今回のワールドカップの特徴のひとつに、アジア勢の健闘がある。

 決勝トーナメント進出を決めたのは、オーストラリアと日本。サウジアラビアとイランはグループリーグ突破こそならなかったが、前者はアルゼンチンから、後者はウェールズからそれぞれ勝ち点3を奪っている。

 そしてグループリーグ最終日、健闘目立つアジア勢のトリを務めたのが韓国だ。

 韓国は2試合を終えた時点で、1分け1敗の勝ち点1でグループ最下位。だが、最終戦でポルトガルに勝てば、もうひとつのウルグアイvsガーナの試合結果次第で、決勝トーナメント進出の可能性を残していた。

 しかも、すでに勝ち抜けが決まっているポルトガルは、最終戦では大きくメンバーを入れ替え、主力の多くをベンチに温存。運も味方につけていた。

 はたして、韓国はポルトガルに2−1の逆転勝利。勝ち点で並んだウルグアイを総得点差でかわして、アジア勢3カ国目となる決勝トーナメント進出を決めた。


ポルトガルを破って決勝トーナメント進出を決めた韓国

 後半アディショナルタイムに劇的な決勝ゴールを決めたのは、途中出場のFWファン・ヒチャンである。

 イングランド・プレミアリーグのウォルバーハンプトンでプレーする26歳のストライカーは、左ハムストリングにケガを抱え、この試合が今大会初出場。

「カタールに着いた時には、まだ痛みがあった」というが、「コーチングスタッフから、第3戦、そして決勝トーナメントに間に合わせればいいと言ってもらえた」。

 ケガからの回復に努めたファン・ヒチャンは、ついに巡ってきた出番で期待どおりの大仕事を成し遂げた。殊勲のヒーローが、上気した様子で語る。

「試合に出る時、チームメイトたちが『信じているぞ』と言ってくれた。最後は、ソン・フンミンからすばらしいパスが来たので、ラクに決めることができた」

 劇的な結末で最高の結果を手にした韓国。とはいえ、グループリーグ3試合を通じての試合内容はというと、あまりパッとしないものだった。

 ピッチ上の選手たちが有効な立ち位置をとることができず、ボールの動きにスムーズな流れとスピード感が生まれない。バランスを崩して穴を開けてしまうことを恐れているのか、繰り広げられるサッカーがとにかく硬直してしまっているのだ。

 ボールがまったく動かず、パスが少ないというわけではない。だが、その中身はというと、横パスを何本かつないでサイドに展開したら、あとは縦勝負。そんな単調な攻撃が繰り返されるばかりだった。

 選手同士で作るトライアングルをローテーションさせながら、相手のマークを外して敵陣深くに進入する。そんなシーンは皆無と言っていいだろう。

 昨季のプレミアリーグ得点王、FWソン・フンミンという際立つ武器も、効果的に生かされているようには見えなかった。

 今夏のE-1選手権で日本と対戦した際、韓国は横浜F・マリノス勢が奏でる美しいコンビネーションに翻弄されていたが、この硬直したサッカーでは必然の結果だっただろう。それは、ワールドカップという舞台でも、さして変わることはなかった。

 日韓のサッカーを比較すれば、両国の間には以前から選手の特長に明らかな違いがあった。

 小柄で俊敏性に長け、テクニックに優れた中盤の選手が多く出てくる日本に対し、体が大きく、屈強なストライカーやセンターバックに優れた選手が出てくる韓国。そうしたタイプの違いが、チームとして志向するサッカーの違いとなって表れているとも言えるが、それにしても、こんなサッカーをしていて大丈夫なのだろうかと、他人事ながら心配になるほどだ。

 日本が世界レベルで戦える力をつけるためには、アジア全体のレベルアップが必須。ワールドカップ予選やアジアカップなどが、高いレベルでしのぎを削る舞台になってこそ、日本の強化にもつながっていく。

 にもかかわらず、アジアサッカーの中心的役割を担うはずの韓国が、こんなにも退屈なサッカーをしていることは、日本にとっても、他のアジア諸国にとっても、歓迎すべき状況とは思えない。

 ファン・ヒチャンやソン・フンミンら、うらやむばかりのタレントをもってすれば、もっとダイナミックで見応えのあるサッカーができるはずである。