日本女子オープン(福井県・芦原GC海コース)は、決勝ラウンドに入るとツーサムで争われる。今年は3日目と最終日に、菊地絵理香と原英莉花がいずれも最終組で回った。

 他の追随を許さぬ"マッチレース(エリカ対決)"の激闘を制したのは、原だった。黄金世代のひとりである原にとって、3年ぶり2度目の女子オープン優勝(通算5勝、そのうち、3つが国内メジャー)となった。

「メジャーに強いのかな......。難しいコースセッティングで、自分の"味"が出せた。やっぱり(日本女子オープンは)試合の雰囲気も違うし、コースも毎年変わって、新しい気持ちで臨めるというのもいい。過去の記憶に振り回されず、今の自分の状態で戦える」


圧巻のプレーを見せて、日本女子オープンを制した原英莉花

 3日目を終えて通算11アンダーで単独首位に立ち、2位の菊地とは1打差をつけて最終日を迎えた。5番パー5では310ヤードに迫る勢いのドライバーショットを放って2オンに成功し、イーグルを奪った。ショットがぶれることなく安定し、バンカーに入れることはあっても冷静に対処して、最終日のボギーは2番のひとつのみ。

「1番でバーディーが取れていい流れでいけるかと思ったけど、2番でボギーを叩いて、すごく気持ちが引き締まったというか......ガンガンいける感じじゃないんだなと、新たに気持ちを作り直してプレーできた」

 通算15アンダーと伸ばし、最終日をノーボギーで回った菊地に3打差をつけての戴冠だった。最大の武器である飛距離でたぐり寄せたチャンスを確実にものにし、優勝争いの終盤に訪れたピンチをしのいだパッティングも4日間を通じて好調だった。

「距離感の練習は常に毎週やっているんですけど......グリーンの状態がよかったこともあって、しっかり縦回転で打つことができていたから、読んだラインと(実際の打ったボールが)マッチしていた」

 5月に長く苦しめられていた腰のヘルニアの摘出手術を決断し、8月の復帰後、今大会が8戦目となった。原のボールには、日本語で「覚悟」を意味する「readiness」という言葉が刻まれている。

「腰が痛い時は練習ができないし、やりたい動きもできないし、ただ試合をこなさなきゃいけないというか、日々進んでいくなかで自分に自信が持てずにやっていくもどかしさ、消化のしようがない苦しさがあった。去年の夏は『シードを獲れないのでは?』と思いながら戦っていた。

 正直、『選手寿命は短いのかな』と思っているなかで、自分ができる挑戦を前向きに頑張る、強い気持ちで戦っていくという想いを込めて入れました」

 苦しい時期も、術後に不安にかられた時期も、「信じる者は救われる」と自身に言い聞かせた。

「開き直って『大丈夫』と信じることが大事だな、と。復帰後、1試合1試合、すごく長く感じたけど、(手術時に)もう一度、ゴルフが本当にできるのかという状況から考えたら、すごく早かったと思います」

 10月17日からは来季の米ツアー出場権をかけた2次予選会に挑戦し、通過すれば11月末から12月上旬にかけて実施される最終予選会に挑む。

 選手生命すら不安になるどん底から這い上がって3つ目のメジャータイトルを手にした24歳に、恐れるものはもはや何もないだろう。