ロシア空母だけじゃない 長期ドック入り「虚弱すぎ空母」3選 部品とられて復活に暗雲も
ロシア海軍の空母「アドミラル・クズネツォフ」が2024年以降任務に復帰するという報道がありました。同艦は6年近くドック入りし続けていますが、こうしたケース、実は他の国でもあります。
トラブル続きで残念な空母たち
2023年7月4日、2017年から長期間に渡りドック入りしていた、ロシア海軍の空母「アドミラル・クズネツォフ」が2024年以降任務に復帰する可能性があると報じられました。このように、修理続きでなかなか任務につけない空母は、同艦以外にもあり、報道され問題となったケースもいくつかあります。
空母「アドミラル・クズネツォフ」(画像:ロシア国防省)。
世界最悪の空母との呼び声も「アドミラル・クズネツォフ」
まず、最近報道された、「アドミラル・クズネツォフ」についてですが、同艦は就役以来ずっと、故障や事故に見舞われており、元々、「世界最悪の空母」という不名誉な評価を一部では受けています。
2017年にはそうしたトラブルを含めた運用上の様々な問題を解決するためにムルマンスクの造船所にドック入りしましたが、修理中に火災事故を起こすなどトラブルが頻発。以降外洋に姿を見せることはなく、6年近くドック入りしていると見られています。
ロシア国営メディアであるタス通信によると、2024年に復帰予定とされていますが、元々何度も延期しているため、これも定かではありません。
実は同艦はソ連時代に現在のウクライナで建造されました。しかし、2014年のロシアによるクリミヤ侵攻で両国の関係は完全に断絶。その影響で同艦の推進に関わる技術がロシアでは失われているのではという指摘もあるようで、もしかすると、このまま復帰しないままというケースもあり得るかもしれません。技術を聞くべき相手であるウクライナとは、2022年2月以降戦闘状態にあります。
偉大な姉に頼りきり! 不調続きの「プリンス・オブ・ウェールズ」
イギリス海軍が現在保有する最新鋭空母であるクイーン・エリザベス級航空母艦の2番艦、「プリンス・オブ・ウェールズ」は2019年12月に就役しましたが、艦内のパイプの破損、機関室近くの浸水などが発生し、2023年7月現在、合計すると950日以上をドックで過ごしています。
イギリスの最新鋭空母「プリンス・オブ・ウェールズ」(画像:イギリス海軍)。
なお、姉妹艦である「クイーン・エリザベス」はこうした大きなトラブルが今のところなく、2021年9月には日本に寄港し、日米英の共同訓練も展開したこともあります。
2024年に「クイーン・エリザベス」がドック入りすることが計画されているため、イギリス海軍は、2023年8月頃には「プリンス・オブ・ウェールズ」を復帰させようとしています。
しかし、同艦からは「クイーン・エリザベス」のスペア用に燃料フィルターや、航空機用のエレベーター部品の一部が取り外されていることが、2023年4月24日に報じられており、予定通り復帰できるかはイギリス国内でも疑問視されています。
ちなみに、先代の戦艦「プリンス・オブ・ウェールズ」も、建造中に第2次世界大戦が始まりドイツ軍の空襲を受け損傷したほか、曳航中に砂洲に座礁するなど不幸に見舞われました。最終的には、1941年12月10日のマレー沖海戦で旧日本海軍の陸上攻撃機による雷撃・爆撃により戦没するなど、かなり不遇な艦でした。
鳴り物入りで就役するも問題ばかり提供した「サンパウロ」
2001年にフランス海軍の空母「フォッシュ」をブラジル海軍が買い取り「サンパウロ」と名前を変えて再就役した同艦は、最初の数年こそ艦載機AF-1の発着艦訓練などを問題なく行っていましたが、2005年に火災事故を起こすとその後の状態は散々なものになります。
ちゃんと動いていた頃の「サンパウロ」(画像:ブラジル海軍)。
「フォッシュ」時代から換算すると艦歴が既に40年以上経過していた同艦は、2005年から4年間ドック入りを強いられます。以降、エンジン、推進シャフト、カタパルトなどで問題が頻発。2010年まで断続的にオーバーホールを繰り返すこととなります。
さらに、2012年2月に再び大規模な火災が発生。以降同艦はほとんど任務につくことがなくなり、ブラジル海軍は同艦を2039年まで使う予定だった近代改修を打ち切り、2017年2月に退役させます。
フランスは同艦を1200万ドル(約16億円)という格安の値段で売却しましたが、フランスメディアの一部報道によると、今後満足に動かすには、約8000万ドル(約110億円)の修理が必要だったという話もあるようで、ブラジルに渡った時点から決して良好な状態の艦ではなかったことがうかがえます。
なお、退役後も同艦は不遇で、艦内に含まれていたアスベストの問題で、境保護団体や野党から抗議され、解体を請け負うはずだったトルコが受け入れを拒否。ブラジル本国へ引き返しますが、母国側も入港を拒否。3か月ほどブラジル沖を漂流し、結局、環境保護団体の猛抗議の中、同艦は2023年2月3日に自沈することになりました。