東京メトロ銀座線の渋谷駅(撮影:尾形文繁)

春に実施するのがほとんどのダイヤ改正を、夏に行うといえば驚く人が大半なのではないか。8月27日、東京メトロは銀座線・丸ノ内線・東西線・千代田線でダイヤ改正を行った。

ダイヤ改正はほかの鉄道各社とタイミングを合わせて行うのが一般的だ。新路線の開業に伴うケースなどを除けば、同じ路線で同年中に何度も実施することも少ない。ダイヤ改正は準備に時間がかかるためだ。しかし今回の各線は今年3月に実施したばかりで、利用状況を見て再度の改正に踏み切った。

昼の銀座線が大幅減

丸ノ内線は、方南町支線の3両編成が引退し、全列車6両編成になるなどの変化があった。本数の削減もあったが、多くが1時間あたり1本削減といった程度だった。東西線や千代田線は、他線に直通しない列車など一部を少し減らした程度である。

今回の唐突ともいえるダイヤ改正で注目されたのは、銀座線の大胆な本数削減である。平日朝は、7時台の渋谷方面行きを27本から23本に、浅草方面行きを20本から18本に削減。8時台は渋谷方面行きが30本から25本、浅草方面行きが30本から26本に減った。

夕ラッシュ時も、17時台の渋谷方面行きが2本減って24本、浅草方面行きが3本減って24本に。18時台の渋谷方面行きも2本減の25本、浅草方面行きが1本減の25本になった(時間帯は渋谷方面行きが溜池山王、浅草方面行きが上野広小路の発車時刻基準)。

さらに大胆に減っているのは日中で、平日10〜16時、土・休日8〜20時の時間帯は渋谷方面行き・浅草方面行きを1時間当たり18本から12本に削減し、3〜4分間隔から5分間隔になった。この春の改正までは、2〜3分に1本だったのにと思う人も多いはずだ。こんなに減らして大丈夫なのか? 改正前と改正後に乗車して比較してみた。

銀座線は、いつ乗っても混雑している印象がある。8月10日、渋谷14時31分発の列車に乗ってみた。2号車に乗車する。発車時点で空席はあるものの、あえて座らない乗客も多い。赤坂見附から混雑が激しくなり、立客を含めた定員近くに達した。

虎ノ門からは1駅に1両ずつ各車両をチェックした。駅停車時にホームへ出て1号車へと移る。車内が混雑していて連結部を渡って移動するのが困難だったからだ。新橋・銀座ともなると立客多数、しかし3号車は空席はなくてもそれなりの空間があり、4号車・5号車はある程度の立客がいた。ところが浅草寄りの6号車まで行くと、降車の多い神田を過ぎていたこともあってか、空席も目立った。


壁画が描かれた銀座線の銀座駅ホーム(撮影:尾形文繁)

今度は浅草から15時13分発の列車に乗った。発車時点で割と混雑しており、立客もいたが、上野で多くが降りていく。日本橋を出て、今度は6号車から車内チェック。6号車は立客がいたが車内の移動も楽であり、5号車へと連結部を通って移動できた。5号車は立客も含め乗車率80%程度だったが、4号車は50%程度で通路が見通せた。3号車から1号車までは車内をスムーズに移動できる程度だった。

「本数削減」判断の理由は何か

コロナ禍は今も続いており、列車は窓を開けて換気している。そんな中で、混み合う路線ではさらに「密」になりそうな列車本数の削減を行うのはなぜか。実際に銀座線に乗ったうえで抱いた印象も含め、ダイヤ改正前に東京メトロに問い合わせてみた。

東京メトロによると、利用は一部回復のきざしがあるものの、コロナ前と比較して現時点では十分な回復が見込めないため、その状況にあわせて運転本数を見直したという。根拠となるデータも取得しており、混雑率は列車混雑計測システムから算出しているとのことだ。

これはホーム端に設置されたデプスカメラから得られた画像を用いて人工知能が算出するデータ、車両の応荷重データ、改札機通過データを統合して混雑率を算出するシステムで、全路線全時間帯の混雑率を確認している。ダイヤ改正後も各路線の混雑状況は注視し、利用状況を踏まえて適宜改正を行うとのことだ。

また東京メトロは、「東京メトロmy!アプリ」でリアルタイムの混雑状況を配信し、比較的空いた号車を選んで乗車できるようにもしている。確かに、銀座線では1号車と6号車が比較的空いている。

ではダイヤ改正の銀座線はどうなったのか? 日中が5分間隔になってからの平日8月31日に、再度確認してみた。

14時14分に渋谷を発車したときは、改正前に乗ったときよりも空いていた。しかしその後立客が増え、外苑前でどっと降りる。赤坂見附で再び多く乗車。虎ノ門から各車両をチェックすると、6号車以外は平均的に混んでいる印象だ。駅での乗客の動きを見ると、以前よりも列車に乗るのに手間取っている。乗車率でいえば100%は確実といったところか。しかし神田を過ぎるとやはり空く。


銀座線1000系特別仕様車の車内(撮影:尾形文繁)

田原町では終点の浅草で2番線に着くとの案内があった。同駅は1番線着だと都営浅草線に乗り換えがしやすいため、都営浅草線に乗り換える人は次の列車にと案内される。しかし5分間隔だと以前より待たされることになる。

浅草からは14時59分発に乗る。神田から立客が現れるも、空いている。日本橋から車内をチェックする。浅草行きに比べて混雑はゆるいものの、銀座・新橋を経て車内は混んでくる。乗車率は改正前よりも高く感じられ、車内をスムーズに移動できなかった。

本数が再び増える日は来るか?

改正前と改正後では、銀座線は本数が減った分、やはり混雑率が若干高くなったように感じられた。


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ただ、乗客の行動を見ると数駅で降りる人が多く、立客による混雑はあるがすぐに入れ替わる。乗車時間が短いため立っていてもいいということか、空席があっても無理して座ろうとする人はあまりいない。短距離利用が多く、混雑していても全区間乗車し続けることがあまりない、という点も、東京メトロの本数減の判断材料になっているとも考えられる。

はたして来春のダイヤ改正で銀座線はどうするだろうか? コロナ禍が落ち着き、浅草の観光需要などが復活してその方面の乗客が戻るなどで鉄
道利用が回復し、本数がまた増えるといいのだが……。

(小林 拓矢 : フリーライター)