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加速性能はトルクウエイトレシオで

クルマの内容を判断するときに、よく耳にするのが「よく走る」という言葉だ。

【画像】加速力トップ3はこのクルマ【パワーウエイトレシオ選手権】 全250枚

実際にクルマは走行する機械であるわけだから、走行性能は最も重要なポイントとなる。


2022年は日産からフェアレディZが登場。日産ZはスーパーGT GT500クラス(2022年シーズン)でも優勝した。

そうした走行性能でわかりやすく、しかも大切なのが加速力だ。加速力が優れていれば、前走車を追い抜くのも高速道路などの合流も楽になる。信号からの再発進にもストレスがない。

そして、加速力の大小は、クルマのスペック(主要諸元)を見ると大まかなものを予想することができる。

それがトルクと車両重量だ。

トルクはエンジンが車軸を回す力。つまりタイヤを回す=クルマを加速させる力を意味する。

そのため、トルクが大きくそして車両重量が軽いほど加速力に優れる。

それを見る数値が車両重量を最大トルクで割った数値、トルクウエイトレシオだ。この数字が小さいほど、加速力が優れることになる。

もちろんトランスミッションや駆動方式によって厳密には加速力に変化は生じる。しかし、加速性能を判断する最大のヒントはトルクウエイトレシオといっていいだろう。

そこで、2022年に登場した新型モデルで最も加速力のよいクルマは何になるのであろうか。

今年は、トヨタから「ノア/ヴォクシー」「bZ4X」「シエンタ」「ハリアーPHEV」「クラウン・クロスオーバー」といった新型車が登場している。

日産からは、「フェアレディZ」「サクラ」「エクストレイル」「セレナ」、三菱は「eKクロスEV」。

ホンダから「ステップワゴン」「シビックe:HEV」「シビックタイプR」、マツダは「CX-60」、スバルは「ソルテラ」「クロストレック」、ダイハツは「ムーヴ・キャンバス」といった新型モデルが登場している。

これらのトルクウエイトレシオは、どのような数字となるのであろうか。

スポーツモデル加速力ナンバー1は?

まずはスポーツモデルから比較してみよう。

スポーツモデルとなるのは日産の「フェアレディZ」とホンダの「シビック・タイプR」だ。また、あわせて「シビックe:HEV」も比較してみよう。


ホンダ・シビック・タイプR

「フェアレディZ」は最高出力405ps、最大トルク475Nmの3L V6ターボ・エンジンを搭載する。車両重量は、最軽量グレードのスタンダードで1570kgだ。トルクウエイトレシオは3.3kg/Nmとなる。

そして「シビック・タイプR」は2Lのターボで、最高出力330ps、最大トルク420Nm。車両重量は1430kg。トルクウエイトレシオは3.4kg/Nm。

ちなみに「シビックe:HEV」の走行用モーターは、最高出力184ps、最大トルク315Nm。車両重量は1460kg。トルクウエイトレシオは4.63kg/Nmとなる。

通常のセダンと考えれば、これでも相当に優れた数値になるが、やはりスポーツ専用モデルと比べると、1段落ちるのは仕方ないだろう。

「フェアレディZ」と「シビック・タイプR」の2車のスペックを比較すると、若干ではあるがトルクウエイトレシオは「フェアレディZ」が勝っていたのだ。

SUV系の加速力ナンバー1は?

SUVでは、トヨタの「ハリアーPHEV」「クラウン・クロスオーバー」、日産の「エクストレイル」、マツダの「CX-60」、スバルの「クロストレック」が該当する。

ただし、残念ながら「ハリアーPHEV」と「クラウン・クロスオーバー」「エクストレイル」は2モーター式の4WDであり、システム総合出力は公表されているが、システム総合でのトルク値は不明だ。そのため参考値として、最高出力と車両重量のみを表示したい。


マツダCX-60 XDハイブリッド

「ハリアーPHEV」システム最高出力306ps、車両重量1950kg

「クラウン・クロスオーバーRS」システム最高出力349ps、車両重量1900kg

「エクストレイル」フロントモーター204ps、リアモーター136ps、車両重量1840kg 

「CX-60 XDハイブリッド」 最高出力254ps、最大トルク550Nm、車両重量1910kg(4WD)、トルクウエイトレシオ3.47kg/Nm

「クロストレック」最高出力145ps、最大トルク188Nm +モーター13.6ps、最大トルク65Nm、車両重量1590kg(4WD)/1540kg(FF)、トルクウエイトレシオ6.28kg/Nm(4WD)/6.08kg/Nm(2WD)

クラウン・クロスオーバーは大穴?

システム総合によるトルクが公表されていない「ハリアーPHEV」と「クラウン・クロスオーバー」「エクストレイル」の3台だが、「クラウン・クロスオーバー」と「エクストレイル」は、ともに前後のモータートルクを合計すると「クラウン・クロスオーバー」は461Nm、「エクストレイル」は525Nmとなる。

しかも、「クラウン・クロスオーバー」のRSの新しいハイブリッドシステムは、モーターに直結された2.4Lターボエンジン自体のトルクを追加することもできる。


トヨタ・クラウン・クロスオーバー

「ハリアーPHEV」「クラウン・クロスオーバー」「エクストレイル」の3台でいえば、「クラウン・クロスオーバー」が最も優れた加速力を秘めていることが推測できる。

また、「CX-60 XDハイブリッド」の3.47kg/Nmという数値は、大柄なSUVとしては非常に優れた数値といえるだろう。

ミニバンの加速力ナンバー1は?

2022年の新型ミニバンとなるのがトヨタの「ノア/ヴォクシー」「シエンタ」、ホンダの「ステップワゴン」、そして日産の「セレナ」だ。

トヨタのハイブリッドの場合、システム総合出力は公表されているが、システム総合のトルクが公表されないためトヨタはエンジン車のみとした。


トヨタ・ノア/日産セレナ/ホンダ・ステップワゴン    トヨタ/日産/ホンダ

「ノア/ヴォクシー」はガソリン車のFFで、最高出力170ps、最大トルク202Nm、車両重量が1600kg。トルクウエイトレシオは7.92kg/Nmとなる。

「シエンタ」はガソリン車のFFで、最高出力120ps、最大トルク145Nm、車両重量1270kg。トルクウエイトレシオは8.76kg/Nmだ。

「ステップワゴン」はガソリン車のFFで、最高出力150ps、最大トルク203Nm、車両重量1710kg。トルクウエイトレシオは8.4kg/Nmだ。

ハイブリッドは、モーターが最高出力184ps、最大トルク315Nm、車両重量1810kgで、トルクウエイトレシオが5.75kg/Nmとなる。

「セレナ」はガソリン車のFFで、最高出力150ps、最大トルク200Nm、車両重量1670kg。トルクウエイトレシオは8.35kg/Nmだ。

ハイブリッドは、モーターが最高出力163ps、最大トルク315Nm、車両重量1790kgで、トルクウエイトレシオは5.68kg/Nmとなる。

ガソリン車で比較すると、7.92kg/Nmの「ノア/ヴォクシー」が最も優れた数値だ。

そしてハイブリッドでは「ステップワゴン」と「セレナ」の比較では若干「セレナ」が勝っていた。

軽EVは高速合流もラクラク

2022年の注目モデルといえるのがEVであるトヨタの「bZ4X」とスバルの「ソルテラ」、そして日産の「サクラ」と三菱の「eKクロスEV」の4モデルだ。それぞれのスペックを並べると以下のようになる。

「bZ4X」はシステム総合の最高出力が203.9psで最大トルクが266Nmで、車両重量が2010kg。トルクウエイトレシオは7.56kg/Nmとなる。


日産の軽EV「サクラ」    安井宏充

「ソルテラ」も出力は「bZ4X」と同じだが、装備の違いで車両重量は2000kgとなり、トルクウエイトレシオは7.52kg/Nmと若干よい数値となる。

「サクラ」は軽自動車のため最高出力が規制値となる64psしかないが、最大トルクは195Nmもある。車両重量が1070kgなので、トルクウエイトレシオは5.49kg/Nmとなかなかの優れた数値だ。

「eKクロスEV」も出力は兄弟車である「サクラ」と同じだが、重量は1060kgと若干軽い。そのため、トルクウエイトレシオは5.43kg/Nmとなる。

ちなみに同じ軽自動車のダイハツの「ムーヴ・キャンバス」はエンジン車ということで、最高出力はターボの64psに最大トルク100Nm。車両重量が900kgなので、トルクウエイトレシオは9kg/Nmとなる。

同じ軽自動車でも「サクラ」「eKクロスEV」に対して「ムーヴ・キャンバス」のスペックに大きな差があるけれど、それは「ムーヴ・キャンバス」に非があるのではない。

「ムーヴ・キャンバス」の数値は、軽自動車としては標準的なもの。それだけEVである「サクラ」と「eKクロスEV」が抜きんでているのだ。

結果発表! 新型モデルナンバー1は?

それでは最後に、今回挙げたモデルの数字を優れた順に並べてみよう。

「フェアレディZ」3.3kg/Nm
「シビック・タイプR」3.4kg/Nm
「CX-60 XDハイブリッド」3.47kg/Nm
「シビックe:HEV」4.63kg/Nm
「eKクロスEV」5.43kg/Nm
「サクラ」5.49kg/Nm
「セレナ(ハイブリッド)」5.68kg/Nm 
「ステップワゴン(ハイブリッド)」5.75kg/Nm
「クロストレック(4WD)」6.28kg/Nm
「クロストレック(FF)」6.08kg/Nm
「ソルテラ」7.52kg/Nm
「bZ4X」7.56kg/Nm
「ノア/ヴォクシー(ガソリン車のFF)」7.92kg/Nm
「セレナ(ガソリン車のFF)」8.35kg/Nm
「ステップワゴン(ガソリン車のFF)」8.4kg/Nm
「シエンタ(ガソリン車のFF)」8.76kg/Nm
「ムーヴ・キャンバス」9kg/Nm


三菱eKクロスEV    宮澤佳久

こうして並べてみると、大型SUVである「CX-60」と軽EVである「サクラ」「eKクロスEV」が健闘。

また、ハイブリッドである「セレナ(ハイブリッド)」と「ステップワゴン(ハイブリッド)」も優れた数値となった。

どれも注目度の高いモデルは加速力にも光るものがあるのだろう。