年齢を重ねると、親族や知人が亡くなることが多くなり、死を身近に感じるようになることも。まだ早いと思わず、いつか来るそのときのためにも、今から準備しておきませんか。死んでしまっては、葬儀や埋葬、相続などは自分ではできません。自分の意思とは違う方法で弔われたり、相続が行われたりしてしまうという可能性もあります。

自分の意思を残された人たちに伝えるためにも、生前からの準備「終活」が今、注目されています。
今回は、相続実務士の曽根恵子氏が監修する『一番かんたん エンディングノート』(扶桑社)から、相続トラブルを防ぐための方法を紹介します。

相続トラブルを防ぐために「遺言書」の準備を

生前の準備として有効なのが、遺言書です。とくに、相続については、相続人が複数いるのであれば、遺言書を書いておくといいでしょう。なぜなら、遺産の多少に関わらず、もめ事が起きる可能性があるからです。
「実際に、相続トラブルの半分以上が遺産1000万円以下というデータがあります。実家の分け方が決まらないなどの不動産をめぐるトラブルのほか、生前に介護をした人としなかった人の温度差があり、援助を受けていたかどうかなどで兄弟姉妹が争ったりもします。」と、相続実務士の曽根恵子さん(株式会社夢相続代表)。

とはいえ、遺言書を書くといっても、法律的なこともあるし、どう書いたらいいのかわからないという人がほとんどでしょう。遺言書には3種類ありますが、ここでは手軽に準備できる「自筆証書遺言」を紹介します。どのように書けば法的に効力のある遺言書を書けるのかを曽根さんに伺いました。

遺言書に書いておいたほうがいい項目3つ

遺言書を書く際に考えなければならないのが、どのような内容を盛り込むかです。基本的にはなにを書いても問題ありませんが、書いておいたほうがいい項目がいくつかあります。

●1:財産分与について

まず、「財産分与」についてです。自分の財産のうち、どれをだれに相続させるのかを決めましょう。財産を相続できる人は法律によって決められていて、それを「法定相続人」といいますが、法定相続人以外にも財産を残すことはできます。財産をだれにどのように配分するかは自由に決められますが、「遺留分」を侵害しないように配慮しましょう。遺留分とは、法定相続人が最低限相続できる権利のことで、法律で定められています。遺留分を侵害してしまうと、トラブルは不可避ですので、注意が必要です。
法定相続分と違う割合で分与する場合は、その理由を書き添えておきましょう。そうしておけば、自分の意思が伝わり、実現できて、無駄なトラブルを回避できます。
財産を相続させる際に条件をつけることもできます。たとえば、部屋の片づけや遺品の整理などの後始末をしてもらう代わりにほかの相続人より多めに分配したり、ペットの世話を引き継いでもらうために相続人以外の人に遺贈したりといったことができます。
遺言書とは別に、「財産目録」もつくっておきましょう。どのような財産があるのか、残された人たちが把握しやすくなりますし、財産目録を作ることで自分の資産状況がわかり、今後のライフプランをまとめるのに役立ちます。

●2:後見人や遺言執行者、祭祀の主宰者を指定しておく

次に、後見人や遺言執行者、祭祀の主宰者を指定しておくことも大切です。相続人のなかに未成年者がいる場合は、成年に達するまで財産を管理したりする「後見人」を指定するとともに、その後見人を監督する「後見監督人」も指定しておきましょう。
法的に効力のある遺言書があれば、原則として財産分与は遺言書どおりに行われますが、「遺言執行者」を指定しておけば、スムーズに遺言書の内容どおりに行ってもらえます。「祭祀の主宰者」とは、先祖代々のお墓を自分の代わりに守ってくれる人のことです。

●3:葬儀や埋葬についての希望

そのほか、葬儀や埋葬についての希望があれば記しておきましょう。現在は葬儀や埋葬の方法も多種多様です。葬儀ひとつをとっても、一般葬・家族葬・音楽葬などさまざまです。あえて葬儀を行わないという選択肢もあるでしょう。法的な拘束力はありませんが、自分の希望を家族に伝えることで実現してもらうことができます。

●遺言書の法的要件と保管場所を確認しよう

これらの内容をまとめたら下書きをします。下書きをしたら、家族や専門家などに相談するといいでしょう。清書する際は消えないように油性のボールペンや万年筆などで書きます。注意したいのは、「あげる」「譲る」「与える」などの文言は解釈が問題になることもあるので使わないことです。「相続させる」「遺贈する」と書いてください。

また、法的に効力をもたすためには、以下の要件を満たす必要があります。

(1) 全文を自筆で書く
(2) 署名をする
(3) 作成した日付を明記する
(4) 印鑑を押す

日付は「吉日」などと書くのではなく、正確に書いてください。印鑑を押す際には、長時間の保存に耐えられるように、できれば朱肉を使いましょう。書き間違えたときは訂正することもできますが、書き方など決められているため、書き間違えた場合は書き直したほうがいいでしょう。
清書し終わったら封筒に入れてしっかり封をして保管します。自宅で保管する場合は、亡くなった時に発見されやすい場所に置いておくことが大切です。
また、法務局に預けることもできます。1通につき3900円の手数料が必要になりますが、紛失や改ざんのリスクがなくなるので安心です。法務局に預ける場合は、遺言者と相続人の戸籍謄本が必要になります。

 

遺言書は、健康なうちに書いておけば、もしもの場合の備えになりますし、内容を変えたい場合などは遺言書を書き直すことで、新しいものが有効になります。
相続実務士の曽根恵子氏が監修する『一番かんたん エンディングノート』(扶桑社)は、「もしも」に備えて、自分の情報やお金や資産、健康状態、葬儀やお墓、死後の希望などをまとめられるノートです。自分で遺言書を作成できる「自筆証書遺言シート」もついているので、興味のある方はぜひ手に取ってみてください。