ひと昔前は、家の庭先や公園で見かけることも多かった焚き火。最近ではあまり行われなくなったものの、ソロキャンプやグランピングなどのレジャーシーンでは根強い人気を得ています。
しかし、気になるのは「焚き火は違法か適法か」という点です。今回は、焚き火に関連する法律的な側面について詳しく解説します。

焚き火への風当たりが強くなっている

以前は「落ち葉焚き」などが当たり前のように行われていましたが、世相の変化とともに、年々、見かけることが少なくなっています。

野焼き禁止の流れ

農業者が行う野焼きは例外的に認められているが、野焼きは原則的に禁止されている

野焼き(野外焼却)とは、主に「法律で定められた基準を満たす焼却設備を用いずに、一般・産業廃棄物を焼却する行為」を指します。ブロックを用いた簡単な焼却炉やドラム缶を使い、庭や空き地で行うことが多いようです。
野焼きは周囲に煙・悪臭被害をもたらし、ダイオキシンなどの有害物質を排出するとして、全国各地で問題になっています。さらに、野焼きが原因の火災も多数報告されており、その危険性も度々指摘されています。

2001年には廃棄物処理法が改正され、「野焼き禁止」を明確に規定し、罰則も設けられました。
ただし、農業・林業・漁業を行ううえでやむを得ない野焼きや、「どんと焼き」など風俗慣習上・宗教上の野焼きは例外的に認められています。

焚き火と野焼きの違い
混同されがちな焚き火と野焼きですが、法律上の定義には違いがあります。

まず、庭での焚き火は「日常生活を営む上で通常行われる廃棄物の焼却であって、軽微なもの」とされています。「落ち葉焚き」など一般的にイメージされるような軽微な焼却であり、前項で紹介した廃棄物処理法でも例外的に許可されている行為です。

ただし、特別保護地区など、場所によっては事前の申請が必要な場合があります。
一方、野焼きは産業廃棄物や一般廃棄物を野外で焼却することです。廃棄物処理法の処理基準に則らない焼却方法であるため、原則的に禁止されています。

焚き火に関係のある法律

焚き火に関連する法律にはどのようなものがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

消防法
消防法の第三条には、次の規定があります。

第三条  消防長、消防署長その他の消防吏員は、屋外において火災の予防に危険であると認める行為者又は火災の予防に危険であると認める物件若しくは消火、避難その他の消防の活動に支障になると認める物件の所有者、管理者若しくは占有者で権原を有する者に対して、次に掲げる必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
一 火遊び、喫煙、たき火、火を使用する設備若しくは器具(物件に限る)又はその使用に際し火災の発生のおそれのある設備若しくは器具(物件に限る)の使用その他これらに類する行為の禁止、停止若しくは制限又はこれらの行為を行う場合の消火準備

出典:e-gov法令検索 消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)

大まかには「消防署の人が危ないと判断したら、焚き火をやめさせることができる」という規定であり、焚き火そのものを禁止するものではありません。

廃棄物処理法
廃棄物処理法の第十六条には、次の規定があります。

第十六条の二 何人も、次に掲げる方法による場合を除き、廃棄物を焼却してはならない。
一 一般廃棄物処理基準、特別管理一般廃棄物処理基準、産業廃棄物処理基準又は特別管理産業廃棄物処理基準に従って行う廃棄物の焼却
二 他の法令又はこれに基づく処分により行う廃棄物の焼却
三 公益上若しくは社会の慣習上やむを得ない廃棄物の焼却又は周辺地域の生活環境に与える影響が軽微である廃棄物の焼却として政令で定めるもの

出典:e-gov法令検索 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号)

この規定では、焚き火は「周辺地域の生活環境に与える影響が軽微な廃棄物の焼却」として認められています。

条例
各自治体では火災予防条例が定められており、焚き火に関連する規則もあります。一例として、東京都の火災予防条例第六十条を見てみましょう。

第六十条 次に掲げる行為をしようとする者は、あらかじめ、その日時、場所その他当該行為に関して消防活動上必要な事項を消防署長に届け出なければならない。ただし、第五十五条の三の九第一項又は第五十五条の三の十第一項の計画を提出した場合は、この限りでない。
一 火災と紛らわしい煙又は火炎を発するおそれのある行為

出典:東京都例規集データベース 火災予防条例

都条例によると、焚き火は「火災と紛らわしい煙又は火炎を発するおそれのある行為」と見なされる可能性があります。ただし、焚き火そのものを禁止する規定ではなく、消防署への届け出が必要だとする内容です。
こうした条例は、東京都に限らず各自治体で定められています。

庭での焚き火は違法ではないが実質的に困難

結論からいえば、庭での焚き火を違法とする明確な条文はありません。しかし、実際は気軽に焚火をすることは困難なのが現状です。

消防署への届出が必要

焚き火をするためには事前に消防署への届け出が必要

前章で紹介したように、焚き火をする際には、各市区町村が定める火災予防条例に従う必要があります。
焚き火は「火災とまぎらわしい煙又は火炎を発するおそれのある行為」に該当することから、事前に消防署に届出をしなければなりません。誤報により、消防隊が出動することを避けるために、事前に管轄の消防署に知らせておきます。
なお、この届出はあくまで消防署に対するものであり、その他法令の許可を申請するものではありません。届出をしていても、場合によっては法令違反と見なされる可能性があるので注意しましょう。

近隣からの苦情が予想される

住宅地での焚き火は近隣からの苦情が予想される

消防署への届出を済ませたうえで焚き火を行っていても、近隣から苦情が寄せられることもあります。
焚き火は煙・臭いが発生することも多いため、「洗濯物に臭いがつく」「煙や臭いが家に入ってくる」など、周辺住民に不快感を与える場合があるのです。
苦情が出た際は、規定に反していなくても行政の指導対象となります。多くの場合は焚き火の中止を求められるため、気軽に焚火を楽しむのは難しいのが現状です。

火災への最大限の予防措置が求められる
焚き火をする際には、火災への最大限の予防措置が求められます。万が一、延焼し広範囲の火災につながってしまえば、他者の所有物や生命に関わる重大な被害を及ぼしかねません。
焚き火をする際には、火災予防は当然行うべき取り組みであることは念頭に置いておきましょう。焚き火をするときには、以下のような予防措置が求められています。

・可燃性、引火性、爆発性のある物のそばでは火を焚かない
・他に燃え移る心配のない場所で焚き火を行う
・消火に必要な器具を持参のうえで焚き火を行う
・焚き火のそばには常に監視人を置く
・焚き火の後は完全に消火し、残灰などの処理も完全に行う

まとめ

焚き火は違法ではありませんが、消防署への届出や火災予防措置など、事前の準備が求められます。また、苦情が出た時点で焚き火を中止しなければならない場合も多いため、市街地での焚き火は実質的に困難だといえるでしょう。

焚き火を楽しみたい場合は、キャンプ場など焚き火ができる場所で、安全に節度を持って行うようにしましょう。