トンネルの天井に巨大な扇風機が回っているのを目にすることがあります。あれはどんな目的なのでしょうか。

あるトンネルと無いトンネルがある理由

 クルマでトンネル内を走行中、周囲の音がくぐもって聞こえるなか、天井に巨大な扇風機が回っているのを目にすることがあります。あれはどんな目的なのでしょうか。


トンネル内に設置された巨大なファン(画像:写真AC)。

 道路施設を扱う機械メーカーに話を聞いたところ、この「巨大扇風機」はトンネル内の換気の役割を果たすものといいます。普段は排気ガスがトンネル内に充満しないよう、火災発生時は煙を排出するよう、それぞれ必要に応じて稼働しているとのこと。威力は大きいもので、平均風速35m/sというものもあり、台風並みの強風を送ることもできるそうです。

 といっても、トンネルには全部このようなジェットファンがついているわけではありません。長いトンネルでは、「換気所」をはじめとする立坑を設け、トンネルから地上へ排煙や火災煙を逃がす施設が備わっています。しかし、特に山岳道路では山腹まで垂直に「別のトンネル」を掘ることになり、建設費がかさみます。そこで比較的短いトンネルの場合、工法を比較検討した結果、ジェットファンによる換気が採用されることがあるといいます。

 4車線化された道路のように「上下線で別のトンネル」となっている場合、トンネルは一方通行なので、クルマの移動に押される形で気流が一定方向に流れ、比較的自然に換気が行われます。いっぽう対面通行だと、それが上手くいきません。また対面通行の場合、朝夕で上下線の交通量も変動します。それに合わせて、ジェットファンの回転の向きを変え、どちらの方向へ風を送るかを調整することもあるそうです。

 ある程度長いトンネルの場合、断面の上の部分を天井板で仕切って別空間とし、そこを排気ダクトとして活用する設計のものもありましたが、2012(平成24)年に、中央道の笹子トンネルでその天井板が崩落する事故が発生。それを契機に、天井板が撤去されジェットファンへ置き換わったところもあります。そもそも設置当時と比べ、排気ガスは各種の規制により大幅にクリーンなものになっており、安全対策も強化されています。