解説者5人が語るカタールW杯プレビュー/
日本代表のキーマン編

カタールW杯に挑む日本代表。ドイツ、スペインといった強豪と同組となったグループリーグを勝ち抜いて、目指すはベスト8入り。その実現のためには、メンバー入りした選手すべての活躍が期待されるが、なかでもチームを引っ張り、勝利へと導いてくれる奮闘が見込まれる選手は誰か。5人の解説者に話を聞いた――。


5人の解説者のうち、4人がキーマンに挙げた鎌田大地

日本躍進のカギを握っている3人

木村和司氏
◆キーマン(期待の選手)=三笘薫、鎌田大地、久保建英

 期待する選手は、三笘薫。そして、調子がいい鎌田大地に、久保建英。

 三笘はW杯でやってくれそうな気がする。あのドリブルは、世界でも必ず通用するはず。何よりボールを持つ姿勢がいい。ボールの置きどころもいいから、視野が確保できている。それゆえ、対峙する相手の体重移動を見れる、というのが大きい。その辺りはヨハン・クライフを彷彿とさせる。

 鎌田は何事にも動じない姿勢がいい。さらに、体がしっかりして、強くなっている。そのため、相手に厳しく来られても倒れないし、前線でボールをキープすることができる。また、最近は得点もとれている。その分、彼への期待は一段と増している。

 久保も海外でもまれて、だいぶ体が強くなってきた。一時、調子を落としている時期もあったが、今はかなりよくなってきた。右、左、中央とどこでも使えるのもいい。

 この3人がどれだけ活躍できるか。それが、日本躍進のカギを握っていると思う。

2人のボールを運べる選手が重要になる

福西崇史氏
◆キーマン(期待の選手)=鎌田大地、守田英正

 2人は、ボールを運ぶ選手だからというのが理由だ。

 日本は相手との力関係で守備はせざるを得ない。相手に押し込まれるのはしょうがない部分はあるが、それでも攻撃に行く時に前線のスピードのある選手を生かしたい。その時にボールを運べる選手が重要になる。

 押し込まれて守ったあと、そこから中長距離のパスを前線やサイドへ、というのはやはり難しい。鎌田や守田が近くでボールを受けて、相手のプレスをかわしながらボールを前に運んでいったうえで、スピードのある選手へパスを出す。こうして相手のブロックを多少は崩してからでないと、相手の最終ラインの突破は難しくなってくる。

 2人が運ぶ回数が多ければ多いほど、試合では効果的だと思う。 

クレバーなキャプテンシーに期待

名良橋晃氏
◆キーマン(期待の選手)=吉田麻也

 失点ゼロであれば、勝ち点はとれるわけで、ここは、吉田麻也選手しかいないと思う。

 ぜひ、吉田選手を中心に攻撃的な守備をしてほしい。相手の攻撃を受けて、ゴール前を固めるだけで守りきれる相手ではない。だから、前に行ける時はラインを上げて、前重心で守る時間帯も作らないといけない。

 行くところと行かないところ。そこの判断とコーチングが大切で、そこは吉田選手のリーダーシップにかかっているだろう。

 ワールドカップ3大会連続出場となる、経験値は頼りになる。ピッチ外のところも含めて、クレバーなキャプテンシーでチームをまとめてほしい。

 あとは攻撃面。セットプレーの高さが十分にあるので、そこで点をとってくれることも期待している。

縦のライン3人の活躍が不可欠

福田正博氏
◆キーマン(期待の選手)=吉田麻也、遠藤航、鎌田大地

 ゲーム全体の流れを考えると、しっかりとチームを安定させて戦うには、吉田麻也、遠藤航、鎌田大地の3人の縦のラインの活躍が重要だろう。

 特に守備をする時間が長いと想定できるので、吉田と遠藤のプレーはより大切になってくる。吉田は今季開幕から所属チームの成績が悪く苦しんだが、中断前の数試合は復調傾向で悪い状態ではないと思う。

 そうは言っても、年齢面も含めていちばんいい時の吉田ではないので、そうした状況でどれだけ頑張れるかだ。遠藤はシュツットガルトの試合で脳震盪を起こして心配されたが、無事代表チームに合流してよかったと思っている。鎌田は今季開幕からずっと好調を維持している。どこのポジションをやるかは注目だが、期待できるだろう。

 3人は替えの効かない選手たちで、タイトな大会スケジュールではあるが、ほぼフル出場が求められるだろう。ターンオーバーの話題が出ているが、それは優勝を狙う強豪国の話。日本も選手層が厚くなったとはいえ、まだそこまでではない。

 前線の選手の入れ替えはあるだろうが、やはり一戦必勝を積み上げていく選手起用が続くのではないか。そうなると3人の頑張りは何よりも大切だ。

日本の強みとなる中盤の3人がキーマン

風間八宏氏
◆キーマン(期待の選手)=遠藤航、守田英正、鎌田大地

 日本の強みは中盤にあると思うので、いかに中盤を生かしたサッカーをするかがカギになると見ている。そうなると、コンディションが心配なところはあるが、やはり遠藤航、守田英正、鎌田大地の3人がキーマンになるのではないか。

 この3人はボールをしっかり持てるし、ボールを相手から奪うこともできるうえ、ゴールを決める能力も兼ね備えている。特に最近の鎌田は得点感覚に磨きをかけているので、攻撃面ではいかにして彼の能力を発揮させる形を作れるかが、ポイントになってくるだろう。

 たとえば、伊東純也のスピードは日本の大きな武器だが、単独では限界があるし、前線でポイントを作ってから展開しなければ、その威力も半減してしまう。

 要するに、1人ではなく、遠藤、守田、鎌田の3人全員がボールにたくさん触れるようなサッカーをしないと、難しい戦いを強いられるということだ。逆に言えば、3人の力を最大限に生かすことができれば、守備ではセンターバックを、攻撃では1トップを、いろいろな形で補うことができる。とにかく中盤の勝負に徹することが重要だと思う。