自宅がカラオケボックスになるApple Musicの新機能「Apple Music Sing」。往年の名曲や最新ヒットソングが歌い放題になるサービスを試してみた

Appleの音楽配信サービス「Apple Music」に、“歌もの”楽曲のボーカルの音量を調整してカラオケ感覚で楽しめる新機能「Apple Music Sing」が追加された。Apple Musicの一部プランを除く登録ユーザーならば追加料金不要。どんな楽曲が「歌える」のか、その楽しみ方を解説する。

人気アーティストの「歌える」ヒット曲が揃う

Apple Musicは、月額1,080円(一般の個人ユーザーの場合)で楽しめる音楽配信サービスです。2023年1月現在、約1億の楽曲や音楽のスペシャリストたちが作成した3万以上のおすすめプレイリスト、話題のミュージックビデオなど、豊富なコンテンツが揃っています。

Apple Musicを楽しめるデバイスはiPhone、iPad、Macだけではありません。Androidスマホ向けにも「Apple Music」アプリが提供されているほか、Windows PCのユーザーであってもWebブラウザを介してリスニングできます。

今回新たに追加された「Apple Music Sing」は、いわゆる“歌もの”のボーカル曲を中心に、Apple Musicで配信されている数百万曲をカラオケのように楽しむことができるサービス。音声による操作に最適化した「Apple Music Voice」プラン(月額480円)以外の登録ユーザーが使えます。

追加料金不要でカラオケが楽しめる新サービス「Apple Music Sing」がスタートした

Apple Musicの検索メニュー。「Sing」カテゴリーを選択すると「歌える」楽曲が表示される

数百万曲の中には、洋楽・邦楽の最新ヒット曲やカラオケの定番曲も多数含まれています。

2023年1月時点で筆者がざっと確認したところ、筆者のカラオケの「十八番」であるサザンオールスターズに松任谷由実、ミスチル、槇原敬之、竹内まりやの往年のヒット曲がずらり。また、米津玄師やYOASOBIといった最新人気アーティストのヒット曲もありました。カラオケの洋楽曲の定番であるビートルズの名曲や演歌系もバッチリ網羅しています。

意外なところでは、米ヒップホップMCであるスヌープ・ドックのラップ曲も歌えました。一方で、歌手の声を楽しむことに価値がある、マリア・カラスが歌うクラシック楽曲やヘレン・メリルによる珠玉の録音「帰ってくれたらうれしいわ(原題:You’d Be Nice to Come Home To)」などの曲は、サービス非対応でした。

独自技術で「歌声の音量だけ」を下げる

Apple Music Singの使い方は、とても簡単です。

まずは「ミュージック」アプリから対応する楽曲を選び、再生をスタート。画面左下の歌詞表示アイコンをタップすると、画面の右側にマイクのアイコンが表われるので、上下に動くスライダーでボーカルの音量を決定します。ボーカルの音量は完全には消えませんが、ある程度ボーカルを残しておけば、歌い慣れていない楽曲のガイドにもなります。

歌詞表示アイコン(写真①)をタップして歌詞を表示。マイクのアイコン(写真内②)を選択するとボーカルの音量が変更できる

Apple Music Singは、Appleがイヤフォン/ヘッドフォンの「AirPods」シリーズに搭載するノイズキャンセリング技術や、FaceTimeアプリの音声通話品質を改善するために培ってきた独自技術により、元の楽曲データからボーカルのトラックだけを検出して、聞こえなくなるように調整してくれます。Apple Music Sing用に別途でデータを作って配信しているわけではありません。

Apple Music Singに対応する楽曲は、メインボーカルだけでなく、デュエット曲や複数のボーカリストが代わる代わる歌う歌声も調整できます。

デュエット曲の場合、歌詞表示の画面には歌詞がデバイスの画面の左右に分かれて表示されます。珠玉のデュエット曲「美女と野獣」(筆者の世代は、セリーヌ・ディオンとピーボ・ブライソンの方)も、パートの分担を迷わずに歌えます。

iPhoneの対応機種は?

Apple Music Singに対応するデバイスは以下の通りです。

・iOS 16.2以降を導入したiPhone 11以降、または第3世代のiPhone SE以降

・iPadOS 16.2以降を導入したiPad Pro(11インチは第3世代以降、12.9インチは第5世代以降)、iPad Air(第4世代以降)、iPad mini(第6世代以降)、iPad(第9世代以降)

・tvOS 16.2以降を導入したApple TV 4K(第3世代以降)

ご覧の通り、残念ながらmacOSには2023年1月初旬の時点で非対応。しかし、iOSの「画面ミラーリング」の機能を使えば、Apple Musicの画面とサウンドをMacに送り出し、より大きな画面とパワフルなスピーカーを使ってカラオケに没入する楽しみ方もできます。

ただし、画面はiPhoneのタテ表示のままなので、個人的にはMacへの最適化を急いでもらいたいところ。なお、Android版Apple Musicアプリとブラウザ版への対応も、もう少し先になりそうです。

iPhoneの「画面ミラーリング」を使えば、Apple Music Singに対応していないMacに画面の表示とサウンドを飛ばして楽しめる

Apple Music Singによるカラオケを大画面で楽しみたい方は、Apple TV 4Kとテレビによる組み合わせがおすすめです。さらにサウンド面も強化したいならHomePod miniなどの外部スピーカーも用意するとよいでしょう。

Apple TV 4KがあればApple Music Singの画面をテレビに表示して、HomePod miniで迫力いっぱいのサウンドを鳴らしながら歌えます。

リビングの大画面テレビと相性良好!

筆者はコロナ禍をきっかけにカラオケボックスに足を運ぶ機会が少なくなってしまったので、久しぶりに自宅で歌ってみたらものすごく楽しかったです。

家族と一緒にカラオケで盛り上がるのも素敵ですが、むしろ筆者は1人の時間を思いっきり楽しむためのエンターテインメントとしておすすめします。気になっていた流行の曲を1人で練習するのにも最適です。

ただし、現時点でのApple Music Singには、不満を感じる点もいくつかあります。

1つは、マイクを握りしめて熱唱できないこと。

これを解決するには、市場には「カラオケ用」を謳うBluetoothスピーカー内蔵マイクを活用してみましょう。iPhoneにペアリングしてApple Music Singの演奏を再生しながら、マイクを片手に熱唱できるようになります。歌声にエコーをかけられたり、音楽に合わせてLEDを派手に点滅させられたりする製品もあるので、こだわり派の方はぜひ最適なマイクを探してみてください。

Apple Music Singをよりリッチに楽しむなら、Bluetoothスピーカー内蔵マイクもおすすめ

またiPhoneにAirPodsをペアリングして、イヤフォンのマイクでピックアップしたユーザーの歌声を、Apple Music Singの演奏に「ミックスして聴く」こともできればよいのですが、この機能もありません。

個人的には、カラオケの定番である「採点」機能や、ギターの練習用として「ボーカルを残して演奏の音を小さくする」機能もあれば、さらに満足度は高まると感じました。

とはいえ、自宅で気軽にカラオケができるApple Music Singは非常にユニークで実用性の高い新機能です。サービス登録者が続々と増えているApple Musicだからこそ、ユーザーの声を聞きながら、今後、よりリッチなサービスとして進化してほしいですね。

文/山本敦