日本ではトラックのメーカーとして知られるいすゞ

日本の自動車メーカー『いすゞ』は、キャブオーバートラックの『エルフ』をはじめとした主にトラックやバスといった商用車を製造することで知られています。

エルフのコマーシャルソングとして2003年に制作された『いすゞのトラック』は、数あるコマーシャルソングの中でも知名度が高く、BiSHのアイナ・ジ・エンドさんやHOUND DOGの大友康平さんによるアレンジバージョンも存在。着信音やカラオケにも配信され、誰もが一度は聞いたことがあると言われる有名曲となりました。

そのため、日本国内においては「いすゞはトラックのメーカー」として広く認知されています。しかし、過去には日本国内で乗用車も製造しており、『ベレット』や『117クーペ』、『ジェミニ』など、名車も数多く輩出していました。

かつては名車を輩出も…2002年に日本の乗用車市場を撤退

いすゞの乗用車生産は、1953年にイギリスの自動車メーカーと提携し『ヒルマンミンクス』をノックダウン生産したことから始まります。

1962年にいすゞ初の自社開発乗用車として6人乗りのミドルサイズセダンおよびライトバン『ベレル』を発売するものの、乗用車メーカーとしての経験が不足していたため販売は低迷。

しかし、このあと1963年に登場した小型のセダン『ベレット』は先進的な技術を搭載した軽量・コンパクトなモデルとして成功を収め、1960年代を代表する日本車のひとつとなりました。

その後も日本国内での乗用車事業は続いていたものの、徐々に乗用車部門は不振に陥り、1993年に一部を除いて乗用車の自社開発および生産から撤退。以降はホンダなどからOEM供給を受けて販売を続けましたが、2002年にほぼすべての乗用車販売から撤退し、以降、日本国内ではトラックやバスなど商用車を主力商品として販売しています。

タイでピックアップトラック『D-MAX』を製造・販売

日本ではトラックやバスを主力商品に据えているいすゞですが、いすゞがタイで製造している5人乗りのピックアップトラック『D-MAX』は、日本国外、特にタイでは自家用車として高い人気を誇っており、タイのほかオーストラリアや北米等でも販売されています。

2002年にゼネラルモーターズと共同開発した世界戦略車として登場し、2005年にはタイで年間過去最高販売台数となる163,153台を売り上げ、数々の記録を獲得。2011年に2代目、2019年に3代目が登場しましたが、いずれも大ヒットを記録する人気車種となりました。

現在販売中の3代目D-MAXは、1.9リッターのディーゼルターボエンジンと新開発の3.0リッターのディーゼルターボエンジンの2つのパワートレインを展開し、4ドアと2ドア2つのボディタイプをラインアップ。

3代目D-MAXからはマツダへのOEM供給も行っていて、マツダはD-MAXをベースにフロント部のデザインを変更した『BT-50』をオーストラリアやタイで販売しています。

タイではトヨタ ハイラックスを抑え乗用車販売台数1位

D-MAXはタイの市場においてトヨタ ハイラックスと並ぶ人気車種となっていて、2022年度は一般的な乗用車も含めた販売台数の中でハイラックスを抑え1位を継続中です。

いすゞは世界100カ国以上でD-MAXを販売していて、今後もさらにグローバル展開を広げていく狙いだとしているものの、乗用車事業から撤退している日本への導入については語られていません。

しかし、モーターショーイベントなどで実車やカスタムカーが展示されるなど、日本でD-MAXの姿を見る機会はまったく無いわけではなく、D-MAXの日本導入を求めるファンも一部にはいるようです。