53年前の9月29日、旧北陸本線の筒石駅が、トンネル内に移転開業しました。

もともとは地上の駅だった


トンネルの奥深くにある筒石駅(乗りものニュース編集部撮影)。

 今から53年前の1969年9月29日、旧北陸本線(現:えちごトキめき鉄道日本海ひすいライン)の筒石駅が、現在の場所に移転開業しました。

 筒石駅は上越線の土合駅のように、長大トンネルの途中に設置されています。太陽光が一切入らず、必要最小限の照明があるのみ。ベンチなど待合スペースは、ホームからドアを隔てたトンネル外の通路に確保されています。ホームから地表へは約300段の階段が続き、苔生して配管が張り巡らされた円形通路は、まるで異世界のような趣きです。

 トンネル断面が小さく、ホーム1本分しか確保できないため、上下線のホームは互い違いにズレて配置されています。トンネル断面自体も、ホームとホームの間の部分で「横ズレ」してくっついている不思議な光景です。

 もともと筒石駅は、北陸本線の延伸とともに、1912年に開業。海沿いのルートでしたが、地盤が弱く変動著しいという問題を抱えていました。1963年の地滑りで通過列車が被災したのをきっかけに、長さ11353mのトンネルを建設して内陸側へ移転する計画が進められます。筒石駅は当初廃止される予定でしたが、地域住民の強い反発にあい、工事用斜坑を利用してトンネル内に移設駅を設置することとなりました。

 階段を上り駅舎を出ると、そこは海抜60mの斜面上。そこから海沿いの集落へは、急坂を下りていきます。途中には、北陸自動車道の高架橋が頭上をまたいでいます。眼下には雄大な日本海を遥か見渡すことができます。