数が発表となると、2023事業年度締め上半期(2023年4月から9月)の販売台数も発表となる。登録乗用車では124万2388台(前年同期比約122%)、軽四輪乗用車では61万6155台(前年同期比110.2%)となっている。

「さっきは、軽自動車のほうが納期遅延はより改善傾向にあるとしていたじゃないか」というお叱りを受けそうだが、これは2022年の同時期における納期遅延が、登録車でより深刻だったためと分析することができる。いずれも着実に納期遅延がスピード感は別としても改善傾向にあることを統計数字は物語っているといっていいだろう。