氷が溶けなさすぎる!?ドイツの真空断熱技術を投入した軽量クーラーボックス「QOOL」
【アウトドア銘品図鑑】
夏のキャンプや車中泊旅で頭を悩ませるのが食品の管理です。連日30℃を超える夏ですから、標高1000mであっても気温はグングン上昇。標高1000mであっても気温は25℃以上となり細菌はぐんぐん増殖しちゃいます。
それにタープで直射日光を防いだとて、すぐにノドはカラカラ。
食品を守るには、クーラーボックスの開閉を控える…わかっているけれど、蒸し暑さに負けてクーラーボックスに収めたビールに手が伸びるんですね。
もちろん、氷を買い足すだけで解決するんですが、キャンプ場のロケーションによっては簡単に入手できないなんてこともあるわけです。
この春登場したQOOL「QOOLボックス」は軽さと保冷力、耐久性にすぐれたドイツ生まれのクーラーボックス。ヨーロッパ最大のアウトドア見本市「ISPO」で金賞を受賞するなど世界が注目するプロダクトです。その実力とは!
■容量40Lクラスで重量8kg以下!耐衝撃性も十分
「QOOLボックス」は、バキュテック社という真空断熱技術のパイオニア企業が製造したクーラーボックスで、6面すべてに真空断熱パネルを備えています。ワクチンをはじめとする医薬品の輸送なんかでも活用されている技術を用いており、細部まで計算されています。
▲「QOOLボックスLブラック エコプラス」(7万1500円)。外寸52.5×52.5×H41cm、内寸38×38×H30cm。重量7.6kg。容量43L
保冷力自慢のクーラーボックスは分厚い断熱材を使ったでっかいモノか、真空断熱パネルを備えた省スペースだけど高額なモノかの2択です。
容量40Lクラスの場合、前者は重量が優に10kgを超え、外寸は幅も奥行きも「QOOLボックスLブラック エコプラス」より10cm以上大きくなります。
後者の場合、真空断熱パネルを部分的に使ったモデルは比較的リーズナブルですが、6面真空断熱パネルを搭載している場合は概ね10万円前後で重量は約10kg。
▲青い部分に真空断熱パネルが内蔵されている
スペックと価格をライバルたちと見比べると、6面真空断熱パネルを採用した「QOOLボックスLブラック エコプラス」はいいとこ取りしたモデルだとわかります。
じつはこの“いいとこ取り”を実現した立役者なのが外装。
「QOOLボックスLブラック エコプラス」の真空断熱パネルは青い樹脂で包まれていますが、その外側は発泡ポリプロピレン。発泡スチロールに似ていますが、割れ・欠け・つぶれに強い性質をもっています。
ライバルのハードクーラーとは違い、フワッとしていてなんだか頼りなく感じますが、樹脂や金属みたいに重くない! しかも、この外装が衝撃を吸収する大切な役割をになっています。
そもそも真空断熱パネルは、真空だからこその保冷力を発揮します。パネルが破損し、真空じゃなくなると意味がないわけで、破損リスクを減らすためにも柔らかな素材で衝撃を極力抑える必要があるんです。
外装に発泡ポリプロピレンをまとった「QOOLボックスLブラック エコプラス」は、衝撃を吸収することを第一に考えた合理的な構造というわけ。その結果、軽くなっていいこと尽くめ。
もっともプレミアムな価格なのにルックスがトロ箱風ではちょっと寂しいのも事実です。
「QOOLボックスLブラック エコプラス」は発泡ポリプロピレンの上にファブリック調のシートを貼り付けています。ステッカーチューンはできませんが、エレガントな雰囲気。
ちなみにブラック(エコ素材を採用)のほかに「QOOLボックスLブルー」(6万9300円)も用意されていて、こちらはデニムっぽい色合いです。
■直線的なルックスがカッコいい
「QOOLボックスLブラック エコプラス」はハンドルの出っ張りがなく、ライバルに比べて直線的な面で構成されている印象。これがクルマやクローゼットへの収納に役立ちます。
▲フタの上に載せているのは別売りの「カッティングボード L」(1万5950円)
直線的なシルエット。コンテナボックスと並べても変な形の隙間ができづらく、スッキリ収納できるのが気持ちいいんです。
▲自動でフラットに収納されるハンドル
両側に取り付けられたハンドルは、使うときに引っ張り出すシステム。余計な出っ張りがないのでクルマのラゲッジにピタッと収まるし、手を離すとスッと元通りに収納されるのも気が利いています。
▲角にくぼみがあるのでそこに手を掛けて持ち上げる
フタにはラッチのようなものはありませんが、ピタッと閉まっています。ただ、まっすぐ持ち上げて開くにはちょっぴりコツがいるかも。
また、フタは蝶番でつながっているわけではないので、雨上がりなどドロドロの地面では外したフタの置き場所をあらかじめ確保しておく必要があります。
■保冷力は最大10日間、専用保冷材なら再冷凍も
別売りの保冷材「エレメント」は3種類。庫内を-10〜-20℃にキープする「エレメント フローズン」、-2〜2℃の「エレメント クール」、2〜8℃に保つ「エレメント フレッシュ」です。
▲最強の保冷材「エレメント フローズン」(6枚3万4100円)
「エレメント フローズン」を家庭用冷蔵庫で凍らせること丸2日。ホントは72時間かけて冷凍するのですが、スケジュールの兼ね合いで短縮せざるを得ませんでした。結果、4面は凍ったけれど2面はチャプチャプ音をたてていて7〜8割の凍り具合。
完璧とはいえませんが、「エレメント フローズン」をいれた「QOOLボックスLブラック エコプラス」とともに、気温32℃の川原へ出発。
▲真空断熱パネルに沿わせるように「エレメント フローズン」をセット。最後に底面と同じサイズの保冷材を載せてからフタをする
さすが専用保冷材。壁面の保冷材が倒れることはありません。食材を取り出すのに保冷材が邪魔になるという、あのストレスから解放されます。それに中身を確認しやすく、その分、素早く出し入れできます。
ただし、「エレメント フローズン」は厚みが2cmほどあるので2Lのペットボトルを立てて収納できなくなります。これはちょっと残念。
▲1.5時間後、500mlの水が凍り始めていた
「QOOLボックスLブラック エコプラス」と、普通の板氷をいれた一般的なハードクーラー(容量26L)を炎天下に置いて、30分おきにフタを開けて中を確認しつつ5時間。
▲左が「QOOLボックスLブラック エコプラス」にいれた冷凍炒飯。ネギには霜が付いたまま。右は一般的なハードクーラーにいれた冷凍炒飯で冷たいけれど凍ってはいない
わずか5時間でも「QOOLボックスLブラック エコプラス」のほうはペットボトルの水がずいぶん凍り、冷凍炒飯もパラパラのまま。
保冷力に偽りなし! 1〜3泊のキャンプなら氷を追加する必要はないし、環境次第ですが1泊ならアイスクリームの保管も余裕です。
輸入元であるアンプラージュインターナショナルの直営店「UPI鎌倉店」では「エレメント」を使わず氷を詰めて保冷実験をしていますが、「QOOLボックスL」の場合10日たっても氷は半分ほど残っていて、完全に溶けきったのは22日目だったそう。
また、アンバサダーを務める長野修平さんは保冷材を使わず凍らせた鹿肉を詰めてワークショップに出向いたところ、解凍されずに焦ったとも。いつも使っていたクーラーボックスではいい具合に解凍されていたのに、驚異の保冷力が徒となったわけです。
「エレメント」を6枚いれると重量は18.4kgに跳ね上がることですし、通常は板氷で運用するのが正解。冷凍食品やアイスクリームの保管には「エレメント フローズン」を使いますが、1泊なら4枚に減らしてもいいのかもしれません。
軽さと保冷力、省スペースを兼ね備えた「QOOLボックスLブラック エコプラス」。冷えすぎ注意ではありますが、夏のアウトドアライフと車中泊旅を助けてくれる逸品です。
>> [連載]アウトドア銘品図鑑
<取材・文/大森弘恵>
大森弘恵|フリーランスのライター、編集者。記事のテーマはアウトドア、旅行、ときどき料理。Twitter
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