住宅ローンの繰り上げ返済をする方法は2種類|メリット・デメリットとは?
住宅ローンの繰り上げ返済には利息負担の削減をはじめ、最終的な返済額を抑える効果も期待できます。
今回は、住宅ローンの繰り上げ返済の方法にはどのような種類があるのか、また繰り上げ返済を行うにあたって知っておきたいメリット・デメリットについて解説します。さらに、繰り上げ返済と比較検討したいほかの選択肢について紹介するので、繰り上げ返済を検討している人はぜひ参考にしてください。
住宅ローンの繰り上げ返済とは?
住宅ローンの繰り上げ返済の方法には「一部繰り上げ返済」と「全額繰り上げ返済」があります。
「一部繰り上げ返済」とは、ローン残債の元本の一部について毎月の返済とは別に返済を行うことで、「全額繰り上げ返済」とは残りの住宅ローンを一括で返済することです。
なお、全額繰り上げ返済は「一括返済」と呼ばれることが多く、単に繰り上げ返済といえば、一部繰り上げ返済を指すのが一般的です。そのため、本記事では一部繰り上げ返済の内容について解説します。
一部繰り上げ返済の方法には、「返済期間短縮型」と「返済額軽減型」の2種類があります。
返済期間短縮型とは?
一部繰り上げ返済の返済期間短縮型とは、毎月の返済額は変えずに行う繰り上げ返済のことで、返済した元本分に相当する返済期間を短くする方法です。
返済期間が短くなる分、総返済額を削減する効果が期待でき、繰り上げ返済で返済した元本分の利息削減効果も享受できます。
仮に3,000万円を借り入れ(金利0.3%、返済期間35年)、10年後に同じ金利のまま300万円を返済した場合の期間短縮効果は3年半、総返済額も約21万円削減できます。
返済期間短縮型を選ぶメリット・デメリットとは?
返済期間短縮型を選択すると、返済した元本分の利息の支払いを削減できるほか、残りの返済期間が短くなるため、最終的な総返済額も削減できます。
ただし、毎月の返済額は変わらないので、月々の返済を負担に感じている人にとっては、繰り上げの実感が得られないかもしれません。
また、住宅ローン控除の適用期間中は注意が必要です。繰り上げ返済でローンの総返済期間が10年よりも短くなると、住宅ローン控除の適用を受けられなくなります。
返済期間短縮型に向いている人の特徴とは?
返済期間短縮型に向いているのは、ローンの返済を早く終わらせたい人です。退職までに完済したい、あるいは子どもに教育費がかかる時期までに完済させたいなど、今後のライフスタイルやライフイベントに応じて返済のスケジュールを考えている人におすすめです。
ただ、完済ばかりを目標にして、手持ちの資金が少なくなってしまっては本末転倒です。
繰り上げ返済は余剰資金のなかから行うことを忘れないようにしてください。
返済額軽減型とは?
返済額軽減型とは、繰り上げ返済で返済した元本分、返済期間は変えずに毎月の返済額を下げる方法です。
金融機関によっては返済額軽減型ではなく、期日据置型と呼ばれることもあります。
ちなみに前出の条件でシミュレーションすると、毎月の返済額は当初の7万5,253円から6万4,872円に減額され、年間では約12.5万円の削減となります。
返済額軽減型を選ぶメリット・デメリットとは?
返済額軽減型の一番のメリットは、毎月のローン返済の負担が減ることでしょう。
ただし、総返済額でみると返済額軽減型より返済期間短縮型のほうが少なくなる点には注意が必要です。また、返済期間が変わらないため、リタイア後も返済が残る可能性があります。
返済額軽減型に向いている人の特徴とは?
返済額軽減型は、もともとリタイア前に完済する予定だったり、できるだけ毎月の返済額の負担を減らしたいと考えていたりする人に向いています。
また、何らかの理由で収入が減少し、毎月の返済額が家計の負担になっている場合の一時的な負担軽減策として利用する考え方もあります。
住宅ローンの繰り上げ返済をするメリットとは?
返済期間短縮型・返済額軽減型いずれの方法をとるかに関わらず、住宅ローンの繰り上げ返済を行うメリットはどこにあるのでしょうか。
ここからは、住宅ローンの繰り上げ返済のメリットについて解説します。
支払う利息が減る
なんといっても最大のメリットは、支払う利息を削減できることです。返済期間短縮型および返済額軽減型のどちらを選んでも総返済額を削減できます。ただし、効果は返済期間短縮型のほうが大きいといわれています。
では、返済期間短縮型で300万円繰り上げ返済した場合、どの程度の負担軽減につながるのかシミュレーションしてみましょう。
(条件)
借入金額:4,000万円
返済期間:35年
固定金利:1.8%
元利均等返済
ボーナス払いなし
返済開始から5年後に300万円を繰り上げ返済する
繰り上げ返済で返済月数が38ヶ月(約3年)短縮されたほか、利息分および返済総額も200万957円削減できることになりました。
では、仮に返済額削減型を選ぶとどうなるのでしょうか。
返済額軽減型を選択すると毎月の返済額が1万791円少なくなります。利息分および返済総額も88万4,739円削減できますが、返済期間短縮型と削減分に大きな開きがあることがわかるでしょう。
このように、同じ繰り上げ返済でも方法の違いで、利息分および返済総額の削減効果が異なります。
将来の負担を軽減できる
将来の負担を軽減できるのも、繰り上げ返済の大きなメリットです。
定年後の支払いをなくせるほか、削減できた部分を老後資金の形成に回せます。そうすれば、よりゆとりのある老後資金を準備できるでしょう。
住宅ローンの繰り上げ返済をするデメリット・注意点とは?
返済期間短縮型、返済額軽減型をいずれの方法をとるかに関わらず、住宅ローンの繰り上げ返済を行うにあたっては、メリットばかりでなくデメリットや注意点もあります。
繰り上げ返済に適さないタイミングがある
実は、繰り上げ返済には適さないタイミングが存在します。
まず、繰り上げ返済によってローンの総返済期間が10年未満になってしまうと住宅ローン控除が利用できなくなります。また、最近のネット銀行などでは繰り上げ返済の手数料を無料とする金融機関が多くみられますが、なかには手数料が発生するところもあります。手数料が発生する場合は、繰り上げ返済による負担の軽減よりも手数料の負担増の方が大きかったり、繰り上げ返済の効果が十分に得られなかったりすることも考えられます。繰り上げ返済を想定してる場合は、事前に、「繰り上げ返済手数料0円」「繰り上げ返済金額に条件なし」の金融機関を調べておきましょう。また、住宅ローンの繰り上げ返済よりも優先すべき支払いがないかという視点も大切です。
特に近年は低い金利が適用されているため、繰り上げ返済によって得られる利息削減効果は大きくありません。住宅ローンよりも金利の高い借入先があるなら、そちらへの返済を優先したほうがよいでしょう。
住宅ローンの繰り上げ返済を検討する際には、事前に必ずシミュレーションを行い、利息削減効果がどのくらいあるのか、また住宅ローン控除の適用に影響しないかなどを確認することが大切です。
手元資金が不足してしまう場合がある
利息削減効果を高めたいと思うばかりに無理な額で繰り上げ返済を行うと、手持ち資金が不足して、万が一の際に対応できなくなるおそれがあります。また、子どもの教育資金など、これからのライフイベントに対する準備ができているかもポイントです。
繰り上げ返済は、余剰資金のなかから必要生活費および緊急生活資金を除いた額で行うようにしましょう。
また、繰り上げ返済の後で予期せぬ収入減少に見舞われる可能性もあります。そのようなケースも想定しながら、無理のない額で繰り上げ返済を検討しましょう。
団信の保険効果が減ってしまう
住宅ローンの契約を交わす際に、団体信用生命保険(団信)を生命保険代わりと考えて、保険を見直した人もいるのではないでしょうか。
ただし、団体信用生命保険はあくまでも住宅にかかる保険です。そのため、住宅ローンを完済したら団信の保障効果もその時点でなくなってしまいます。
一般の生命保険は保障期間を選べるため、保険の種類によっては一生涯に設定できます。また、保険料は加入時の年齢によって異なり、年齢が若いほうが低くなります。
住宅ローンを完済した後に、死亡や病気に対する保障が残っていないとなると、新たに一般の生命保険に加入しなければなりません。ただし、年齢が高くなっているため保険料が高くなることが予想され、持病の悪化などで生命保険自体に入れない可能性もあります。
繰り上げ返済によってこのようなことが起こることを防ぐためにも、団体信用生命保険と一般の生命保険は、きちんと使い分けておきましょう。
手数料がかかる場合がある
金融機関によっては、繰り上げ返済に手数料がかかるケースもあります。一般的にインターネットで返済を行う場合は無料となっているところが多いですが、窓口だと数万円、電話やテレビ窓口でも5,000円程度の手数料が発生する金融機関もあります。
手数料を抑えたい人は、インターネットを利用した繰り上げ返済がおすすめです。
さらに注意しなければならないのは、繰り上げ返済の最低金額です。繰り上げ返済の最低金額を設けていない金融機関もあれば、10万円以上からの受け付けとなっているところもあります。
自分が利用している金融機関の手数料、そして繰り上げ返済の最低単位を今一度確認しておきましょう。
住宅ローンの繰り上げ返済と比較検討したい選択肢とは?
最後に住宅ローンの繰り上げ返済を検討するにあたり、あわせて検討しておきたい2つの選択肢を紹介します。
借り換え
現在利用している住宅ローンの金利が高いと感じるなら、繰り上げ返済よりも借り換えを行うほうが、最終的な利息削減効果が大きくなる場合もあります。
借り換えの目安は金利差が1%以上、住宅ローン残債が1,000万円以上、残りの返済期間が10年以上といわれています。この条件を満たすなら、借り換えという選択肢も検討するとよいでしょう。
ただし、借り替えの際には新規と同様に審査を受ける必要があります。最初に住宅ローンを借りたときと比べて、転職や独立によって属性が悪くなっている場合や、年齢や健康状態によっては、審査に通らない可能性もあります。
また、借り換えで気をつけなければならないのは諸費用です。諸費用が高い金融機関だと、借り換えたとしても諸費用の分だけ利息削減効果が薄れてしまいます。候補先の金融機関のサイトに用意されているシミュレーションを利用して、最終的にどのくらいの利息削減効果が得られるかを必ず確認しましょう。
資産運用
住宅ローンの金利が低い昨今、繰り上げ返済ではなくその資金を活用して、資産運用を行うという選択肢もあります。
NISAやiDeCoのように、非課税で運用できる制度も用意されています。特にNISAは2024年から大きく変わり、より資産形成がしやすい仕組みになるので、チャレンジしてみる選択肢もあるでしょう。
まとめ
住宅ローンの一部繰り上げ返済には「返済期間短縮型」と「返済額軽減型」の2つの方法があり、利息削減効果がより高いのは返済期間短縮型です。
住宅ローンの繰り上げ返済には、金利の負担を軽減できるというメリットがある反面、手元資金が一時的に不足したり、金融機関によっては手数料がかかったりするというデメリットもあります。
繰り上げ返済を検討する際には、メリットとデメリットをしっかりと理解し、事前にシミュレーションを行ってください。
また、借り換えや資産運用などほかの選択肢も比較検討したうえで最終的に決めることをおすすめします。