噴火通知アプリ「へがふっど!」(App Storeより)

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「桜島んへがどん方向に降っかを通知すっど」――鹿児島県の活火山「桜島」の噴火状況を通知するアプリ「へがふっど!」がツイッターで大きな注目を集めている。アプリ内の説明文の一部に鹿児島弁が用いられており、県外の人から「さっぱりわからん!」などと話題になった。

J-CASTニュースは2023年5月12日、開発者の渡部良隆さん(35)に対し、アプリを開発した経緯などを取材した。

「桜島ん噴火や爆発によってどん方向にへが降っかを通知すっアプリじゃっど」

注目を集めたきっかけは10日、ツイッターで、同アプリをダウンロードしたものの「何を書いてるのかよくわからない」と紹介する投稿があったことだ。添付した画像はアプリ配信サービス上の説明文で、噴火通知アプリ「へがふっど!」について鹿児島弁で次のように紹介されていた。

「ゆくさおじゃったもんせ!かごんまん皆さぁ、桜島ん噴火や爆発でへが降っせ、わっぜのさんなぁ。こんアプリは、桜島ん噴火や爆発によってどん方向にへが降っかを通知すっアプリじゃっど」

アプリは桜島の噴火情報を伝えるもので、天気情報などと併せて火山灰がどの方向に降るのかを通知する。アプリ内の一部文言は鹿児島弁が用いられている。アプリ配信サービスのアップデート履歴にも方言が用いられており、細かな不具合の修正については「ちんけまっげを直しちょっど」と記されている。

アプリを紹介したツイートは1万4000件を超えるリツイート、3万200件を超える「いいね」が寄せられるなど、大きな反響があった。ツイッターでは「これ読める人いるのか...」「真剣に解読していましたが、どうしても笑みが溢れる」などと困惑したり面白がったりする声が広がっている。一方で、地元民と思われるユーザーからは「ネイティブで分かります」「九州の民であればギリ理解できる」などの声も寄せられている。

開発者の郷土愛がにじむアプリ

アプリを開発した渡部さんは、Webやアプリのデザイン、開発、サーバーの構築などIT関連全般の仕事をしているという。鹿児島で育ったことから、地元への恩返しのようなことをしたいという思いで「へがふっど!」を開発した。

「世界的にも火山の近くに人が住んでるというのはかなり珍しいので、もっともっと多くの人に知ってもらえたらいいなという感じです」

鹿児島では、ニュースの天気予報と同様に桜島上空の風向きについて触れるという。火山灰によって、洗濯物が汚れたり、目が痛くなったりしてしまうことがある。

「日常に近いところに火山があるんですが、噴火は県民にとっては死活問題に近いです。先に話したニュースやWebでも風向きは教えてくれているんですが、アプリだと噴火したよっていう通知も送信できますし、天気予報や風向きなども閲覧できるので、そうした情報をアプリで配信できたらすごく便利だろうなと思って作成しました」

アプリ名は鹿児島弁「へがふる(灰が降る)」に由来する。開発を意識した時から、語呂の良さや分かりやすさから「へがふっど!」と名付けようと考えていたという。名前以外は普通のアプリにするつもりだったが、リリース前に説明文も鹿児島弁で書くことにした。

「普通の説明よりもわかりにくいけど、分かる人にはわかるからいいかって感じです。いろんなアプリがあるかと思うのですが、UIもそうなんですけど、他のアプリとの差別化をはかろうとしたときに、ユーザー体験も大事だな。そうなるとターゲットにしているユーザーが一番親しんでいる言葉のほうがいいな。であれば方言だなと言った感じで方言を採用しました。英語、日本語だけでなく、こうした方言に特化しているとある意味本当のローカライズで面白いのではないかなと思って作りました」

文面はすべて渡部さん自身が作成しており、「鹿児島の人からしたらまだ初級のほうの方言」だという。

「実際に日常ではあまり使ってない言葉もありますが、ニュアンスといいますか、こういった説明をしたいならこういう方言になるなといった感じです。そうした微妙なニュアンスの部分がより難しくしてしまっているのかもしれないです。鹿児島のシステム会社の人が私の知らないところで解説動画を作成してくれているみたいなのですが、その中でも『わざとらしくない鹿児島弁』と言われていたので良かったです」

今の心境は「わっぜ、話題になっちょっせ、ひったまがったが」

アプリのこだわりの1つはアイコンだ。ひらがなの「へ」に煙を描くことで桜島を表現している。

「最初は桜島中心の地図っぽいアイコンなども考えていたのですが、『へ』って山っぽいな。山っぽいなら煙を描けば桜島になるな。といった感じです」

このほか風向きや天気を分かりやすく表示したり、アプリの通知時間帯を設定できるようにしたり、工夫を重ねている。

「噴火や爆発についてはおそらく地元の人でもそこまで詳しい情報は必要ないのかと思います。しかし、住んでいる方にはわかると思うのですが、空振や爆発音も離れていても聞こえたりするので、どれくらいの規模だったのかというのをいざ情報として見てみると新たな発見があるのではないかなと思います」

噴火頻度が高いため、夜や休日は通知を切ることも可能だ。現在寄せられているユーザーからの要望に対しては「できる範囲で実装していきたいと考えてます」と意気込む。またAndroid向けにもアプリを配信できるようにしたいという。

アプリが注目を集めたことについては、「わっぜ、話題になっちょっせ、ひったまがったが」とコメントする。鹿児島弁で「すごく話題になって、とても驚いております」という意味だ。

「インストールするしないに関わらず、『面白い!』と言う声が多くて、自分の作ったアプリで誰かに楽しいと思ってもらえるのはすごく嬉しいです。翻訳班が出ているのには、私も笑いました。鹿児島弁はかなり難しいので、聞くのも見るのも新鮮じゃないかなと思います。自分の作ったアプリで誰かが笑顔になったということ、皆さん各々で楽しんでいただいているので作ってよかったなと思いました」

渡部さんは鹿児島について「食べ物も美味しいですし、生の火山を見ることもできます。皆さんにも、ぜひ生の鹿児島弁を味わってほしいです」と魅力を述べた。