「くま」が著者という前代未聞のレシピ本『ぼくはくま、特技はせん切りやねん!!!』が、7月13日に発売されました。Instagramフォロワーは、本の企画時5万人だったのがいまや14万人(7月27日時点)と、その勢いはとどまるところを知りません。そこで今回は、くまの保護者である「ママさん」を直撃取材。企画の話を聞いたときの話をはじめ、くまと歩んできた5年間のエピソードを尋ねたところ、編集担当の横山由佳さんも知らなかった事実が次々と発覚しました!

断ったはずの企画がいつのまにか進んでいた!?

くまくんとママさんはいつも一緒

―始まりは、編集の横山さんからInstagramのダイレクトメッセージを受け取ったことだと聞きました。その時の心境はいかがでしたか?

 

ママさん ありがたい話やなとは思いましたが、自信のあるレシピもそんなに数がないしどうしよかなって……2日くらい悩んだんですけど、やっぱりやめとこうと思って、断りのお返事をしたんですよ。

 

横山 え!?

 

ママさん 私、お断りしたつもりやったんです(笑)。ただ、無下に断るのも申し訳ないから、「レシピ本って感じではなくて、くまの写真をたくさん使った写真集みたいな内容だったらやってもいいかなと思います」って最後に付け加えておいたんですね。レシピ本って言ってはるから、こんなの絶対却下されるやろって。そしたら意外にも「そんな感じでいいですよ!」ってお返事をいただいて。

 

横山 あれ……そうでした!? 冷や汗が出てきました(苦笑)。

 

ママさん 私、断ったはずやのに、これは受けなあかんよな……まあええかって思って(笑)。

実際のメッセージのやりとり。これは……確実に断られてますね?

横山 あのときはお返事いただけたことが嬉しくて。どうしても今回の本を実現させたいあまり、最後の部分だけをいいように解釈して受け取って話を進めちゃったんです。

 

ママさん ただ、その後2か月くらい連絡がなくて、やっぱりあかんかったんやなって思っていた頃に「くまくんの身元が判明しました!」ってメッセージが届きました。しかも、「くまくんと一緒に東京に来ていただけませんか?」って。

そのとき、ちょうどこの子(くま)を連れて、奈良の公園で写真を撮ってたんですよ。そのまま奈良でぼーっとどうしようかなって考えてたんですけど、行ってみよか!って、その足で近くにあった旅行会社に行って新幹線のチケットを買いました。

 

―なんだかものすごい展開ですね!

 

ママさん 私の性格的に、気になることはやってみよう!ってパッと飛びつくタイプなんですよ。もちろん失敗することもたくさんありますけど。今回は良い方向に進みました。

 

「夫はいまだに本が出たことを知らない」驚愕の事実が発覚!

―その上京が、いわゆる「くまの身元確認事件」というわけですね(笑)。決定的な証拠は、足の裏だったと聞いています。

 

ママさん そうです。あとは、この赤いリボン。何回も外そうと思ったんですけど、なんとなくつけたままにしてたことが、プラスに働きました。

肌身離さずつけている赤いリボン

―運命の赤い糸ならぬ、赤いリボン! ちなみに、どうしてこんなに見た目が変わったのでしょうか?

 

ママさん はじめは、洗濯機で洗ってたんですよ。ネットにも入れずに、そのままポーンと。そうしたら、首がまわるようになり、耳が動くようになり、手足もいい感じに柔らかくなり。いつのまにか、なんでもポーズがとれるようになりました(笑)。さすがに最近は怖くて洗濯機では洗えないので、アルコール消毒をする程度やけど。決して意図したわけではなくて、私の雑な扱いがこの仕上がりにつながりました(笑)。

 

左のこぐまと右のくまくん、サイズこそ違えど、もとは同じ種類のくまでした。毛並みも色も別人(くま)……!

横山 本当にこのくまくん、どんなポージングもできるんですよ! 撮影のときも「右手を上げられますか?」って聞くと、「なんでもできるで〜」って。とにかく可動域がすごくて微妙なポージングの調整もしてくれるんです。こんな自立するくまのぬいぐるみ、他にはないですからね。

 

書店に自分の本を見に行くくまくん

―今回本を出版することになって、ご家族の反応はいかがでしたか?

 

ママさん 娘と息子がいるんですけど、いろいろ相談に乗ってくれてます。ただ、娘に薦められてInstagramを始めたんですけど、最近は私が夢中になってこの子の写真を撮ってると呆れた顔するんですよ! 自分が薦めたくせに!(笑) と言いつつ、友達に本が出ることを宣伝してくれてるみたいです。ちなみに、夫はこのことを知りません。

 

―え? 旦那さん、本が出たことを知らないんですか?

 

ママさん この子が家にいることは知ってるし、私がInstagramをやってることはなんとなく知ってる様子やけど、日中撮影してることも、本が出たことも知らないんです。年中無休のサービス業で、朝早くから夜遅くまで家にいないので。だから、東京に身元確認に行くときも、夫が家を出てから「よし!」ってサッと準備して、その日のうちに大阪に帰ってきました。

 

横山 もしかして、撮影隊が伺って本の撮影をしていたこともご存知ないんですか?

 

くまのママ そうなんですよ。いつ気づくんやろ?(笑)

 

カメラマンも嫉妬する「奇跡の1枚」の撮影裏話

―くまくんの代名詞にもなったキャベツのせん切りカットをはじめ、本当に奇跡の写真ばかりですが、もともと写真の勉強をされていたのですか?

 

ママさん 短大のときに写真の授業はあったんですけど、フィルムの現像方法を学んだくらいで、撮り方に関してはまったくでした。最初はね、スマホで撮ってたんです。そのうち、料理が綺麗に写るカメラが欲しいなと思うようになって、カメラ専門店に行って「料理がおいしく撮れるカメラちょうだい」って言って薦められたデジタル一眼カメラを買いました。実際に撮影してみたら、料理はもちろんやけど、「くまもめちゃめちゃ可愛く撮れるんや〜」って感動して。以来、ずっとそのデジイチで撮影してます。

 

―その店員さんにも感謝ですね。

 

ママさん ほんまですね。ただ、最強のカメラを手に入れたものの、カメラの知識がないから、光の加減とかもわからへん。とにかくバシバシ撮りまくってたら、だんだんと「このタイミングで、この角度で撮れば可愛く撮れんねんや」って見えてきました。

三脚とかも使ってないんですよ。クッションを積み上げて、絶妙なバランスでカメラを置いて。落ちたらどないすんねん!って思いながらも、今日までやってきました(笑)。

 

横山 本の撮影でカメラマンさんとママさん宅にお邪魔したんですけど、本当に難しいんですよ。奇跡の一枚を撮るために、1カットで2時間以上かかりました。でも、「ママさんがInstagramで撮影した写真以上のものを、プロである自分が撮れないのはマズイ」ってカメラマンさんに火がついてしまって。ママさんの愛情には負けるけど、愛を超えるプロの技があるはずだ!って、一心不乱に撮影されてました(笑)。

 

ママさん プロの写真はさすがやなって感動しました。特に、総扉のページをめくってすぐの写真は、見るたびに泣けてきます。私には撮れない写真です。

可愛さの中にどこか凛々しさも感じる、カメラマン渾身の一枚

お断りの返信から、まさかの出版に至るまでのなんともユニークなお話が聞けました。次回はいよいよ、くまくんが料理をしている撮影現場に潜入した様子をお伝えします。

 

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