西東京バスが運行するトレーラーバス「青春号」の引退をもって、保有者も少なく大変珍しい「けん引二種」免許が必須な車両が見納めになります。ただ、見た目が似ている連節バスの運転には必要ないのでしょうか。

くねくね長い連節バス

 日本全国でたった1台しかない「トレーラーバス」(西東京バスが運行)が、2023年3月31日(金)をもって運行を終了します。トレーラーバスとは客車をけん引して走る大型バスのことで、運転には「けん引二種」免許が必須です。この免許の保有者は、2021年末時点で4万4000人あまりと、「大型二種」保有者 約82万4000人のわずか5%にすぎません。

 激レアともいえる「けん引二種」免許ですが、2023年2月現在、日本国内でこれが必須なのは上述したトレーラーバスの運転のみ。つまり3月に引退後は、活用できる車種がなくなってしまうのです。


西東京バスが運行するトレーラーバス「青春号」(画像:日の出町)。

 ところで、トレーラーバスに似たバスとして、車体の長い連節バスが挙げられます。2両をつなげたような格好で、全長は18mほど。主要駅と大型商業施設、もしくは大学などとを結び、鉄道がない地域での大量輸送に貢献しています。国内では京成バスや神奈川中央交通、奈良交通、西鉄バスなど全国で導入例があり、今後は東急バスも導入を予定しています。

 カーブ通過などの際はつなぎ目の蛇腹部分が折れ曲がる連節バスですが、運転に「けん引二種」免許は必要ありません。なぜなのでしょうか。

なぜ「けん引二種」は不要か

 連節バスで「けん引二種」免許が不要なのは、2両目が“けん引されることを前提に造られていない”からとされています。例えばコンテナトレーラーの場合、トラクター(トレーラーヘッド)とトレーラー(コンテナを積載)に分割でき、エンジンはトラクターにあります。後ろのトレーラーはトラクターにけん引されて初めて走行できます。


西鉄バス北九州が小倉〜黒崎間などで運行する連節バス(画像:西鉄日本鉄道)。

 一方、連節バスは前後の車両の分割は原則不可能です。また、国内に導入された車両はエンジンが後部にあるため、前進時は“2両目に押してもらう”形となります。以上よりけん引には該当しないため、法律上「けん引二種」免許が不要となるのです。

 連節バスは、運転手1人で一般的なバスの約1.8倍の乗客を運べる利点から、運転手不足の解消や交通渋滞の緩和といった面で注目されています。3月からは川崎鶴見臨港バスが、川崎駅と臨港地域である水江町とを結ぶ「川崎BRT」の運行を開始しました。横浜市内でも2023年度内の運行を目指し、ベッドタウンである戸塚区と青葉区で導入計画が進んでいます。

 なお、連節バスの運転は「大型二種」免許で可能なものの、事業者によっては「けん引二種」の取得を義務付けたり、保有者を優遇したりすることもあるようです。