トム・クルーズ主演の『トップガン』が“110億円”大ヒットのウラで…聞こえてくる“防衛省”全面協力ドラマ『テッパチ!』の嘆き
「現在上映中のトム・クルーズさん主演映画『トップガン マーヴェリック』が大盛況。日本国内の累計興行収入は、110億円を突破しました。何度も劇場でリピート鑑賞する“追いトップガン”なる言葉も流行しています」(映画ライター)
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『トップガン』大盛況! リピート鑑賞も
『トップガン』は、アメリカ海軍に所属する艦上戦闘機のパイロットたちの成長を描いた物語。映画ライターのよしひろまさみち氏に作品の魅力を聞いてみると、
「私は今年で50歳なので、’86年に封切られた第1作にもハマった世代ですが、映画内でトムが使用している、フライトジャケットやサングラス、『KAWASAKI』のバイクといった小物のかっこよさに惹かれました。
主題歌の『デンジャー・ゾーン』も街中で流れていて、まさに1つのカルチャーでしたね。当時の日本は戦争と縁遠く、ぼやっと平和な時代でしたから、『トップガン』のような軍隊を舞台にした青春映画は新鮮だったのかもしれません」
36年ぶりの続編は、当時のファンも裏切らない作りだという。
「劇中の小物といった細かなシーンにも、第1作のオマージュが感じられます。主題歌の流れるタイミングも素晴らしく、当時見ていたシニア世代がリピートするのも頷けます。
また、最近はコロナでハリウッドが作品の供給をストップしていましたから、久しぶりに超大作として多くのスクリーンで上映され、トムがジャパンプレミアで挨拶に来たのも、若い世代に刺さった一因になったと思います」(よしひろ氏)
元陸上自衛隊の戦車乗員で、現在は航空写真家・軍事ライターとして活動する伊藤学氏も『トップガン』に影響を受けた1人だ。
「私も小学生のころにトップガンを観て戦闘機のかっこよさを知り、航空自衛隊のパイロット試験に挑戦したこともあります。第1作の影響でアメリカ海軍の志願者が増えたという話を聞きましたが、私の周囲でも『トップガン』がきっかけで自衛隊に限らず航空関連の仕事に進んだ人もいます」
自身も6回ほど“追いトップガン”したという伊藤氏。リアルな隊員生活を送った彼でも、映画のクオリティの高さには大満足の様子。
「今作は撮影技術の向上で、実際の戦闘機にカメラを搭載して撮影することができたので、重力に耐えるシーンなどは迫力がありますね。その一方、ストーリー展開は軍隊のつらいところを深く描かず、かっこいいところだけを見せるエンターテイメントに徹したのもよかったと思います」(伊藤氏)
大ヒットの影響はこんなところにも及んでいた。自衛隊群馬地方協力本部2等空佐の宇田信一さんは『トップガン』が公開されてからの、とある変化に驚きを隠せない。
「今年の8月4日に群馬県で航空学生の説明会が開かれたのですが、例年なら10名程度しか集まらないところ、今回は倍の20名以上になったんです。おそらくですが、『トップガン』の影響ではないかと思っています。自衛隊ではいつも、人材確保のためにPR活動を行っていますので、興味を持っていただけるのはとてもうれしいですね」
この盛り上がりの裏で、やりきれない思いを抱えているドラマがあるという。現在放送中の『テッパチ!』(フジテレビ系)だ。
防衛省の全面協力でも……
「荒れた生活を送っていた主人公が、ひょんなことから陸上自衛隊の候補生に。そこから多くの仲間と出会い、友情を育んでいくというストーリーです。
この作品は、自衛隊の駐屯地や演習場でロケが行われたり、劇中で出てくる車両や装備品なども実際に使用しているものを貸し出すなど、自衛隊を管轄している防衛省の全面協力のもとで撮影されているドラマなんです」(テレビ誌ライター)
にも関わらず、初回の世帯平均視聴率は7.6%。これまでの平均でも5%前後と低空飛行を続けている。
「そもそも防衛省がこのドラマに協力したのは、自衛隊のPRにつながってほしいと考えてのことでした。ところが、フタを開けてみれば『テッパチ!』を見て自衛隊に興味を持ったという声はいまだ現場に届いていないそうなんです。
その一方で『トップガン』は興行的にも大成功で、結果的に自衛隊の宣伝にも繋がっていますから、やるせないですよね……」(テレビ局関係者)
エンタメ界でも日米の力の差を見せつけられてしまったかたちだが、前出の宇田さんによると、数字はあまり関係ないようだ。
「入り口がどうであれ、自衛隊に興味を持ってくれる人が増えるのはありがたいことです。私たちの活動は、災害現場などで国民を守るやりがいのある仕事。ドラマでも映画でもいいので、少しでも身近に感じてもらえたらなによりですね」
視聴率は“デンジャー・ゾーン”な『テッパチ!』だが、最終回まで前進し続けてほしい。