ファーウェイは提携先の複数のEVメーカーの「統一販路」を構築しようとしている(写真は問界のウェブサイトより)

中国の通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)が、中国の自動車業界で前例のない野心的な試みに乗り出す。同社の自動車事業部門が後押しするスマートEV(電気自動車)の新ブランド「問界(AITO)」の販売網で、複数の自動車メーカーのEVを同一ブランドで販売するというものだ。

「近い将来には、『華為智選(ファーウェイ・スマートセレクション)』方式で開発したクルマは(製造メーカーが違っても)すべてこのルートで販売することになる」。6月30日、ファーウェイと提携する自動車メーカーの関係者が、匿名を条件にそう明かした。

(訳注:「華為智選」はファーウェイと自動車メーカーの提携方式の1つ。スマートEVの基本設計、コア部品の供給、制御ソフトウェアの提供など、共同開発の主導権をファーウェイ側が握る)

スマホの販売網など活用か

この関係者によれば、ファーウェイは問界ブランドの販売網をフランチャイズ方式で拡充しようとしており、同社の(スマートフォンなどを取り扱う)販売代理店やその他の投資家に応募を呼びかけているという。なお、財新記者はファーウェイに対して事実関係を問い合わせたが、本稿の締め切りまでに回答は得られなかった。

問界はもともと、2021年12月にファーウェイと中堅商用車メーカーの賽力斯集団(当時の社名は小康工業集団)が共同で立ち上げたブランドだ。華為智選方式の提携先は、当初は賽力斯集団だけだったが、後から国有中堅メーカーの奇瑞汽車や江淮汽車、国有大手の北京汽車集団傘下の北汽藍谷新能源科技などが加わった。

財新記者の取材によれば、奇瑞汽車は少なくとも4車種を投入する計画で、最初のモデルを2023年後半に発売する。


問界のEVは車内空間もハイテクイメージを強調する(問界のウェブサイトより)

江淮汽車は大型のラグジュアリーカーを生産する新工場を建設しており、2024年初めの竣工を予定している。北汽藍谷のニューモデルは、2024年後半の発売を目指す。

クルマの品揃えを相互補完

「ファーウェイの計画では、華為智選方式で共同開発した車種をすべて問界ブランドで販売する。複数の提携先メーカーが、ばらばらに新ブランドを設立するのは現実的ではない。むしろ問界ブランドに統一することで、クルマのラインナップを相互補完できるメリットがある」

前出の自動車メーカー関係者は、販路一本化の狙いをそう説明するとともに、自身の見方を次のように語った。


本記事は「財新」の提供記事です

「自分の会社はファーウェイの計画を支持しているが、他の提携メーカーの考えはわからない。新たな販売方式は、自動車メーカーがいくつかの車種の販売を実質的にファーウェイに委ねるものだ。仮に成功すれば双方が利益を得られ、失敗しても(自動車メーカー側の)リスクは小さい」

(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は7月1日

(財新 Biz&Tech)