気がつくとものが増えがちなキッチン回り。調理器具などの収納に困っている方も多いのではないでしょうか? とくに家族の人数や形態が変わり始める大人世代は、見直すタイミングかもしれません。そこで、50代・60代の暮らし上手さんが実践した、「キッチン」で手放したものや、もたないためのテクニックを紹介します。ご自宅のキッチンにぜひ活用してみてください。

50代から厳選すべきキッチングッズ。捨てると家事も気持ちも楽に

人生が100年だとすると、折り返しに当たるのが50代。キッチン回りを整理整頓することで、料理の手間が減ることはもちろん、暮らしやすくなりますよ。

【写真】余計なものがなく、すっきりした筆子さんのキッチン

●ミニマリストも実践!厳選すべきキッチングッズ

「老後に備えてものの数を減らし、小さな暮らしに切り替えるのにちょうどいいタイミングです」と話すのは、60代ミニマリストでカナダ在住のブロガー・筆子さん。

ものがあふれる暮らしから、ものを減らす暮らしに切り替えて30年以上。現在もものとのつき合い方について発信する筆子さんに、自身の経験から実感する、50歳をすぎたら見直すべき「キッチンでたまりがちなもの」について教えていただきました。

●多すぎるマグカップやコップ

まず、厳選すべきはマグカップ。50代になると、子どもが巣立ち始めるので、家族の人数は減ります。そんなとき、たくさんの食器は不要です。多すぎる食器は皆、見直すべきですが、とくに増えがちなマグやコップから、整理を始めましょう。

マグやコップはお土産やプレゼント、粗品でもらうことも多いもの。よく使う、お気に入りのものだけ残して、めったに使わないものは、処分がおすすめです。

●重い食器や調理器具

これからは、だんだんと体力がなくなっていくので、重い食器や、重すぎる調理雑貨は積極的に捨てましょう。

おしゃれな鋳物の鍋が人気ですが、見た目よりも、実用性を重視したほうが、心身ともに軽やかな生活になります。

●だぶっているツールすべて

しゃもじ、お玉、菜箸、フライ返しなどの調理ツールも見直しましょう。

同じ用途のものを何個ももっているせいで、引き出しの中が満杯になることがあります。たくさんあると、探しにくいし、取り出しにくいし、そもそも引き出しが開きません。同じものを何個も持つと管理の手間が増えるだけです。

普段よく使うツールは「自分が使いやすいと思っている」ツールです。あまり使わないツールは手放し、少数精鋭のツールを使って調理をしましょう。

50代から水きりカゴを使わない生活に。メリットと便利な代用品

便利ではあるものの、キッチンの作業スペースで場所を取りがちな「水きりカゴ」。筆子さんは、6年半前に手放したといいます。必要性を見直した理由と、なくして得したメリットとは?

●水きりカゴを捨てた理由。じゃまだし手入れが大変

以前は水きりカゴを使っていました。家庭をもって最初に使っていたのは、白いプラスチック製の水きりカゴ(ディッシュラック)で、皿を立てる仕切りが並んだ、よくあるタイプです。この水きりカゴ、けっこう大きくて、わが家の狭い台所のカウンターを占領するし、白いので汚れが目立つし、仕きりがヌメヌメしがちなのが難点でした。

プラスチックが劣化した際に買い替えた金属製のラックは、プラスチック製のものよりも、きれいに保てましたが、流しに渡して、皿を乾かしておくと、見た目がうるさいし、実際に流しを使うときにじゃまなので、あるとき、使うのをやめました。

●水きりカゴの代わりに使っているもの

わが家にはディッシュウォッシャー(食器洗い乾燥機)はないので、洗った食器を置く場所に、なにか敷くものが必要です。初めはコットン製のランチョンマットを敷いていましたが、今は、スポンジワイプを使っています。現在使っているのは日本のアマゾンで購入したものです。

スポンジワイプはコットンとセルロースからできているドイツ生まれのふきんです。見た目は紙と布の中間のような感じで、紙に近いふきん、と言えるかもしれません。

乾いているときはボール紙のようですが、少し水で湿らすと、吸水性抜群のふきんになります。100%天然繊維なので、捨てても、やがては土に還る環境にもやさしい商品です。

スポンジワイプのメリットは、

1.吸水性抜群
2.毛羽立たない
3.すぐに乾く

この3つで、衛生的に使えるふきんです。大きめのスポンジワイプをちょっと湿らせて、流しの横に敷き、その上に洗ったものを置いています。

●水きりカゴを使わない生活のメリット4つ

また、水きりカゴをなくすメリットもたくさんあります。

メリットその1:カウンターが広くなる

メリットその2:メンテナンスがラク

メリットその3:食器の片づけが進む

メリットその4:水きりカゴ選びに悩まなくてすむ

子どもたちが巣立ってしまい、あまり食器を使わなくなったのなら、水きりカゴを手放した方が、生活しやすくなります。また、食洗機を使っているのなら、水きりカゴは不用でしょう。

気になっている方はいきなり捨てず、まずは使わないで様子をみるのはどうでしょうか? 台所がスッキリしますよ。

60代、これからは小さく暮らす。キッチンで捨てたもの・残したもの

キッチン道具や器、生活雑貨など、デザイン・機能ともに優れた商品を見つけ出す名人・石黒智子さん。彼女の著書『60歳からのほどよい暮らし 毎日を小さく豊かにすごす34の工夫と発見』(PHP研究所)より、年齢を重ねても使いやすいキッチンの工夫をご紹介します。

●60代、夫婦二人の暮らしを楽しむキッチンの工夫

39年前に、現在の家を建てたという石黒さん。

「当時のシステムキッチンは[主婦の城][女の城]と位置づけられていて、男子厨房に入らず、と今では考えられないことを男はおろか、女も当たり前だと発言していました。夫婦が同時に立つということは想定外でした」

そのため、家族はもちろん来客や子どもの友達、だれもが料理を楽しめるキッチンは自分でつくるしかなかったそう。スケッチを自分で描いてシステムキッチンをオーダーし、コンロやシンクの位置など、快適さにこだわりました。

●キッチンアイテムは、とにかく見えるように

そんな石黒さんが65歳を過ぎてから心がけているのは、「つるせるものはつるす。磁石にくっつくものはくっつける」こと。とにかく、見えるようにすることが大切だといいます。

たとえば、古くて固くなったステンレスピンチはキッチン収納にピッタリのデザイン。しっかりつかんで落ちません。ビーラーやマッシュルームブラシなど、磁石にくっつくものはくっつけるのが基本です。

●道具を小さくすると、キッチンがゆったり広く感じる

息子が独立し、夫婦二人暮らしになったことで使う道具も小さくなったという石黒さん。
今は、鍋は14cmと18cm、アルミフライパンは20cmと25cm。鉄フライパンは22cmのものを使っています。

食器も、石黒さんが年齢を重ねて見直したもののひとつ。持ったときの“重さ”に、歳をとったことを実感させられたそう。彼女の食器たちも小さく、軽いものに。

道具を小さくすると、キッチンはゆったり広く感じますよ。

50代で「手放してラクになった」台所用品

便利だと思って買ったキッチングッズも、それがキッチンを狭くしていたり、逆に面倒を生む原因になっていることがあります。ライフオーガナイザー・下村志保美さんが感じた、なくてもよかった、手放してラクになったキッチングッズとは?

●炊飯器

数年前に炊飯器が壊れたとき、試しに圧力鍋で炊いてみたら短時間でふっくらおいしいご飯が炊き上がりました。

炊飯器を買おう、買わなくちゃ…と思っている間に鍋炊飯に慣れてしまって、慣れてしまえば炊飯器と違って内ブタを洗う手間もありませんし、なにより炊飯器ひとつ分キッチンにスペースができます! 現在は圧力鍋でなく、もっと洗う手間がラクになる普通のお鍋で炊いています。

●オーブントースター

パンをトーストしたりグラタンを温めたり、オーブンを使わなくても手軽にできるオーブントースターは必須のアイテムと思っていました。

でもじつはフライパンでもトーストはできますし、魚焼きグリルでグラタンも揚げ物も温めることができます。私の生活には、オーブントースターじゃないとできないことがないことに気がつきました。

●あえて残して使っているものは?

ものを少なくするだけではなく、一方で残して使用するキッチングッズもあります。

千切りキャベツがラクにできるスライサーやサラダスピナー、栗の皮をむくだけの皮むき器など、「それ本当に必要?」と片づけのプロ仲間にクスッと笑われるようなものも。

調理中に便利なキッチンバサミは3つ、無印良品のシリコンスプーンも3つ…と自分が本当に便利だなと思うものはそろえ、活用しています。

50代の「もたない暮らし」。キッチンになくても問題なかったもの

「便利グッズをあれこれ買うことはせず、まず代用を考えてなるべくものは使い回すようにしています」と話すのは、整理収納コンサルタントの須藤昌子さん。

そんな彼女に、キッチンで実践している代用例を教えていただきました。

●料理用バットがなくてもOK。お皿で代用すればいい

料理用バットは揚げ物の衣をつけたり、切った食材を一時的においておくなど、あればなにかと便利に使えるアイテム。でも、須藤さんは持っていません。

「お皿があれば十分。揚げ物をつくるときは、深さのあるボウル型のお皿に卵液、小麦粉、パン粉を入れて作業しています」

●計量スプーンは2本だけ。計ってそのまま食卓に出せるデザインを

須藤さんが調味料の計量に使っているのは、ステンレスの計量スプーン。

「容量ごとにいくつも持つのではなく、大さじと小さじの1本ずつだけです。通常のスプーンとは違ってもちろん目盛りがついているし、注ぎやすい形状になっています」

ステンレスを選んだのは、におい移りしにくく、このまま食卓に出しても違和感のない高級感もプラスしてくれるから。須藤さん宅では計量、とりわけ、ドレッシングなどを食卓で注ぐなど、このスプーンで何役もこなしているそう!

須藤さんによると、料理好きの人、下ごしらえやつくりおきをよくする人は調理器具をたくさん持っているケースが多いそう…。

「なにかを持つことで収納スペースは狭くなり、お手入れする手間もかかります。当たり前に持っているものが本当に必要かどうか考えてみれば、意外となくても大丈夫! と思えるもの。スパッとなくしてみると、今までかけてきた手間の多さに気づくかもしれません」

須藤さんのアイデア、ぜひ参考にしてみては?

●脱ストック買い・つくりおき。50代からの冷蔵庫

年齢とともに家族構成や食べる量なども変化し、それとともに冷蔵庫の使い方も変わってきます。50代ブロガーの中道あんさんが、自宅の冷蔵庫の管理法を公開してくれました。

●冷蔵庫はムダをつくらず、家事をラクにする

わが家では、食材や調味料、粉類、紅茶、コーヒー豆を冷蔵庫で管理しています。

基本、粉ものは常温で多湿をさけて保存するものですが、頻繁に使うものでもないので、虫や粉ダニが入り込まない冷蔵庫に保存しています。乾物用の保管棚のスペースも小さいので、保管しても大丈夫なものは冷蔵庫にいれています。

ただ、冷蔵庫に入れっぱなしだと、見た目がどうにもなっていないので、つい放置しがちです。だから調味料や食品などは、よく使うものしか購入しないことにしています。

●掃除の手間がなくなる保存法

今は、ネットを利用して牛肉と豚肉はだいたい1か月分をまとめ買いしています。たりなくなれば、近所のお肉屋さんで買いたすようにしています。

週に1度、野菜と果物は合わせて8種類宅配してもらっています。卵10個と豆腐、納豆、鶏もも肉も一緒に届けられます。それを冷蔵庫に保管して1週間で食べきるようにしています。

外食が続いたり、旅行に出かけるときは、翌週分をお休みするなどして調整しています。

野菜室に詰め込むと食べ忘れにもなるので、お店でもらう紙袋を庫内の高さに合わせて切りそろえ、大小の収納ケースをつくっています。ケースの大きさに合わせて野菜を保存しています。こうすると、野菜室の奥からしなびたキュウリを発見した、なんてことはありません。しかも紙袋に野菜カスなどで汚れてきたら、新しく取り返ればいいので掃除の手間が必要ありません。

食品をムダにしないことは環境にも良いことですし、お財布にも優しく節約にもつながります。