サウナ浴習慣がどのように美容効果を助長してくれるのかを紹介します(写真:Ushico/PIXTA)

美容セルフケアの一環で岩盤浴に通う女性は今も少なくないが、ではサウナ浴にも美容効果は期待できるのだろうか。

始めに結論を言ってしまえば、発汗と美肌の関係については、体系的な科学的検証はまだ十分ではないものの、サウナ浴を習慣化することで美肌効果は大いに期待できると言えそうだ。

『「最新医学エビデンス」と「最高の入浴法」がいっきにわかる!究極の「サウナフルネス」世界最高の教科書』の著者カリタ・ハルユ氏(サウナ・フロム・フィンランド協会会長)も、「サウナは天然のビューティーサロン」と表現し、本書内でそのさまざまな効能や活用法を説いている。

それでは具体的に、サウナ浴習慣がどのように美容効果を助長してくれるのだろうか。

「サウナの発汗効果」で肌も若返る!?

「定期的なサウナ浴には美肌効果がありそうだ……」という推察は、論拠に欠けるかもしれないが、何より筆者の周りにいる数多くのサウナ愛好家たちの、年齢を感じさせない肌ツヤを見ていても、もはや疑いの余地はないなと実感している。


筆者自身も、冬は数値が低すぎて湿度計が機能しなくなるほど空気の乾燥したフィンランドへの移住当初は、乾燥肌や肌荒れに悩まされていた

だが、フィンランド人にならってサウナ浴を日課とするようになって以降、もちろんそのほかの要因も考えられるが、いまではもはやローションや保湿クリームなしでも肌の潤いが保てるほどに肌質改善が進んだのも事実である。

またフィンランドでは、「サウナ浴後1時間の女性が一番美しい」なんて言い回しもある。

サウナに入ると、とりわけ皮膚直下の血流が良くなり、ツヤが増して頬もバラ色に染まるので、化粧で作り込まなくとも素肌の健康的な美しさが際立つのだ。

より科学的な視点では、たとえばフィンランド最大手の化粧品メーカー・ルメネ社の研究チームが、以前から「サウナ浴と美肌効果の関連性」を探っている。

サウナ浴を行なうと、一時的に体内から多くの水分が蒸発するので、水分量が戻るまでは肌も突っ張る感じがする。このため、一般的には、入浴直後はクリームなどでの保湿ケアが推奨される。

ただし彼らによれば、肌のいちばん表面にある角層の水分量に関しては、サウナ浴直後から数時間たっても、通常よりさらにしっとりしているという測定結果が出るという。

サウナの発汗作用によって汗腺や皮脂腺が開くと、肌の浄化や代謝が活発になる。

さらに、汗に含まれる乳酸やナトリウムなどの保湿成分を含んだ水分結合物質が、皮膚膜に多くとどまってバリアを強化し、これが徐々に肌の保湿力を高めると考えられるそうだ。

そしてこの発汗機能は、サウナ室の環境の違いはあれど、入室して発汗し始めてから、約10分で最大限まで活発になる、と同研究チームは言及している。

とりわけ、低温高湿の環境で蒸気を浴び続けるフィンランド式サウナは、どれだけいても肌がヒリつかず呼吸もラクなので、10分留まることも難しくない。我慢せずに心地よく発汗するのに向いていると言えるだろう。

さまざまな「スキンケア用品」も併用する

サウナが発汗や血行を促す間、さまざまなスキンケア用品を併用するフィンランド人も少なくない。現代的なアイテムなら、フェイスパックをしながらロウリュ(サウナの蒸気)を浴びれば効果も高まるとハルユ氏も推奨する。

だが、今日でもサウナ中のスキンケア用品として一般的なのは、古来の伝統と知恵に基づく、自然素材を活用したアイテムの数々だ。

たとえば、はちみつ。無添加なら食用でもそのまま使えるし、ショップに行けば、「サウナはちみつ」と名の付いた、入浴中に肌に塗る前提のはちみつボトルも売っている。


本場フィンランドで売られている「はちみつと塩を混ぜた天然スクラブ」(写真提供:こばやし あやなさん)

軽くシャワーを浴びてから、はちみつを肌全体によく塗り込み、サウナ室へ。すると、サウナの熱と蒸気でみるみる溶けて肌に浸透し、驚くほど肌がツルツル・すべすべになるのだ。

はちみつに天然塩を混ぜ込んでおくと、スクラブ効果も得られて、より柔らかい肌に生まれ変わる。


「泥炭(ピート)」も、森と湖の国フィンランドで最高峰の美容・健康アイテムとして古来重宝されている(写真提供:こばやし あやなさん)

また、枯死し炭化した湿地植物が湖沼に堆積してできた「泥炭(ピート)」も、森と湖の国フィンランドで最高峰の美容・健康アイテムとして古来重宝されてきた。

皮膚の抗菌・浄化作用が強いので、泥パックのように顔や全身に塗ってから、乾燥しないようサウナでしっかり蒸気を浴びて、洗い落とす

フィンランドの公衆サウナでは、これらの天然アイテムを使った女性向きスキンケアイベントを定期開催したり、サウナ美容アドバイザーの出張サービスをオーダーできたりもする。

「せっかくの発汗効果」を半減させないコツは?

どのスキンケアを試すのであれ、大事なのは、サウナ浴前・途中・後に、発汗を見越した水分補給を十分に行なうことと、入浴前にメイクを落としておくことだ。

実はフィンランド人は、日本人のように「入浴前」に念入りに洗体をする人はおらず、始めは軽くシャワーを浴びる程度。どうせサウナ浴の間にたくさんの汗をかくので、洗うなら入浴後に……という考え方だ。

だが、少なくともメイクや日焼け止めなどは十分に落としておかないと、せっかくサウナに入っても皮膚が呼吸できず、発汗効果が半減してしまう。

そして、スキンケア用品は、入浴始めからは使わないこと。最初は素肌のままサウナに入ってしっかり汗を出すことに専念し、いったんシャワーで肌を浄化してから使用に移ろう。

最後に、以前の記事「サウナで痩せる」は本当か?意外な"納得の結論"でも強調したように、ダイエットにせよ美容にせよ「内面の健康や美しさ」が見た目にもあらわれることを忘れてはいけない。

サウナ浴中は、どんどん美しく健やかになっていく自分をイメージしながら、とにかくリラックスして心地よい蒸気や外気を楽しむことに専念しよう。

(こばやし あやな : サウナ文化研究家、フィンランド在住コーディネーター、翻訳家)