「スペーシアX」に関連する東武の施策は、単に「新しい特急車両を投入する」ことだけに留まらず、駅や沿線の施設にまで及びます。

「新型車両の投入」だけに留まらない東武の施策

 2023年7月15日のデビューが目前に迫った東武鉄道の新型特急「スペーシアX」。1990年の100系「スペーシア」以来、約33年ぶりとなるフラッグシップ特急です。旧スペーシアより定員を大幅に減らし、私鉄特急最大の個室「コックピットスイート」や、カフェが併設された「コックピットラウンジ」を設けるなど、豪華な設備が特徴です。ただ、東武の施策は単に「新しい特急車両を投入する」ことだけに留まらず、駅や沿線の施設にまで及びます。どのような取り組みを行うのでしょうか。


N100系「スペーシア」(画像:乗りものニュース編集部撮影)。

「スペーシアX」の座席は、「コックピットスイート」「コックピットラウンジ」「コンパートメント」「プレミアムシート」「ボックスシート」「スタンダードシート」の6種類があり、これは国内最多です。江戸文化や日光の要素も取り入れられています。運行区間は浅草〜東武日光・鬼怒川温泉間で、月〜水曜日は2往復、木・金・土休日は4往復が運転されます。

 これに合わせ、浅草駅と東武日光駅がリニューアルされ、浅草駅5番線は同列車の専用ホームとなります。浅草駅のホームの壁は木目調となり、光で演出されたデザインが特徴。乗車する前から、それ以外の列車と動線を分け、特別感を演出する徹底ぶりです。東武日光駅は待合室が改修され、こちらも木目調の落ち着いた空間となり、両駅で統一感のある雰囲気になりました。これらのリニューアルでは、栃木県産の大谷石や芦野石を使用しているといいます。

日光金谷ホテルの別館が7月15日にリニューアル

 沿線では、日本最古のリゾートホテルとして知られ、創業150周年を迎えた「日光金谷ホテル」が、「スペーシアX」の運行初日である7月15日に別館をリニューアル開業します。この別館は1935年に竣工した歴史ある建物で、久米設計の創立者・久米権九郎が設計を担当し、木造3階建てとなっています。
 
 今回のリニューアルでは外壁を補修したほか、屋根は新しく銅で葺き、宿泊客が直接触れる家具や壁面、床を一新。エレベーターが新設されました。登録有形文化財に指定されていることもあり、限られたスペースでの難工事だったといいます。
 
 金谷ホテルのレストランでは、「百年ライスカレー」や、明治・昭和・平成のプリンを再現した「時のプリン」など、「スペーシアX」の特別メニューも作成。東武鉄道は、2016年に金谷ホテルを子会社化していますが、新型特急と合わせて沿線老舗ホテルも生まれ変わる形となります。「スペーシアX」と金谷ホテルには、伝統的な要素を現代的に進化させているという共通点があります。さらに、「スペーシアX」の1号車「コックピットラウンジ」の内装は金谷ホテルをモチーフとしており、切っても切れない縁があるのです。
 
 このほか、日光市内にあるミニチュアテーマパーク「東武ワールドスクウェア」でも、実物の製作資料を基に精巧に造られた「スペーシアX」の模型(25分の1スケール)の走行展示を7月15日から予定しています。
 
 新型特急の投入に留まらず、駅もリニューアルし、沿線施設と連携して地域活性化を目指す東武鉄道。7月15日は東武鉄道と沿線で新たな挑戦が始まる日となります。