医師考案、自律神経を整え、心臓をいたわる「祈りの呼吸法」を紹介します(写真:プラナ/PIXTA)

生活習慣病、血管、心臓など内科・循環器系のエキスパート「血管の名医」として知られ、日々多くの患者と接する医学博士の池谷敏郎氏。

テレビ番組『あさイチ』(NHK)、『世界一受けたい授業』(日本テレビ)やラジオ番組などに多数出演し、楽しくわかりやすい解説が好評を博している。

過去15キロ以上の減量に成功し、その減量メソッドを全公開した15万部のベストセラー『50歳を過ぎても体脂肪率10%の名医が教える 内臓脂肪を落とす最強メソッド』に続き、『60歳を過ぎても血管年齢30歳の名医が教える 「100年心臓」のつくり方』を上梓した。

「人生100年時代」を元気に満喫できるかどうか健康長寿のカギを握る「『心臓の健康』にいい生活」を、運動、食事、メンタルなどなどあらゆる観点から解説し、「100年もつ心臓」をつくるための秘訣を全公開した1冊だ。同書は発売わずか6日で3刷2万部を突破するなど、大きな話題を呼んでいる。

その池谷氏が「緊張・イライラに効く!『祈りの呼吸法』」について解説する。 

血管を内側からマッサージするような「呼吸法」

お腹も凹む『6・3・3呼吸法』で自律神経を整える」では、自律神経の乱れがいかに「心臓の健康」を損なうかという話とともに、自律神経を整えて「心臓の負担」を軽くするための「6・3・3呼吸法」について紹介しました。


私たちは「自律神経」を意志の力で動かすことはできませんが、「呼吸法」によって「自律神経のバランス」を整えることができます。

意識して深く、ゆっくりした呼吸を心がけることで、「過度に興奮した交感神経」を鎮めて、リラックスした状態にもっていくことができるのです。

また「呼吸法」を行うと、全身の血管が広がって血流がよくなり、血管を内側からマッサージするような効果があり、これも「心臓の健康」を助けます。

今回紹介する「祈りの呼吸法」は、お祈りをするようなポーズをとることから、この名称をつけた呼吸法です。

「祈りの呼吸法」の特徴は、両手を合わせてギュッと力を入れ、吐きながら緩めることで、いっきに脱力することです。

「わざと筋肉にギュッと力を入れて、脱力する」を繰り返すことで、力が抜けて、リラックス状態にもっていくことができるのです。

治療やリハビリにも応用されている

これは専門用語で「漸進的筋弛緩法(PMR)」と呼ばれ、リラクセーション法の1つとして、精神科などの治療やリハビリでも使われています

いっきに脱力することで、神経の緊張、心の緊張がほぐれて、気分もスッキリします。

ポイントとしては「力を入れているときも、呼吸を止めないこと」です。

回数は好きなだけ行っていただいて結構ですが、何度か繰り返すことが重要なので、3回は行うようにしてください。

脱力したとき手がジンジンと温かくなれば、「血流がアップして、心臓の負担を軽減している」という証拠です。

この呼吸法は、いつ行ってもいいのですが、とくに「緊張するとき」「イライラしたとき」などに効果的です。


「わざと筋肉にギュッと力を入れて、脱力する」を繰り返すことで、力が抜けて、リラックス状態にもっていくことができる(イラスト『「100年心臓」のつくり方』より)

たとえば、大事なプレゼンテーションや大きな商談の前などは、誰でも緊張すると思います。

しかし、過度に緊張してしまうと、準備していたことが頭から飛んでしまうなど、十分なパフォーマンスを発揮できない可能性もあります。

そんなときは、ちょっと事前に時間をとってこの呼吸法を行ってみてください。緊張が緩和して、ほどよくリラックスできます。

また、この呼吸法は、疲れたときに行っても、スッキリします。仕事などで、同じ姿勢が続きやすいときに行うのもいいでしょう。

さらには、呼吸法には安眠作用もあります。「なかなか寝付けない」「寝付いてもすぐに目が覚めてしまう」という人は、寝る前にこの「祈りの呼吸法」を行ってみてください

では、「祈りの呼吸法」の具体的なやり方を紹介しましょう。

「緊張する」「疲れた」「寝付けない」などに効果的

<「祈りの呼吸法」の手順>

【手順1】お祈りするように胸の前で両手を軽く合わせ、大きく息を吸い込む。


「祈りの呼吸法」は、まず、お祈りするように胸の前で両手を軽く合わせ、大きく息を吸い込む(イラスト『「100年心臓」のつくり方』より)

【手順2】続いて両手のひらを強く合わせながら、口をすぼめてゆっくりと息を吐く(8秒間)。このとき両腕と両手に力を加え、腹筋も意識して緊張させ、いっきに緩める。


胸の前で両手を軽く合わせ、大きく息を吸い込んだら、両手のひらを強く合わせながら、口をすぼめて8秒かけてゆっくりと息を吐く。両腕と両手に力を加え、腹筋も意識して緊張させ、いっきに緩める(イラスト『「100年心臓」のつくり方』より)

【手順3】手順1〜2を、3回以上繰り返す。

「心臓への負担」を減らし「100年心臓」を手に入れる

布団に入った状態であれば、「お腹も凹む『6・3・3呼吸法』で自律神経を整える」で紹介した「6・3・3呼吸法」でもよいでしょう。

患者さんなどにこの呼吸法をお教えすると、「呼吸法を行っているうちに寝落ちしてしまう」という声をよく聞きます

普段の生活の中で、ちょっと意識を変えるだけで「心臓への負担」は大きく減らすことができます。

みなさんも、「自律神経を整える呼吸法」を身につけて、人生100年時代を満喫するための「100年心臓」を、ぜひ目指してくださいね。

(池谷 敏郎 : 医学博士/池谷医院院長)