散歩中に歩くのを嫌がる「拒否犬」が話題! なぜ嫌がるの? 獣医師に聞いてみた
SNSを中心に「かわいい!」と話題の「散歩を拒否する犬」。散歩に出発する前に嫌がったり、散歩の途中なのに帰るのを嫌がって座り込んだり…飼い主がいくらリードを引いても頑なに動こうとしない、そんな犬たちの愛くるしい表情やしぐさが日々、SNSに多く上がっています。
しかし、なぜ犬は散歩を“拒否”することがあるのでしょうか。獣医師の増田国充さんに聞きました。
「心理的」「身体的」な理由が関係
Q.そもそも、飼い犬にとって「散歩」はどのような意味を持つものなのですか。
増田さん「犬にとって、散歩をすることはさまざまな意義があります。イメージしやすいのが、適度な運動を行うことによって、運動不足の解消や肥満の予防に役立つ点です。そして、生活や運動に必要な筋力維持につながります。
屋外での散歩で適度な紫外線を浴びることになりますが、紫外線は必ずしも悪者というわけではありません。体内にカルシウムを吸収するために、紫外線が必要になるためです。また、屋外で活動することは体内のホルモンバランスにもよい影響を与えます。
心理的な面では、ストレスの発散や、おうちの人とのコミュニケーションを取る機会としても重要です。このように、基本的にお散歩はメリットが多いものですが、病気やけががある場合、あるいは体格や犬種に適した散歩量でない場合は、かえって犬の負担が増えてしまうことがあります」
Q.犬が「散歩を拒否する」「散歩を嫌がる」ことがあるのはなぜですか。
増田さん「心理的な理由と、身体的な理由があるのではないかと考えられます。心理的な理由としては、屋外の環境に慣れていないため、恐怖心がある場合が多いです。また、特定の場所(動物病院や、苦手なワンちゃんと遭遇するエリアなど)になると足取りが重たくなることも、理由として起こり得ます。
一方、身体的な理由には、どこかに痛みがあって動きたくない場合や、心臓病、筋力低下などによって疲れやすくなっている場合があります。猛暑や台風といったお散歩をする環境に適さない場合は、犬の気分が乗らないことだけでなく危険を及ぼす可能性があるので、適宜判断が必要です」
Q.特に散歩を嫌がりやすいといえる犬の特徴はあるのでしょうか。
増田さん「性格が臆病なワンちゃんは、屋外で発生する工事の音や車のクラクションなどにびっくりして、それがお散歩を怖がるきっかけになることがあります。犬もさまざまな経験を積んで成長しますが、他の犬と接触したことがなかったり、外の雰囲気をまだ把握していなかったりする若齢のワンちゃんは、最初は慎重にお外での様子を確認しながら、徐々に慣らしていきましょう。
また、犬と人との関係がしっかり構築されていることが望まれます。『犬をしっかりコントロールできていないのでは?』と思われる飼い主の方も見かけます。それぞれの安全を確保するためにも、『おすわり』や『待て』ができるなど、おうちの人の主導権を確立することが大切です。例えば、柴犬は学習能力が高く、上下関係にも忠実という特徴があります。日頃の生活で、人と犬とのいい関係を構築していくとよいですね」
Q.犬が散歩を嫌がった場合、飼い主はどうするのがよいですか。
増田さん「お散歩前から行くのをためらっている場合や、お散歩を途中で拒否する様子が見られた場合、いずれにおいても『なぜ嫌がっているのか』を理解していきたいところです。歩き方や呼吸の様子がいつもと異なる場合は、病気やけがが原因となっていることがあります。その際は適切な治療を迅速に行いましょう。
お散歩のルートに、相性が合わない他のワンちゃんがいる場合は、コースや時間帯を見直してみると改善することがあります。音に敏感な子や、他の動物が苦手なワンちゃんは、人通りの少ない静かな公園などがよいかもしれません。
お散歩は、愛犬の健康状態を把握するきっかけになります。日頃からお散歩を通じてコミュニケーションを取り、ストレス発散と健康維持に役立ててください」