子どもの「おねしょ」、どうすれば治る? 病気の可能性は? 原因&治療法を泌尿器科医が解説
小さい子どもが就寝中に無意識のうちに尿を漏らし、布団をぬらしてしまうことがあります。こうした行為は“おねしょ”と呼ばれていますが、一般的に5歳になるまでに治るといわれています。ただ、中には、小学生以降もおねしょが続く子どもがいるようです。
そもそも、なぜ子どもはおねしょをするのでしょうか。小学生以降もおねしょが続く場合、病気の可能性はあるのでしょうか。治療法などについて、なかざわ腎泌尿器科クリニック(石川県野々市)の院長・中澤佑介さんに聞きました。
小学生になっても夜尿が続く場合は受診を
Q.そもそも、子どもは何歳ごろまでおねしょをするのでしょうか。
中澤さん「おねしょは、『夜尿』という就寝中に無意識に尿が漏れる病態を指します。夜尿が5歳以降も一定の頻度で出る場合を『夜尿症』といいます。
夜尿症の有病率は、調査対象によって異なりますが、日常診療でよく診察する『単一症候性夜尿症』に限定すると、5歳:15%、6歳:13%、7歳:10%、8歳:7%、10歳:5%、12−14歳:2〜3%、15歳以上:1〜2%とされています(※1)。低年齢児の有病率の男女比は2:1で、男児の方が多いとされていますが、10歳以降、差はなくなります(※1)」
Q.夜尿症の原因について、教えてください。
中澤さん「夜尿症の原因としては、主に下記の3点です」
(1)睡眠から目が覚めない(睡眠から覚醒する能力の欠如)
(2)就寝中に尿意が我慢できない(夜間のぼうこうの畜尿能力が低下)
(3)就寝中の尿量が多い(夜間多尿)
また、夜尿症は、尿量が著しく増加する「尿崩症」や、脊髄が背骨で覆われていない状態である「二分脊椎」など、別の疾患が原因となっているケースもあります。
Q.夜尿症の治療法について、教えてください。自然に治ることもあるのでしょうか。
中澤さん「夜尿症は、一般的に成長とともに自然治癒が期待できる疾患とされていますが、夜尿症以外の疾患や排便習慣に伴う便秘によって起きる場合もあります。夜尿の原因が何なのかを早めに突き止め、必要があれば治療を行うことが大切です。夜尿症の治療には、生活指導・行動療法の『ウロセラピー』のほか、アラーム療法や薬物療法(デスモプレシン・抗コリン薬・三環系抗うつ薬)があります」
Q.子どもが小学生になっても夜尿症が治らない場合、どうすればよいのでしょうか。受診の目安も含めて、教えてください。
中澤さん「学齢期のお子さんの場合、おねしょをしてしまうことで自信をなくしたり、友達にからかわれたりすることで、心理的、社会的に悪影響を受けるケースがよくあります。当院では、小学校入学後に連日夜尿が認められる場合のほか、日中に尿失禁が生じたり、便失禁を伴う尿失禁が生じたりする場合は、重症度が高い可能性があるため、受診を勧めています。
夜尿症は、先述のように、年齢を重ねるごとに自然治癒が期待できる疾患とされています。自然治癒率は1年で10〜15%、3年で20%程度です(※2)。
夜尿症に対して経過観察した場合と何らかの治療介入を行った場合を比較すると、治療介入により治癒期間が短縮されるほか、1年後の治癒率は経過観察をした場合よりも2〜3倍高まるとされています。経過観察した場合の1年後の治癒率は10〜15%、治療介入した場合の治癒率は約50%です(※2)。
また、小学校低学年で治療介入をした方が夜尿症を早く治癒させる可能性があるとされています(※2)。困っている場合は、泌尿器科などに相談していただきたいと思います」
【参考文献】
(※1)日本夜尿症学会編集 夜尿症診療ガイドライン2021 診断と治療社.2021
(※2)赤司俊二 夜尿症研究 14、29−33.2009