ハッブル宇宙望遠鏡などで撮影した“こじし座”の相互作用銀河
こちらは「こじし座」(小獅子座)の方向約4億6500万光年先にある相互作用銀河の姿です。銀河の名前は向かって左側が「UGC 5984」、右側が「MCG+05-26-025」で、1966年に天文学者のホルトン・アープがまとめた特異銀河(特異な形態を持つ銀河)のカタログ「アープ・アトラス」には「Arp 107」として収録されています。
【▲ 相互作用銀河「Arp 107」。銀河の名前は左側が「UGC 5984」、右側が「MCG+05-26-025」(Credit: ESA/Hubble & NASA, J. Dalcanton)】
相互作用銀河とは、すれ違ったり衝突したりすることで互いに重力の影響を及ぼし合っている複数の銀河を指す言葉です。相互作用銀河のなかには潮汐力によって形が大きくゆがんでいたり、星とガスでできた尾のような構造が形成されていたりするものもあります。Arp 107の場合、左のUGC 5984は1つの大きく目立つ渦巻腕(渦状腕)を持っており、右のMCG+05-26-025との間にはまるで手をつなぎ合っているかのように橋のような希薄な構造が形作られています。
この画像の作成には「ハッブル宇宙望遠鏡(HST:Hubble Space Telescope)」の「掃天観測用高性能カメラ(ACS)」で取得されたデータが用いられています。欧州宇宙機関(ESA)によると、ACSによるArp 107の観測はアープ・アトラスに収録されている銀河を対象に「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(James Webb Space Telescope:JWST)」やハッブル宇宙望遠鏡自身による将来の詳細な観測の対象になり得る銀河を探す取り組みの一環として、2023年2月に実施されたということです。
また、画像の作成にはハッブル宇宙望遠鏡のACSだけでなく、セロ・トロロ汎米天文台のブランコ4m望遠鏡に設置されている「ダークエネルギーカメラ(DECam)」と、スローンデジタルスカイサーベイ(SDSS)による光学観測データも使用されています。DECamはその名が示すように暗黒エネルギー(ダークエネルギー)の研究を主な目的として開発された観測装置で、当初の目的である暗黒エネルギー研究のための観測は2013年から2019年にかけて実施されました。SDSSは宇宙の詳細な地図の作成を目的とした、全天の約4分の1をカバーする観測プロジェクトです。
冒頭の画像はハッブル宇宙望遠鏡の今週の画像として、ESAから2023年9月18日付で公開されています。
Source
Image Credit: ESA/Hubble & NASA, J. DalcantonESA/Hubble - A peculiar proceeding
文/sorae編集部