バリアフリーの暮らしを実現できる人気の平屋。しかし、ワンフロアなだけに、知られたくないプライベート空間の様子をゲストに隠しきれない悩みもあります。2年前に大きな中庭のある平屋の家を建てた日刊住まいライターは、3つ間取りの工夫で、プライベート空間を隠すことに成功しました。快適に暮らせる理由を紹介。

来客時のプライベート空間を確保できる平屋にしたい

筆者は2年前に、建築家と一緒に家づくりに取り組んでいるハウスメーカーで平屋の家を建てました。建築面積40.66坪で、大きな中庭があります。

家づくりでは、建築設計事務所&ハウスメーカーとじっくり検討。中庭を中心にぐるりと巡るように部屋がある間取りに。この家で夫婦ふたりと大型犬1頭で楽しく生活しています。

筆者にとって初めての家づくり。間取り検討時には「来客の際に、プライベート空間をどのように隠すか」ということに気を使いました。平屋は、すべての部屋がワンフロアに配置され、部屋間の距離が近いため、プライベート空間が来客の目に触れやすくなります。

これが上下階に空間を分けられる2階建てなら、あまり問題にならないでしょう。しかし、平屋で心地よく過ごすためには、とても大事なことだと思ったからです。

さっそく、来客時もプライベート空間を確保できるようにした、間取りの工夫を紹介しましょう。

 

工夫1.玄関からの動線を2つに分けた間取りに

上は筆者の家の間取り図です。パブリック空間(=LDK)とプライベート空間(=洗面所、収納、主寝室など)をきっちりと分け、かつ、それぞれの接点が最小限になるように配置しています。

玄関から廊下に向かうと、正面の窓越しに中庭が見えます。ここからの動線は2つ。中庭に沿う形で「右回り」と「左回り」の廊下があります。右回りの廊下を選ぶと、直接パブリックな空間へアクセスできます。

この間取りのため、わが家を訪れる人は、プライベート空間を一切通らずLDKへ。プライベート空間を見られることもありません。また、妻への来客時に、筆者がプライベート空間で過ごしていても、気を使わなくてすみます。

 

工夫2.目線をそらす玄関と中庭の目隠し壁

上の図のように、玄関を入ると中庭からへ視線が向くように玄関扉を配置する工夫もしました。中庭を囲む面のうち玄関の対面側は、窓のない壁にして目隠し。壁裏に寝室・浴室・ランドリーなどプライベート空間を配置しました。

一方、LDKの方向には、中庭を介して大きな窓があり室内が目に入ります。これで自然とLDKの方に目が行くように。訪れた人は、目隠し壁と大きな窓の効果で、プライベート空間のことはまったく意識せず、パブリック空間のLDKへ入ってくるのです。

工夫3.寝室、WIC、水回りを貫く裏動線を確保

さらに、プライベート空間にある寝室、WIC、ランドリー、洗面、浴室には通り抜け通路を設置。それぞれの部屋を行き来できる裏動線にすることで、来客を気にすることなくプライベート空間を移動できます。

浴室や洗面を使うのに、中庭を囲むようにある通路を通らすに行けるのは便利。来客があるときでも気にせずに使えて、とてもよかったと思っています。

 

暮らし始めて実感。効果を感じたシーンとは?

暮らし始めてみると、想定どおり、プライベート空間を隠すための工夫がよい働きをしてくれました。具体的にどんなシーンで、効果を感じたのか紹介します。

 

●玄関先で立ち話しても中が見渡せない

じつはわが家の場合、来客といっても玄関先での立ち話が大半です。そのときに話題になるのは中庭とLDK。

仲のよい人に事情を説明して話を聞くと、玄関扉の配置からファーストビューはLDK。その後、正面の中庭に目が行くそうです。

玄関での立ち話では、プライベート空間まで見渡すことができないので、まずは想定どおりの結果です。

 

●「寝室などはどこにあるの?」と聞かれた

友人が来たとき、しばらくリビングでくつろいだあと「寝室などはどこにあるの?」と、質問を受けました。

家の中を説明したあとで「中庭の向こうに部屋があると思わなかった」とのコメントが。中庭を見ながらLDKまで移動したので、反対側まで意識が向かなかったそうです。

中庭の存在でうまく視線を誘導できました。来訪者にとって玄関扉の向こうは未知の世界なので、視点が定まるまでの時間がかかります。中庭のように、印象的で目を引くものがあると、見せたくないものへ視線を向かわせない場合に有効だと感じました。

 

●来客に知られることなく、スマートに身支度完了

筆者が植木の職人とLDKで打ち合わせをしていたときのことです。昼寝していた妻が、物音で目を覚まし、身支度を整え、「あら、いらしてたんですね」となに食わぬ顔で登場しました。

妻によると、LDKからの話し声で来客に気づき、裏動線で洗面へ移動。洗顔・化粧、WICに戻って服を着替え出てきたとのこと。LDKを通って洗面へ行く動線ではこうはいきません。妻いわく、「この動線はかなり使える」そうです。

間取りは成功。でも音漏れ対策はもっとすべきだった

想定外だったのは「音」です。「昼寝から妻が目を覚ました」という先の説明にあるように、思った以上に、平屋では音が伝わります。

2階建てならば、空間を上下階に分け、防音性の高い天井・床で遮音することができるかもしれません。しかし、平屋の場合、空間を仕切るのは薄い屋内建具だけ。動線を分離して離すだけでは、音の伝わりを防ぐことはできませんでした。

つまり、シャワーの音や寝室での話し声は、パブリック空間まで伝わるということ。音漏れ対策までは考え至りませんでした。せめて、遮音性の高い扉にすればよかったと後悔しています。