AppleやGoogleが圧倒的多数の賛成で可決した「修理する権利」を認める法案に反対し施行を阻止しようとしている
近年発売されているスマートフォンやPCは、部品の入手が困難なことや回路図が公開されていないことから自力での修理やメーカー以外の修理業者に依頼することが難しくなっています。この状況を変えるべく「修理する権利」の確立を求める動きが世界中で活発になっており、2022年6月にはニューヨーク州議会で修理する権利を認める法案が可決しました。しかし、法案の可決から6カ月が経過した時点でも州知事による署名が行われていない現状が報告されています。
https://www.nysenate.gov/legislation/bills/2021/S4104
NY tech device repair bill shrank under lobbyists' influence
https://www.timesunion.com/news/article/Right-to-repair-tech-lobby-influence-17241026.php
Lobbyists have held up nation’s first right-to-repair bill in New York | Ars Technica
https://arstechnica.com/tech-policy/2022/12/right-to-repair-bill-passed-in-june-still-awaits-ny-governors-signature/
The Nation’s First Right to Repair Law Is Waiting for Kathy Hochul’s Signature
https://www.vice.com/en/article/93a8k3/the-nations-first-right-to-repair-law-is-waiting-for-kathy-hochuls-signature
2000年代に販売されていたPCや携帯デバイスは比較的分解が容易で、交換用のパーツさえ用意すればユーザーが手持ちの工具で分解して修理することができました。しかし、近年販売されているデバイスは分解のために特殊な工具が必要な場合が多く、ユーザー自身の手で修理を行うことは困難になっています。また、専門の修理業者に依頼した場合であっても、メーカーが部品や回路図を一般公開していないことから高度な修理が不可能な場合もあります。
上記のような状況を改善するべく、ユーザーに対して部品や回路図を公開して「修理する権利」を保護するように求める活動が世界中で活発化しています。修理する権利を求める法案も世界中で検討されており、ニューヨーク州議会では2022年6月に「デジタル電子製品を販売するすべてのメーカー」に対して「ユーザーと独立系修理業者に対するパーツや工具、修理マニュアルの提供」を義務付ける法案が可決しました。
広い範囲の電子機器を対象とした「修理する権利」を認める法案をニューヨーク州議会がアメリカで初めて可決 - GIGAZINE
ニューヨーク州議会で可決した法案は超党派の支持を受け、147対2という圧倒的多数の賛成によって可決しました。しかし、キャシー・ホウクル知事による署名は行われず、2022年10月に海外メディアのMotherboardがニューヨーク州に問い合わせた際には「ホウクル知事は法案を検討中です」と返答されたとのこと。さらに、2022年12月にArs Technicaがニューヨーク州に問い合わせた際も「ホウクル知事は法案を検討中です」という同様の答えが返ってきました。
修理する権利の推進団体「Repair Association」のゲイ・ゴードン・バーン事務局長によると、ホウクル知事の署名が遅れている理由は複数の企業によるロビー活動が影響しているとのこと。
そもそも、ニューヨーク州議会で修理する権利に関する法案が検討され始めた当初は自動車や農業機械、医療機器なども対象に含まれていましたが、企業のロビー活動の結果、対象がスマートフォンやPCなどの「デジタル電子製品」に限定されました。日刊紙のオールバニ・タイムズ・ユニオンは、AppleやMicrosoft、Google、HPといった当該法案の影響を受けるデジタル電子製品のメーカーがホウクル知事に署名を思いとどまるように働きかけていると報告しています。
当該法案は、2022年12月16日にホウクル知事に提出されており、ホウクル知事が30日以内に署名しない場合、拒否権を行使した扱いとなり、法案は再検討されることとなります。