一般的に鉄道の路線名は、起終点駅の頭文字や経由地をとって名付けられますが、各地には「路線名と経由地が合致しない」例がいくつか存在します。そして今後もそのような事例が増えていきそうです。

JR横浜線も横浜駅は通らない が…

 奈良県を通らないJR奈良線、横浜駅へ行かないJR横浜線――各地には「路線名と経由地が合致しない」鉄道路線がいくつか存在します。一般的に路線名は、起終点駅の頭文字や経由地をとって名付けられますが、合致しないのには様々な理由があります。


奈良駅はおろか奈良県すら通らないJR奈良線(画像:写真AC)。

 冒頭の奈良線は、京都駅から京都府木津川市の木津駅までを結ぶ路線で、全区間が京都府内で完結します。ただし、奈良鉄道として開業した明治期には、京都〜奈良間の路線でした。国有化後、線路名を制定した1909(明治42)年、奈良〜木津間が関西本線に、木津〜京都間が奈良線となったため、奈良線は奈良県内すら通らなくなったのです。もっとも2023年2月現在は、みやこ路快速など奈良行きの直通列車が運行されています。

 では横浜線はどうでしょうか。こちらは1908(明治41)年、横浜鉄道として八王子〜東神奈川間が開業しました。甲州や多摩産の絹を、横浜港へ運ぶためです。起終点は現在も変わらず、あと一駅のところで横浜駅には到達しませんが、1917(大正6)年に国有化された際、路線名をそのまま受け継ぎました。ただこちらも奈良線と同様に、横浜駅やその先まで直通する列車が運行されています。

 廃線によって、物理的に到達不可能になってしまった例もあります。JR北海道の札沼線はもともと、札幌(厳密には隣の桑園駅が起点)〜石狩沼田間を結ぶため、双方の自治体(札幌市と沼田町)の頭文字をとって名付けられましたが、2023年2月現在は、北海道医療大学駅(当別町)が終点です。2度の区間廃止を経て、大幅に路線が短くなっても、名称は変わっていません。

留萌駅に行かなくなるJR留萌本線

 そして2023年4月にも、廃線によって「路線名と経由地が合致しない」路線が誕生します。JR留萌本線です。

 同線は2月現在、深川〜留萌間を結んでいますが、間もなく石狩沼田〜留萌間が廃止され、深川〜石狩沼田間の路線になります。短縮後の総延長は約14kmとなり、支線や貨物線を除くJRの本線としては最短に。なお沿線自治体である深川市、秩父別町、沼田町、留萌市と協議を行い、残る区間についても2026年3月末に廃止する方向で合意に至っています。


増毛駅に停車するJR留萌本線の列車。留萌〜増毛間は2016年12月に廃止された(2016年10月、大藤碩哉撮影)。

 なお今年ではありませんが、翌2024年春には北陸新幹線の敦賀駅(福井県敦賀市)延伸に伴い、JR北陸本線の金沢〜敦賀間130.7kmが廃止されます。同区間は地元などが出資する第三セクターへ移管され、JR西日本が運行する区間は米原〜敦賀間のわずか45.9kmとなります。

 福井県は北陸地方に含まれるとはいえ、2024年春以降の「北陸本線の北陸区間」は、新疋田〜敦賀間たった1区間に(滋賀県境区間を除く)。ただしもともとは、新潟県上越市の直江津駅まで約350kmを結ぶ大幹線でした。