長きにわたり定期旅客便に就航した世界唯一の超音速旅客機「コンコルド」は、初飛行を実施した試作機と、その後の量産機では、仕様にかなりの違いがあります。どのようなものなのでしょうか。

1969年3月2日初飛行

 イギリス・フランスで共同開発された「コンコルド」は、長きにわたり定期旅客便に就航した世界唯一の超音速旅客機として、民間航空の世界では“伝説の旅客機”として知られています。初飛行は1969年3月2日、現在エアバス社などが本拠を構えるフランス・トゥールーズのブラニャック空港で実施されました。ただ実はこの試作機、実は量産機とは仕様が異なります。


フランス・トゥールーズに展示されている量産機の「コンコルド」(松 稔生撮影)。

 試作初号機は1967年末に完成披露(ロールアウト)。初飛行は30分弱で、高度約1万フィート(約3050m)まで上昇し、時速約250ノット(時速463km)で飛行したと記録されています。

「コンコルド」の大きな特徴のひとつが可動式の機首です。同機は離着陸時、その特性上、ほかの旅客機より大きく上向きの姿勢を取る必要があります。そこで下に折れ曲がる機首を採用することで、離着陸時の視界を確保しています。

 量産機は、その機首可動部の上部、ちょうど高速飛行などの際に機首をまっすぐにしたときにコックピット窓と重なる部分「バイザー」の設計を、試作から一新。「バイザー」部の窓を大きくし、本来のコックピット窓と「バイザー」が重なっても、視認性が悪化しないように工夫が図られています。

「バイザー」以外に何が変わった?

「コンコルド」量産機では、試作機から機首部分のほか、主脚長や重量、胴体の長さなど、さまざまな箇所の設計を変更。客室窓もスマートフォン程度の小さいものに変えられました。量産型「コンコルド」の全長は62.19m、翼幅は25.56mとなり、巡航速度はマッハ2(時速にして約2200km)が打ち出されています。

 そんな「コンコルド」はBA(ブリティッシュ・エアウェイズ)とエール・フランス航空2社で各7機、計14機が導入されました。BAによると同型機における最速の大西洋横断記録は1996年2月7日のニューヨーク発ロンドン行きで、2時間52分59秒とのこと。ちなみに2023年現在、同路線の時刻表上における飛行時間は6時間55分です。他モデルの追随を許さない、圧倒的な飛行スピードを実現しています。


フランスのル・ブルジェ航空博物館に保管されている「コンコルド」試作機(松 稔生撮影)。

 その一方、機内や座席は、他機に比べて非常に小ぶりなものとなっています。2社とも客席は100席を設けましたが、横2-2列の配置でした。しかしながら、特別な機内サービスや機内食、専用の空港ラウンジなどが用意され、運賃の高さも特別なものだったとされています。

 BAの「コンコルド」はマンチェスター、ニューヨーク、シアトルなどへ、エール・フランスのコンコルドはハバナ、リオデジャネイロ、ワシントン、ダラスなどへ就航。運航は2社ともに2003年までとなり、BAでは5万便弱が運航され250万人以上が搭乗、エール・フランスでは約3万3000便が運航され約141万人が搭乗したと記録されています。