リーガの焦点は2位争いに移った…/原ゆみこのマドリッド
「やっぱり同じ水曜に試合があっても大違いね」そんな風に私が肩をすくめていたのは月曜日、先週末のリーガ戦の後、日月火とバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場でみっちりトレーニングに励むレアル・マドリーと違い、アトレティコは試合翌日を休養日に。火曜の夕方にちょっと練習しただけで、水曜にイスタンブールで開かれるベシクタシュとの親善試合日帰り遠征に臨むと知った時のことでした。いやあ、確かに前者が水曜午後9時(日本時間翌午前4時)から、サンティアゴ・ベルナベウで迎えるのはCL準々決勝チェルシー戦1stレグ。リーガ逆転優勝の夢が消えた今となっては、コパ・デル・レイ優勝だけではアンチェロッティ監督続投の条件を満たさない場合にも備えて、絶対、ミスできない試合になっているんですけどね。
逆に昨年中にヨーロッパの大会から完全撤退、今年はコパも1月でお隣さんに準々決勝で負けてヒマになったアトレティコにしてみれば、たまにはミッドウィークにも予定を入れないことには、リーガでプレー時間がまったくない選手たちにカビでも生えかねず。よって、2月に起きたトルコ・シリア大地震の復興基金援助を目的とする親善試合に招いてもらったのは大歓迎といったところでしょうが、これはもしや、先週末の試合結果で急に間近になったリーガ2位となる大チャンスを前にして、コンドグビアやビッツェル、ドハーティ、レギロンらも実戦の勘を取り戻すいいキッカケになる?
まあ、そんなことはともかく、前節のマドリッド勢の試合を順番に振り返っていくことにすると。土曜に先陣を切ったのは弟分のヘタフェで、サンティアゴ・ベルナベウへ行く前に私も近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)でレアル・アレナでのレアル・ソシエダ戦を後半序盤まで見ていたんですけどね。前半の大部分はどちらにもあまりチャンスがなく、プレーのテンポも遅かったため、オンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の実況など、「partido de sorteros contra casados/パルティードー・デ・ソルテーロス・コントラ・カサードス(独身者vs既婚者の試合、お遊びでやる紅白戦のこと)」みたいだと揶揄していたんですが、いきなり40分にヘタフェにピンチが訪れることに。
そう、ジェネがエリア内でオジャルサバルを倒してしまい、PK献上となったからですが、ここはGKダビド・ソリアが発奮。オジャルサバル当人が蹴ったPKを見事に弾いてくれたんですが、まさかロスタイム、せっかくブライス・メンデスの至近距離シュートをparadon(パラドン/スーパーセーブ)しながら、上がったボールをヘッドで決めるというリベンジをオジャルサバルに果たせてしまってはねえ。後半もソシエダは15分にミケル・メリーノのラストパスを久保建英選手がゴールに流し込み、2-0とリードされたところでお店を出たんですが、その日はエネス・ウナルもボルハ・マジョラル、ムニルもゴール運には恵まれなかったよう。
それ以降、スコアは動かず、「Hemos perdido contra un equipo que no es cuarto por casualidad/エモス・ペルディードー・コントラ・ウン・エキポ・ケ・ノー・エス・クアルト・ポル・カスアリダッド(ウチはたまたま4位にいる訳ではないチームに負けた)」(キケ・サンチェス・フローレス監督)という結果になってしまいましたが、15位に下がっても降格圏との差は勝ち点3のままでしたからね。怖いのは次節、ホームのコリセウム・アルフォンソ・ペレスで優勝カウントダウンが始まっているバルサと対戦することですが、ホント、今季の残留争いの方は最後まで目を離せなくなりそうですね。
そして夏時間となってから日が伸びて、夕焼けの綺麗な午後9時から、ベルナベウでのビジャレアル戦がキックオフとなったんですが、アンチェロッティ監督は水曜にコパ準決勝クラシコ2ndレグでバルサを0-4と叩きのめし、逆転決勝進出を勝ち取ったチームからスタメンを6人も変更。といってもベンゼマ、ビニシウス、ロドリゴの3弾頭は残し、そこにアセンシオも加わって、4人FW体制で6-0と大勝した前節バジャドリー戦の2匹目のドジョウを狙ったようですが、実際、前半16分にアセンシオのシュートがパウ・トーレスに当たってゴールを割り、先制点を奪った時にはまたしてもgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)が見られるとほくそ笑んだファンも多かったかと。
でも同じVで始まるチームでも、残留争い中のバジャドリーと6位でCL出場圏入りを狙っているビジャレアルは違うんですよ。その差が現れたのは37分、ロ・チェルソからスルーパスを受けたチュクワゼがエリアに入るとナチョを切り返し、同点ゴールを挙げてしまったから、ビックリしたの何のって。いえ、後半3分には今度はビニシウスがビジャレアルDFを2、3人抜いてシュートを決め、マドリーは再びリードすることができたんですけどね。失敗だったのは、もちろん水曜にビッグゲームを控え、年長の選手は温存したいというアンチェロッティ監督の気持ちもわかりますが、まだ1点差だったにも関わらず、14分にはベンゼマをバルベルデに代えてしまったことでしょうか。
だってえ、その後、セティエン監督は負傷でエースのジェラール・モレノがもう何度目になるかわからない離脱中、どんどん存在感を増しているComandante(コマンダンテ/司令官)、モラレスを投入。ピッチに入って3分後の25分、チュクワゼがゴール前に入れた横パスをトリゲロが一旦、止めたボールをその彼がシュート。最初はルーカス・バルケスに当たったものの、2度目のトライでゴールに入れてしまったんですよ。しかも直後はチュクワゼのオフサイドでノーゴールとされながら、VAR(ビデオ審判)が画面に線を引いたら、セーフだったって、そりゃあ、Semana Santa/セマナ・サンタ(イースター週間)のバケーションを利用して応援に駆けつけたビジャレアルファンも大喜びしますって。
こうなったらもう仕方ないので、アンチェロッティ監督はチュアメニ、セバージョスをモドリッチ、カマビンガに代え、再び勝ち越し点を探したんですが、何と35分にはチュクワザがまたしても輝くことに。ええ、今度はエリア前からファーサイドの隅にすっぽり収まるシュートを放ち、ビジャレアルが3点目をゲット。それでも根性のremontada(レモンターダ/逆転劇)モードが発動して、ビニシウスやロドリゴがチャンスに決めてくれていれば、引分けぐらいにはなったかと思いますが、残念ながら、この日のマドリーは「Nos costó estar motivados al 100%/ノス・コストー・エスタル・モティバードス・アル・シエン・ポル・シエン(ウチは100%のモチベーションを保つのが難しかった)」(アンチェロッティ監督)状態。
選手たちも人間ですから、残り11試合となれば、首位との勝ち点差が12でも15でも逆転優勝がほぼ不可能なのには変わりないという気分になるのもわかりますしね(月曜のジローナ戦でバルサは引分け、勝ち点差は13に)。だったら、水曜のチェルシー戦で頑張って、CL2連覇に繋げる方がずっといいと思ってしまっても仕方ないんですが、ええ、アンチェロッティ監督も「La temperatura ha bajado un poco, pero el miércoles estaremos a tope/ラ・テンペラトゥラ・ア・バハードー・ウン・ポコ、ペロ・エル・ミエルコレス・エスタレモス・ア・トペ(チームの温度は少し下がったが、水曜のウチはトップギアになるだろう)」と試合後に言っていましたっけ。
ただ、小さな不満は私にもあって、いえ、実はミックスゾーンでロ・チェルソがインタビューに答えている間、仕切りの後ろを通って選手たちが向かった駐車場でとんでもない事件が勃発。アレックス・バエナに前回のコパ16強対決の時、「llora ahora que tu hijo no va a nacer/ジョラ・アホラ・ケ・トゥ・イホ・ノー・バ・ア・ナセル(お前の息子は生まれてこないんだから、今は泣け)」と言われ、折しも妊娠継続はムリと彼女のミナさんが医者に告げられた件で悩んでいたバルベルデが激怒。この日に恨みを持ち越して、何とビジャレアルのチームバスの前でバエナを待ち伏せし、顔にパンチをお見舞いしたなんてことがあったのには驚かされたんですけどね。
バエナ自身はその発言を否定し、翌日にはバルベルデを暴行で警察に通報したそうですが、まあ、そんなのは言った言わないの水かけ論。今はミナさんの第2子の妊娠経過も良好になっているため、あとはバルベルデに罰金や反暴力委員会の出場停止処分が出るかどうかといった経過を見守るだけになりますが、その事件が起きる前、2-3の逆転勝利をベルナベウのロッカールームで祝っていたビジャレアルのセティエン監督がカンプ・ノウでバルサを下した後のアンチェロッティ監督の台詞をコピー。「Mañana día libre/マニャーナ・ディア・リブレ(明日は休養日)」と大ハシャギしていたのは、コンフェレンスリーグで16強敗退した彼らには次は土曜のバジャドリー戦まで試合がないためいいとしても、おかげでマドリーはたった1回の練習でこのビジャレアル戦を迎えることに。
これがちゃんと2回練習していて、大規模ローテーションもしなければ、リーガ今季最後の5節程が消化試合とならず、もっと長く真剣勝負を楽しめたかもしれないとちょっと、悔しかったりするんですが、え?この先はアトレティコとマドリーの2位争いが熱くなるんじゃないかって?いやあ、その通りで翌日曜、先週中にイディアケス監督が解任となり、Bチームのカルロス・マルティネス監督が率いた2部の弟分、レガネスがアウェイで後半ロスタイムにCBセルヒオ・ゴンサレスがヘッドで得点し、ポンフェラディーナに0-1で勝利。とうとう8試合越しに勝利を掴んで、降格圏と勝ち点8の差をつけた後、エスタディオ・バジェカスでマドリー兄弟分ダービーがキックオフとなったんですけどね。
試合は先日、お亡くなりになったコレアのお母さんの冥福を祈る黙祷から始まり、序盤から両者共、積極的に攻撃に出て行ったんですが、前半22分、久々にアトレティコが速攻カウンターを見せてくれたんです。キッカケはラージョのFKで、イシが蹴ったボールをクリアすると、グリーズマンがセンターからモラタにスルーパス。彼の前でアルバロ・ガルシアがカットしたところ、丁度、並走していたナウエル・モリーナがそれを受け、エリア内からシュートを決めているのですから、私も呆気に取られるばかりだったかと。
もちろん、モリーナは優勝したアルゼンチン代表でW杯でもご一緒した先輩のことを忘れず、ベンチ前まで駆けつけると、「Queríamos dedicárselo a Angelito y que sepa que el equipo está con él/ケリアモス・デディカールセロ・ア・アンヘリート・イ・ケ・セパ・エル・エキポ・エスタ・コン・エル(コレアにゴールを捧げて、チームは彼と共にあると伝えたかった)」と、この試合をTVで見ているはずのコレアのユニフォームを掲げていたんですが、それもあったせいで、もうほとんど間がなかったんじゃないでしょうか。そこからたったの2分、まだ先制点を奪われて動揺していたラージョの隙を突き、今度はカラスコのCKをエルモーソがヘッドでネットに叩き込んでいるとなれば、兄貴分の貫禄、まさにここにありって感じ?
後半すぐの4分、ラージョはバリウのクロスをGKオブラクが弾いて上がったボールをフラン・ガルシアが上手くヘッドできず、1点を返すチャンスを逃してしまったんですが、12分にはイラオラ監督が戦略を変更することに。ええ、この日はRdT(ラウール・デ・トマス)を先発起用してゴールを狙ったものの、不発だったため、彼、ウナイ・ロペス、イシを一気にファルカオ、トレホ、そしてレンタル移籍元のチームに成長した自分の姿を見せたくて、ベンチでうずうずしていたカメージョを投入。「サイドからカメージョを前に行かせるためにトレホが必要で、ファルカオが敵CBを引きつけているうちにそのスペースを利用する」(イラオラ監督)という作戦だったようですが、17分に思わぬ逆境が発生します。
というのもパスを受けたモラタを止めようとして、倒してしまったルジューヌが最初はイエローカードをもらいながら、VAR注進を受けてモニターを見に行った主審が最後のDFのファールとして、レッドカードに変更したから。これにはイラオラ監督も「Ha señalado falta, le saca amarilla y no necesita verla 300 veces/ア・セニャラードー・ファルタ、レ・サカ・アマリージャ・イ・ノー・ネセシータ・ベルラ・トレスシエントス・ベセス(ファールを取って、イエローも出したんだから、300回も見直す必要はない)」と怒っていたんですが、いやあ、敵が10人になって、アトレティコも助かったかも。
何せ、その後はモラタもマルコス・ジョレンテもシュートが決まらず、逆に40分にはフラン・ガルシアにエリア外からミドルシュートを決められて、ラージョに1点差に迫られていましたからね。それでも最後は1-2のまま逃げ切ると、アトレティコはとうとう無敗が12試合となり、前日負けた2位のマドリーに勝ち点2差に迫ったんですが…ふう。W杯のparon(パロン/リーガの停止期間)に入る前、あれだけひどい状態だったチームが復活した理由をエルモーソは、「Lo primero darse cuenta de las cosas que no estábamos haciendo bien/ロ・プリメーロ・ダールセ・クエンタ・デ・ラス・コーサス・ケ・ノー・エスタバモス・アシエンドー・ビエン(まず自分たちが上手くやっていないことに気づくことだった)」と言っていましたけどね。
シメオネ監督によると、「Está jugando el equipo que ganó LaLiga/エスタ・フガンドー・エル・エキポ・ケ・ガノ・ラ・リーガ(今はリーガ優勝した時のチームがプレーしている)」ことが好調に繋がっているそうですが、もう少し気づくのが早ければ、今頃、トルコまで親善試合に行くことなどなく、お隣さんのようにCL決勝トーナメントの試合をワクワクしながら待ったり、バルサとも首位争いできていたかもしれないという思いはアトレティコファン誰もが抱いている?とりあえず、現実は週末日曜、メトロポリターノでのアルメリア戦。これで8試合白星なし、9位となってしまったラージョは金曜にエル・サダルでのオサスナ戦となりますが、ミッドウィークは今週もやっぱりマドリーが主役です。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
まあ、そんなことはともかく、前節のマドリッド勢の試合を順番に振り返っていくことにすると。土曜に先陣を切ったのは弟分のヘタフェで、サンティアゴ・ベルナベウへ行く前に私も近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)でレアル・アレナでのレアル・ソシエダ戦を後半序盤まで見ていたんですけどね。前半の大部分はどちらにもあまりチャンスがなく、プレーのテンポも遅かったため、オンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の実況など、「partido de sorteros contra casados/パルティードー・デ・ソルテーロス・コントラ・カサードス(独身者vs既婚者の試合、お遊びでやる紅白戦のこと)」みたいだと揶揄していたんですが、いきなり40分にヘタフェにピンチが訪れることに。
そう、ジェネがエリア内でオジャルサバルを倒してしまい、PK献上となったからですが、ここはGKダビド・ソリアが発奮。オジャルサバル当人が蹴ったPKを見事に弾いてくれたんですが、まさかロスタイム、せっかくブライス・メンデスの至近距離シュートをparadon(パラドン/スーパーセーブ)しながら、上がったボールをヘッドで決めるというリベンジをオジャルサバルに果たせてしまってはねえ。後半もソシエダは15分にミケル・メリーノのラストパスを久保建英選手がゴールに流し込み、2-0とリードされたところでお店を出たんですが、その日はエネス・ウナルもボルハ・マジョラル、ムニルもゴール運には恵まれなかったよう。
それ以降、スコアは動かず、「Hemos perdido contra un equipo que no es cuarto por casualidad/エモス・ペルディードー・コントラ・ウン・エキポ・ケ・ノー・エス・クアルト・ポル・カスアリダッド(ウチはたまたま4位にいる訳ではないチームに負けた)」(キケ・サンチェス・フローレス監督)という結果になってしまいましたが、15位に下がっても降格圏との差は勝ち点3のままでしたからね。怖いのは次節、ホームのコリセウム・アルフォンソ・ペレスで優勝カウントダウンが始まっているバルサと対戦することですが、ホント、今季の残留争いの方は最後まで目を離せなくなりそうですね。
そして夏時間となってから日が伸びて、夕焼けの綺麗な午後9時から、ベルナベウでのビジャレアル戦がキックオフとなったんですが、アンチェロッティ監督は水曜にコパ準決勝クラシコ2ndレグでバルサを0-4と叩きのめし、逆転決勝進出を勝ち取ったチームからスタメンを6人も変更。といってもベンゼマ、ビニシウス、ロドリゴの3弾頭は残し、そこにアセンシオも加わって、4人FW体制で6-0と大勝した前節バジャドリー戦の2匹目のドジョウを狙ったようですが、実際、前半16分にアセンシオのシュートがパウ・トーレスに当たってゴールを割り、先制点を奪った時にはまたしてもgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)が見られるとほくそ笑んだファンも多かったかと。
でも同じVで始まるチームでも、残留争い中のバジャドリーと6位でCL出場圏入りを狙っているビジャレアルは違うんですよ。その差が現れたのは37分、ロ・チェルソからスルーパスを受けたチュクワゼがエリアに入るとナチョを切り返し、同点ゴールを挙げてしまったから、ビックリしたの何のって。いえ、後半3分には今度はビニシウスがビジャレアルDFを2、3人抜いてシュートを決め、マドリーは再びリードすることができたんですけどね。失敗だったのは、もちろん水曜にビッグゲームを控え、年長の選手は温存したいというアンチェロッティ監督の気持ちもわかりますが、まだ1点差だったにも関わらず、14分にはベンゼマをバルベルデに代えてしまったことでしょうか。
だってえ、その後、セティエン監督は負傷でエースのジェラール・モレノがもう何度目になるかわからない離脱中、どんどん存在感を増しているComandante(コマンダンテ/司令官)、モラレスを投入。ピッチに入って3分後の25分、チュクワゼがゴール前に入れた横パスをトリゲロが一旦、止めたボールをその彼がシュート。最初はルーカス・バルケスに当たったものの、2度目のトライでゴールに入れてしまったんですよ。しかも直後はチュクワゼのオフサイドでノーゴールとされながら、VAR(ビデオ審判)が画面に線を引いたら、セーフだったって、そりゃあ、Semana Santa/セマナ・サンタ(イースター週間)のバケーションを利用して応援に駆けつけたビジャレアルファンも大喜びしますって。
こうなったらもう仕方ないので、アンチェロッティ監督はチュアメニ、セバージョスをモドリッチ、カマビンガに代え、再び勝ち越し点を探したんですが、何と35分にはチュクワザがまたしても輝くことに。ええ、今度はエリア前からファーサイドの隅にすっぽり収まるシュートを放ち、ビジャレアルが3点目をゲット。それでも根性のremontada(レモンターダ/逆転劇)モードが発動して、ビニシウスやロドリゴがチャンスに決めてくれていれば、引分けぐらいにはなったかと思いますが、残念ながら、この日のマドリーは「Nos costó estar motivados al 100%/ノス・コストー・エスタル・モティバードス・アル・シエン・ポル・シエン(ウチは100%のモチベーションを保つのが難しかった)」(アンチェロッティ監督)状態。
選手たちも人間ですから、残り11試合となれば、首位との勝ち点差が12でも15でも逆転優勝がほぼ不可能なのには変わりないという気分になるのもわかりますしね(月曜のジローナ戦でバルサは引分け、勝ち点差は13に)。だったら、水曜のチェルシー戦で頑張って、CL2連覇に繋げる方がずっといいと思ってしまっても仕方ないんですが、ええ、アンチェロッティ監督も「La temperatura ha bajado un poco, pero el miércoles estaremos a tope/ラ・テンペラトゥラ・ア・バハードー・ウン・ポコ、ペロ・エル・ミエルコレス・エスタレモス・ア・トペ(チームの温度は少し下がったが、水曜のウチはトップギアになるだろう)」と試合後に言っていましたっけ。
ただ、小さな不満は私にもあって、いえ、実はミックスゾーンでロ・チェルソがインタビューに答えている間、仕切りの後ろを通って選手たちが向かった駐車場でとんでもない事件が勃発。アレックス・バエナに前回のコパ16強対決の時、「llora ahora que tu hijo no va a nacer/ジョラ・アホラ・ケ・トゥ・イホ・ノー・バ・ア・ナセル(お前の息子は生まれてこないんだから、今は泣け)」と言われ、折しも妊娠継続はムリと彼女のミナさんが医者に告げられた件で悩んでいたバルベルデが激怒。この日に恨みを持ち越して、何とビジャレアルのチームバスの前でバエナを待ち伏せし、顔にパンチをお見舞いしたなんてことがあったのには驚かされたんですけどね。
バエナ自身はその発言を否定し、翌日にはバルベルデを暴行で警察に通報したそうですが、まあ、そんなのは言った言わないの水かけ論。今はミナさんの第2子の妊娠経過も良好になっているため、あとはバルベルデに罰金や反暴力委員会の出場停止処分が出るかどうかといった経過を見守るだけになりますが、その事件が起きる前、2-3の逆転勝利をベルナベウのロッカールームで祝っていたビジャレアルのセティエン監督がカンプ・ノウでバルサを下した後のアンチェロッティ監督の台詞をコピー。「Mañana día libre/マニャーナ・ディア・リブレ(明日は休養日)」と大ハシャギしていたのは、コンフェレンスリーグで16強敗退した彼らには次は土曜のバジャドリー戦まで試合がないためいいとしても、おかげでマドリーはたった1回の練習でこのビジャレアル戦を迎えることに。
これがちゃんと2回練習していて、大規模ローテーションもしなければ、リーガ今季最後の5節程が消化試合とならず、もっと長く真剣勝負を楽しめたかもしれないとちょっと、悔しかったりするんですが、え?この先はアトレティコとマドリーの2位争いが熱くなるんじゃないかって?いやあ、その通りで翌日曜、先週中にイディアケス監督が解任となり、Bチームのカルロス・マルティネス監督が率いた2部の弟分、レガネスがアウェイで後半ロスタイムにCBセルヒオ・ゴンサレスがヘッドで得点し、ポンフェラディーナに0-1で勝利。とうとう8試合越しに勝利を掴んで、降格圏と勝ち点8の差をつけた後、エスタディオ・バジェカスでマドリー兄弟分ダービーがキックオフとなったんですけどね。
試合は先日、お亡くなりになったコレアのお母さんの冥福を祈る黙祷から始まり、序盤から両者共、積極的に攻撃に出て行ったんですが、前半22分、久々にアトレティコが速攻カウンターを見せてくれたんです。キッカケはラージョのFKで、イシが蹴ったボールをクリアすると、グリーズマンがセンターからモラタにスルーパス。彼の前でアルバロ・ガルシアがカットしたところ、丁度、並走していたナウエル・モリーナがそれを受け、エリア内からシュートを決めているのですから、私も呆気に取られるばかりだったかと。
もちろん、モリーナは優勝したアルゼンチン代表でW杯でもご一緒した先輩のことを忘れず、ベンチ前まで駆けつけると、「Queríamos dedicárselo a Angelito y que sepa que el equipo está con él/ケリアモス・デディカールセロ・ア・アンヘリート・イ・ケ・セパ・エル・エキポ・エスタ・コン・エル(コレアにゴールを捧げて、チームは彼と共にあると伝えたかった)」と、この試合をTVで見ているはずのコレアのユニフォームを掲げていたんですが、それもあったせいで、もうほとんど間がなかったんじゃないでしょうか。そこからたったの2分、まだ先制点を奪われて動揺していたラージョの隙を突き、今度はカラスコのCKをエルモーソがヘッドでネットに叩き込んでいるとなれば、兄貴分の貫禄、まさにここにありって感じ?
後半すぐの4分、ラージョはバリウのクロスをGKオブラクが弾いて上がったボールをフラン・ガルシアが上手くヘッドできず、1点を返すチャンスを逃してしまったんですが、12分にはイラオラ監督が戦略を変更することに。ええ、この日はRdT(ラウール・デ・トマス)を先発起用してゴールを狙ったものの、不発だったため、彼、ウナイ・ロペス、イシを一気にファルカオ、トレホ、そしてレンタル移籍元のチームに成長した自分の姿を見せたくて、ベンチでうずうずしていたカメージョを投入。「サイドからカメージョを前に行かせるためにトレホが必要で、ファルカオが敵CBを引きつけているうちにそのスペースを利用する」(イラオラ監督)という作戦だったようですが、17分に思わぬ逆境が発生します。
というのもパスを受けたモラタを止めようとして、倒してしまったルジューヌが最初はイエローカードをもらいながら、VAR注進を受けてモニターを見に行った主審が最後のDFのファールとして、レッドカードに変更したから。これにはイラオラ監督も「Ha señalado falta, le saca amarilla y no necesita verla 300 veces/ア・セニャラードー・ファルタ、レ・サカ・アマリージャ・イ・ノー・ネセシータ・ベルラ・トレスシエントス・ベセス(ファールを取って、イエローも出したんだから、300回も見直す必要はない)」と怒っていたんですが、いやあ、敵が10人になって、アトレティコも助かったかも。
何せ、その後はモラタもマルコス・ジョレンテもシュートが決まらず、逆に40分にはフラン・ガルシアにエリア外からミドルシュートを決められて、ラージョに1点差に迫られていましたからね。それでも最後は1-2のまま逃げ切ると、アトレティコはとうとう無敗が12試合となり、前日負けた2位のマドリーに勝ち点2差に迫ったんですが…ふう。W杯のparon(パロン/リーガの停止期間)に入る前、あれだけひどい状態だったチームが復活した理由をエルモーソは、「Lo primero darse cuenta de las cosas que no estábamos haciendo bien/ロ・プリメーロ・ダールセ・クエンタ・デ・ラス・コーサス・ケ・ノー・エスタバモス・アシエンドー・ビエン(まず自分たちが上手くやっていないことに気づくことだった)」と言っていましたけどね。
シメオネ監督によると、「Está jugando el equipo que ganó LaLiga/エスタ・フガンドー・エル・エキポ・ケ・ガノ・ラ・リーガ(今はリーガ優勝した時のチームがプレーしている)」ことが好調に繋がっているそうですが、もう少し気づくのが早ければ、今頃、トルコまで親善試合に行くことなどなく、お隣さんのようにCL決勝トーナメントの試合をワクワクしながら待ったり、バルサとも首位争いできていたかもしれないという思いはアトレティコファン誰もが抱いている?とりあえず、現実は週末日曜、メトロポリターノでのアルメリア戦。これで8試合白星なし、9位となってしまったラージョは金曜にエル・サダルでのオサスナ戦となりますが、ミッドウィークは今週もやっぱりマドリーが主役です。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。